第108話 アリサ視点 陰陽術の準備
私は沖田師匠にお願いして、朱雀、青龍、白虎の調伏を行った。
人造式神とはいえ、式神を四つ同時に召喚し続けるのは確かに辛い。
体力も精神力もゴリゴリ減っていく。
この状態で術の制御を行うのは、正直言ってキツイ。
でも私はなんとか維持できている。やれている!
気づいたら日が落ちてきた。
夜はダンジョンへ行くので、休憩しないと。
それにお腹に少し入れておかないとね。
だいぶ疲れていたのか、気づいたら待ち合わせの三十分前だ。
私は急いで浜辺にある扉の前に来ると、既に秀一君と琴音ちゃん。そして狐鈴さんがいた。
「こんばんは。ねぇ。今日全然見なかったけど、何してたの?」
私は秀一君に声をかけた。
「こんばんは。今日は呪札をずっと作ってたんだ」
秀一君。今日は朝ごはんの後、全然見なかったのよね。
「うー。同じ術の札を大量に作ったから、疲れたよ。秀ちゃん成分なしでは成し遂げられなかった!」
秀一君成分ってなに!?
うらやまけしからん!
そこんところ詳しく!
「……あんたらマジメにやってたの?」
でも私はそんなことを怖くて聞けなかった。
「マジメだよ! たまにイチャイチャ?」
だからイチャイチャってなに!!
「まさかエッチなことじゃないでしょうね!?」
「式神達にも手伝わせたから、そんなことしてないぞ」
秀一君は心外だと態度で示した。
うん。信じよう。
「シルヴィアは途中で逃げ出したけどね!」
「向き不向きがあるな」
「それ、私もできる?」
秀一君と琴音ちゃんが何をしていたのか、気になってしかたがない。二人っきりにしたくない。
「できる! 呪力もいっぱい使うから修行になるよ!」
琴音ちゃんが私の手をガシって掴んだ。どういうこと? これじゃあまるで逃がさないぞって感じじゃない?
「そ、そう。じゃあ私も明日から参加しようかしら?」
「やった! アリサちゃん好き!」
「助かるよ。んじゃこれはアリサさんに分」
秀一君がアイテムボックスから呪札の束を取り出して、私に渡してきた。
「何これ?」
私がさりげなく秀一君の手に触りながら受け取る。触っちゃった!
「攻撃の術が込められている」
「術?」
「そう。使い切りだけど、短い呪文で術が発動するから、呪符と呪力が持つ限り連打できるんだ」
「前準備がすっごく大変だけどね!」
「そうだな。前準備も必要だけど、体への負担も大きいし、すぐにガス欠になっちゃうから、普段はやらないんだけどな。でも今は呪力を消費して、呪力総量を増やしたいからやる!」
「札を作る時間とお金もかかるしねぇ」
琴音ちゃんがウンウンと頷いていた。
そうか……つまり、
「コスパもタイパも悪いってことね」
「そう! 昨日と今日、いっぱい時間かけて作った札が、すぐなくなるんだよ!」
「印刷できる代物でもないしな」
「な、なるほど。これは大事に使わせてもらうわね」
「いや、今日使い切ってくれ。今も式神達が作ってるしな」
「じゃあ後でお礼言わないとね」
「そうしてくれ。これをダンジョンでガンガン使えば、一日二階は進めるぜ」
「え? マジで!?」
「狐鈴もちょっと本気出して貰えば尚更だな!」
「ふむ。あのダンジョンは丈夫だからの。お主達に合わせて力を出してみるか」
そう言って狐鈴さんは新しい魔法のステッキを取り出した。そしてメニューを操作したと思ったら、パッとピンクに巫女系魔法少女になった。
今夜は魔法少女全開で行くみたい……
「アリサよ。今宵はこれでいくぞ」
「う、うん!」
私はチラっと秀一君を見た。
秀一君って実はこういうの好きみたいなのよね。
私も狐鈴さんに続いて、メニューを操作して、新装備に着替えた。
私が選んだ装備は、巫女よりも少し甘ロり要素が強い。
正直いうと、私はちょっと恥ずかしい。狐鈴さんにはいつもお世話になっているので、頼まれたら付き合うし、何より秀一君が見てくれそうなのよ!
そんなことよりも……
「私……ついていける?」
「アリサさん、最近呪力も術の制御も上手くなってきただろ。きっと大丈夫さ!」
「いやな予感しかしないけど……」
「とりあえず、札の展開と使い方を教えるよ」
「わかったわ」
秀一君が教えてくれるのなら、全力でやるしかない!
私だってやれるところ見せてあげるんだから!




