第110話 デーモン襲撃対策会議
アルベールが正体を明かしたあの日。
オレリア王女はデーモン襲撃の対策がしたいと、俺達を王宮に招待した。
もちろん全員ではない。
王女や王と面識のある俺と琴音。そして師匠と結城さんも招かれた。
結城さんは国境都市奪還の時に、俺達とオレリア王女の窓口になっていたそうだ。
王女を守り続けた狐鈴も招待されたが、狐鈴はめんどうの一言で断っていた。
アリサさんはこの時疲れ果てて、意識を失っていたな。
俺達は大きな部屋に通され、そこで王や宰相を交えて会議を行った。
事実確認と整理から始まり、二週間で何ができるかを検討した。
俺と琴音は、みんなが駆けつけてくるまでのことを話し、後は師匠と結城さんが交渉を進めた。
機動式神の使用許可が出たことにより、結城さんが榴弾砲型と重機関銃型の機動式神を、王都を囲む城壁の上に設置したいと説明したが、全然理解されなかった。
以前衛星都市フェルミアで、魔王軍を退けた兵器だと説明して、なんとか城壁の上に設置するスペースを確保できた。
本当は実物を見せたかったが、よこせなどと言われても困るので、当日までは出さない。
使用後も壊れたとか言って、誤魔化す予定だ。
デーモンが設けた二週間という時間。俺達に猶予を与えたというより、デーモン側も準備を整える時間なのかもしれない。
道連れにするモンスターを集める期間なのだと思う。
当然そんな時間を与えたくない。だから王国はアストラルゲートを探し出して破壊したい。
そんなわけで王国の騎士団や魔道士団が探索に出るみたいだけど、愉悦之神が守っているのなら、壊すことは不可能だろう。
それでもどの方角から攻めてくるのがわかるだけでも、軍隊の展開や機動式神を設置する方向がわかるので助かる。
王宮の庭に現れたアストラルゲートは、アルベールが消えた後、あっさり壊すことができた。それまで見た目は多少壊れたように見えたが、びくともしなかった。
きっと神の加護がかかっていたのだろう。
会議中だが一刻も猶予がない状態なので、国境を守る軍隊や私兵を抱えている貴族達に、兵力を王都に集めるように伝令が行われた。
数万という兵士が集まれば、移動するだけでも大変だ。
やはりどこから攻めてくるか知りたい。
飛行魔法を使える魔道士が偵察に出ることになり、師匠も偵察用の式神を出すことになった。
俺も式神を偵察に出そうと提案したが、再び愉悦之神に捕まる可能性を出されて却下となった。
プレイヤー達は軍隊に組み込まれず、機動式神の操作や遊撃となった。
そもそも軍隊としての訓練も知識もないから、結城さんと師匠が軍隊に組み込むことはできないと言い、王も俺達に助けてもらいたいから強気に出れず、すんなり決まった。
そしてもし王国が壊滅するようなことになったら、俺達は撤退すると、師匠は日本語で俺達に伝えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
会議が一段落したところで、王様が静かに口を開いた。
「……アルベールの話をしよう」
その言葉を聞いて、静まり返り、場の空気が重たくなった。
思い出を語るという面もあるけど、なんとなく肩の荷を下ろしたい。そんな風にも見えた。
「陛下」
宰相が心配そうに声をかけたが、王様は手を上げて制した。
「構わない。遅かれ早かれ、話さなければならないことだ」
王は玉座から立ち上がり、窓の外を見た。
「アルベールがおかしくなったのは……いつの頃からだったか。最初は次期王になるために、背伸びをしていると思った。そして王都の欠点とそれに対する対策など、素晴らしい提案の数々があった。私はアルベールが多少無茶なことを言っても、未来の国のためだと思って通してきた。まさかそれが異世界からの知識だとはな。あのままデーモン達に任せても良いのかもしれなかったと、今でも思ってしまう。このような事態になったら尚更な」
「お父様。デーモンに国を任せるなんてできません」
「わかっておる。あやつらの気が変わったら終わるような政治は、もはや政治ではない。そこでだ。秀一殿。お主も異世界から来たのであろう?」
「……はい」
「オレリアと一緒になって、その知識を国のために使ってくれぬか?」
「俺は……私はまだ学生です。国を豊かにするような知識などありません。アルベールに化けていたデーモンは、生前俺達の世界で死亡した者の生まれ代わりです。もし長く生きていたのなら、知識も経験も俺とは比べものにならないでしょう」
「それでも学徒なのだろう? 多少でも知識はあるのではないか?」
「……多少は。ですが俺は帰りますよ。この世界から元いた世界へ」
「……そうか。ならばこちらの世界へ残ってもいいと思う者はいるか?」
「恐らくいません。俺達は元の世界に戻るために戦っています。デーモンから王都を守るのもそのためです」
「どうして元の世界へ戻るのと、王都を守るのが繋がる?」
「この世界を平和のために、神が示した試練を乗り越えたら、元の世界に戻れるのです」
「まるでおとぎ話に出てくる勇者だな。聞くだけ聞いてみてくれ。オレリアと結婚する必要はない。待遇は保証する」
「はい」
「しかし残念だ。オレリアは秀一殿に気があると思ったのだが」
「それは気のせいでした」
オレリア王女は真顔でキッパリと言った。
「確かに秀一殿は頼りになりましょう。しかし……変態です」
おおい! 王女様! 何言ってるんだよ!
「おい。秀一。お前オレリア王女に何やったの?」
「何もしてません! シルヴィアがまた暴走しただけです!」
「ギャハハハッ! またオケツにお仕置きとか言ったのか?」
「そうです! 俺はあの戦いの時以外そんなことしてませんよ! そもそもあの時だって事故で鎖が刺さっただけです!」
「詳しく」
なぜか王が食い気味だった。
「お父様!?」
「秀一殿。後ほど個別に話をしようではないか」
「お父様!? こんな時に何を言っているのですか?」
「じょ、冗談だ。さぁ、今宵はデーモンから王城を守ってくれた礼と、これから始まる戦いへの決起会を行おう。思う存分飲み食いしてくれ」




