第109話 アリサ視点 ハイスピード攻略
常夏のダンジョンは期間限定イベントが開催されていて、出現するモンスターが全てデーモンになっていた。これってデーモン襲撃の対策よね?
報酬も瘴気対策された防具や、聖属性の武器ばかりだった。これは正直ありがたい。瘴気は二度と吸いたくない。気持ち悪すぎて吐くどころじゃないわ。
そして時刻は二十時を過ぎた。
今夜挑むのは九十階。つまり出てくるモンスターはレベル九十台。
ダンジョンに入るといつもと雰囲気が違う。ホラー映画の舞台に入ったみたいな感じ。いつ殺されてもおかしくないような雰囲気だ。
「オン・ヒラ・ゼン・ソワカ」
私は十枚の呪札を取り出し、マントラを唱えると、札が次々と宙に浮かび、私の周りに展開した。
秀一君と琴音ちゃんも同じように札を展開していた。
イベント中は罠が撤去されて、ひたすら闘いに専念できるみたいね。
だから秀一君はシルヴィアを出さない。
「スプリンター!」
私達は高速移動スキルを発動してダンジョンを突っ切る!
正直怖い! ダンジョンで使うスキルじゃないと思うんですけどぉ!
前方にグレーターデーモンがたくさんいた! その姿はぐんぐん大きくなる!
秀一君が指一本立てた。一番目の呪符を使うぞってことね!
「オン・エーカム!」
本当だったら、長々と呪文を唱えるところだけど、札に呪文を仕込んであるので、呼び出すマントラを唱えるだけで、札から高熱の弾丸が十発発射された。私達三人で合計三十発。そして狐鈴さんのマジカルショットが数発発射され、グレーターデーモン達は何もできないまま蜂の巣になったわ。
とんでもない戦い方だけど、その分一気に消費される呪力も半端ない。
そのまま死骸の回収なしに突っ切ると、前方の十字路が見えた。
秀一君と琴音ちゃんが左右の角に降り立って、鏡を使って通路を覗き込んだ。
なんか軍隊の人みたい。
「クリア」
「クリア」
マジで軍隊の人みたいだ。そう言えば秀一君達って、陸上自衛隊に混じって訓練したわね。
脇道を確認したらまっすぐ進むみたい。
今度はレッサーデーモンの群れが遠くに見えた。
「オン・ドヴェー・ソワカ!」
二番に登録してある火の弾が三発発射される。
くぅう。呪力の消費が多い。
火の弾はレッサーデーモンに着弾すると、大爆発を起こした。
耐火の障壁を纏っているから、そのまま炎の中を突っ切って先を急ぐ。
今度はダンジョンの奥から青白い炎の弾丸が飛んできた! しかもいっぱい!
防御は四番目の札!
「オン・チャットヴァーリ・ソワカ!」
前方に呪札が飛び、防御障壁が展開。青白い炎は障壁に当たると、轟音と共に爆発した。今度はこっちの番!
「オン・エーカム・ソワカ!」
一番目の札から再び光弾が発射され、奥にいたデーモンシャーマンを蜂の巣にしたわ。
秀一君達はそのままデーモン達の間を駆け抜けていく。ついていくだけで、精一杯よ!
呪力の消費も激しい! スキルポイントもガンガン減っていく! もちろん体力もね!
そんなこと繰り返していると、ボス部屋らしき扉の前に到着した。
やっとだ……
私達は手筈通り、耐熱、耐煙の防御障壁を張った後、扉を少し開けて呪文を唱えた。
「オン・ナーヴァ」
私達が放った光弾や炎がドアの向こうに、吸い込まれていった。
そして秀一君が扉を閉めて、私達は下がった。
次の瞬間、轟音と共にダンジョンが揺れ、扉の隙間から炎が飛び出した。
私達はすぐさま扉を開けて中に入った。
部屋の中はあちこち炎が渦巻いていたけど、耐火障壁のおかげで熱くないわね。一酸化炭素中毒が怖いけど、案内妖精は換気対策しているって言ってたから、それを信じるしかない。
中にいたのは、デーモンヒュージキング。
身長五メートルほどの太ったデーモンだ。
瘴気が滲み出ていて臭そう。正直近寄りたくない。
取り巻きのグレーターデーモン達は、どいつも瀕死一歩手前で、デーモンキングもボロボロね。
私達は次々と呪札を発動させ、狐鈴さんがマジカルショットを連打していく。
光弾が絶え間なく放たれ、光の剣が回転しながら飛んでいき、極太のレーザーが何度も横薙ぎに敵を払った。
正直きつい。脳が焼き切れそう。
呪力も、もう限界……
札を使い切ると、デーモン達が粉々になって散乱していた。
吐きそう……
琴音ちゃんがすぐに祝詞でデーモン達の死骸を浄化していく。
琴音ちゃんマジ天使。
呪符を惜しげもなく使ったことによって、途中のデーモン達はおろか、デーモンヒュージキングでさえ瞬殺だった。
ただ……ボス部屋の奥にあった宝箱まで粉々に吹き飛んでいたのは、誤算だったわ……




