第107話 乙女心
俺と琴音はキャサリンさん、レンさん、そしてアリサさんに陰陽術を教えることになった。
見鬼ではない、まどかさんと凛さんから文句を言われたけど、仕方ないよな。
俺達は配信者でもあるから、形から入ることにした。
実は形から入るのは結構大事だったりする。術のイメージが湧きやすくなり、神様仏様への祈りも届きやすくなるからな。
そんなわけで、陰陽局の専用通販サイトを見てもらって、防具を購入することにした。
陰陽局の装備って、こっちの世界では付与効果がついて、純粋にパワーアップできるんだ。
ただ、購入するには俺か琴音の部屋のパソコンからしかできないから、一旦俺の部屋に移動することになった。
「どーん!」
部屋に入るなり、琴音が俺のベッドにダイブした。
いつものことだ。今日は匂いを嗅がないだけ自制してる。
「へぇ。綺麗じゃん」
アリサさんもベッドに腰掛けた。
しまった。この部屋に椅子が二つしかない。
「あ。僕もベッドに座っていいかな?」
「どうぞ」
「失礼するよ」
レンさんは礼儀正しいな。
「キャサリンさんは椅子をどうぞ」
「ありがとう。よっごいしょっと」
「座っただけで壊れそうだな!」
「壊れるわけないでしょ!」
俺はそんな二人の会話を面白く思いながら、パソコンを起動して、通販サイトをひらいた。
陰陽局の通販サイトには狩衣だけじゃなくて、巫女服や坊さんが着る袈裟などもある。
順番にパソコンの前まで来てもらって、一人ずつ選んでもらった。
キャサリンさんは陰陽師というより、修行僧……いや、破戒僧みたいな格好になった。
レンさんはなんだろう。狩衣を着てるんだけど、陰陽師というよりコスプレしたイケメン俳優みたいになってしまった。
そしてアリサさんは、狐鈴みたいな巫女系魔法少女っぽくなった。
なんでも以前約束してあったそうだ。一緒に魔法少女っぽいのをやると……
アリサさんは早速アイテムボックスを弄って、一瞬で着替えた。
「どうよ? 秀……早川?」
アリサさんはくるっと回って可愛いポーズを取った。
「うん。似合ってるよ」
「……可愛いと言ってくれないの?」
「下手なこと言うとトラブルが発生する。俺はもう学んだんだ」
「……なによそれ」
「じいいいい」
琴音が目を細めてアリサさんを見ていた。
「ど、どうしたの? 琴音ちゃん」
「なんか怪しい。最近秀ちゃんに、近づきすぎじゃない?」
「そ、そんなことないわよ?」
「そうかなぁ」
「私、琴音ちゃんともっと友達になりたいの」
「んなっ!?」
「だから琴音ちゃん。陰陽術教えて」
琴音は、口をパクパク開けて、アリサさんと俺を交互に見た。
琴音は、俺と一緒にいることが多いから、友達が少ないんだよ。もしかしたらこんなにダイレクトに、友達になろうって言われたのは初めてかもしれない。
「琴音。アリサさんを任せたよ」
「わかった! 何から教えて欲しい?」
「呪力の力加減かなぁ」
「コツ?」
「そう。沖田師匠から陰陽師の本を借りて読んでね。ちゃんと理解したら威力がすごい上がっちゃって、制御が厳しいの」
「なるほど! んじゃ浜辺に戻って実戦形式で教えるよ!」
「うん。ありがとう」
「さっそく戻ろう」
「うん。あ、そうだ」
「ん?」
「早川!」
「どうした?」
アリサさんが思いっきり舌をだして、涙袋に指を置いた。
「あっかんべー!」
「行きましょう。琴音ちゃん」
「うん。秀ちゃん。前にも言ったけど、気にしすぎなくていいからね」
「あ~え~と……」
「もう何言っても遅いわよ! ばかっ!」
そう言ってアリサさんは琴音と一緒に部屋を出ていった。
「あらぁ。複雑なことになりそうねぇ」
キャサリンさんがちょっと複雑な笑みを浮かべた。
「どういうことですか?」
「自分で考えなさい。ただ、立ち回りには気を付けて欲しいわぁ。あなた達のパーティが崩壊したら、作戦に大きな影響が出るわよ」
「今回だけじゃないよね。グランドクエストの攻略も進まなくなっちゃうよ」
レンさんがキャサリンさんに賛同した。
まずい。俺だけがわかっていない。
「今みんなやる気出してるところだしねぇ。申し訳ないけど、波風立てないようにして欲しいわね」
「とりあえず、陰陽術を教えてもらう前に、僕達が君の先生になる必要があるね!」
「乙女心をたっぷり教えてあげるわ!」
「えええっ!?」




