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第113話 師匠のしくじり

「ギャハハハッ! 読み通りだねぇ! いいぜぇ! いいぜぇ! いいところに来てるなぁ!」


 師匠の狂気じみた笑い声が戦場に鳴り響いた。


「オン・バリシデ・ウン・ケン・ソワカ」


 モンスターの軍勢の左右に二か所ずつ、合計四か所から青白い光の柱が空に向かって上がった。

 大きい。近くにあった光の柱を見ると、五芒星の和風魔法陣から光の柱が伸びていた。


「オン・ハリハラ・オン・ハリハラ……西の神、白虎、南の神、朱雀、東の神、青龍、北の神、玄武。邪気を払い、清め給う。四神大祓《 ししんおおはらえ 》・万魔清浄《 ばんましょうじょう》! 急急如律令!」


 光の柱からカーテンのように光の壁が伸び、モンスターの軍勢を一部切り取るように閉じ込めた。

 光の壁が柱と柱を繋いでかみ合うと、巨大な結界が完成した。

 そして次の瞬間、ドンっと結界内に上から押しつぶすような重圧がかかった。

 まるで巨大な亀が上から押しつぶしたかのようだ。

 それだけ弱いモンスターは押しつぶされ絶命していた。

 続いて目に見えない巨大な何かが結界内を走り回り、モンスター達をバラバラに切り刻む。

 更に結界内が炎に包まれ、灼熱地獄と化し、止めとばかりに稲妻が降り注いだ。


「ギャハハハッ!」


 師匠が空中で仰け反りながら高笑いを上げ、人型の呪符を掲げた。

 あれは身代わりの呪符だ。


「……あれ?」


 師匠の顔が真っ青になった。


 やばい!


 俺はとっさに師匠の元へ飛んで、落ちてくる師匠をキャッチした。


「わりぃ秀一。後方まで頼むわ」


「わかりました」


 今にも吐きそうな顔をした師匠を見て嫌な予感がした。

 俺はお姫様抱っこから、師匠を下に向けて、後ろから抱きかかえるようにした。


「身代わりの護符がきかねぇ。敵の攻撃じゃないからか?」


 狐鈴の時と同じだ。一気にレベルが上がって、激しい肉体改造が行われたのだろう……


「うっ! ぼぉおおお……」


 師匠ぉぉおお! やっぱり吐きやがった!


 俺は琴音とアリサさんに護衛されながら、師匠を狐鈴の隣へ持って行った。


 気を利かした狐鈴が、もう一つ大きなビーズクッションを取り出してくれたので、そこへ師匠を下ろす。


「狐様。すまねぇ」


「お主、何をやっとるのじゃ。我を見ておらんかったのか?」


「身代わりの護符が効くと思いましてね」


「戯けが。痛みだけ移るわけなかろうて」


「面目ねぇ。あー肉体の回復はまぁできるからいいけどよ。なんだこの精神の疲労は……。術に集中できねぇ」


「うむ。それがきついのぉ」


「あ、あいつらも帰って来たぞ」


 振り向くと真田さんと御影さんの憑依型機動式神が戻ってきた。


 しばらくすると、後方から真田さんと御影さんが疲労困憊ながらも、まだ確かな足でやってきた。


「野戦病院はここですか?」


 真田さんの声がいつもの爽やかボイスじゃない。限界が近そうだ。


「沖田さんと狐様も、レベルアップ弊害ですか?」


 御影さんの方はまだ大丈夫そうだ。いや、気丈に振る舞っているけど顔色が真っ青だ。


「あぁ。そうだ。お前らもか」


「はい。酷くなる前に戻ってきました」


「んじゃ秀一と琴音。お前らとっとと最前線行ってこい。戦線を維持しろ」


「了解です!」


 ここで長々と話している場合じゃない。

 振り返って戦場の状態を見る。

 地上では王国軍とモンスターがぶつかり合い、入り乱れて戦いが行われていた。

 モンスターの先頭はまだ弱いモンスターばかりだ。王国軍でも十分対応できるだろう。


 それより後ろになると大型のモンスターが多くなってくる。

 みんなそれがわかっているのか、配信者達は軍勢の横から、大型モンスターを狙って遠距離から攻撃、隊列から外れて向って来たモンスターを各個撃破。大勢釣れたら後退しながら戦っていた。そして危なくなったら空に逃げる。無難な戦い方なので問題なさそうだ。

 制空権を確保するために、空を主な戦場にしているパーティーもいる。中々連携が取れているな。これも結城さんが後方から通信用の呪符を使って指令を出しているおかげかもしれない。


 ここは問題ない。

 もっと奥を見ると、本命のデーモン部隊がいる。レッサーデーモン、アークデーモン、グレーターデーモン。初見のデーモンまで様々だ。

 こいつらは空を飛ぶことができるのに、前に出て来ない。

 きっと俺達が消耗するのを待っているのだろう。

 もしかしたら知っているかも知れない。俺達が一気にレベルアップすると、体が追いつかないことを。愉悦之神に教えられているのかもな。


「師匠、どれくらいで回復しそうですか?」


「あー。肉体は回復の呪符ですぐだな。問題はこの頭痛と倦怠感だなぁ。まぁ小一時間もかからんだろ」


「それくらいで戻ります」


「んじゃよろしく」


「無理するでないぞ。余裕を持って帰って来い」


「機動式神を出します。アリサさんは……」


「月華さんを護衛につけてくれたらそれでいいわ」


「おいいいっ! 別のにしろ!」


 後ろから師匠が声を上げた。

 そう言えばセリーニって陰陽局の偉い人なんだっけ?

 まぁいいか。

 月華というかセリーニを呼び出すと、『秀一様命』と背中に書かれたハッピを着ていた。

 そこにいたのは、式神セリーニでも、陰陽局のお偉いさんでもなく、ただのアイドルオタクだった。

 いや、俺はアイドルじゃないけどな! セリーニが両手にペンライトを持っていて、なぜか腕を振り回し、決めポーズを取ったところで固まっていたから、そう思えたんだ。


「……油断しました」


 そう言うなりふっと姿が変わって、白いワンピース姿になる。手に持ったペンライトも消えていた。


「オタ芸に夢中になって、配信の声を聞いてなかったのがまずかったわ……」


 俺達の配信を見ながら何やってたんだよ。しかも今って戦ってるところでもなんでもないだろ。


「え? 月華様ってあんなキャラだっけ?」


 真田さんが御影さんに聞いた。


「知らないわよ。そもそもお会いしたことだって、二、三度よ」


「沖田さんは?」


「俺達は何も見てない。いいな?」


「いや、もう配信されてるでしょう」


 焦った沖田さんに、真田さんが突っ込みを入れていた。


「セリーニ。アリサさんを護りつつ、前線に出てくれ。俺と琴音は憑依型機動式神で出る」


「わかりました。お任せ下さい。アリサ。行きますよ」


「えぇ! かっこいいところ見せてあげるわ!」

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