第106話 罪と罰
俺達はデーモン襲撃に備えて、昼は訓練。夜はダンジョンアタックでレベルを上げている。
そこで問題になったのは、モンスターは罪を犯した罪人の魂で造られていることだ。
みんな今まで通り戦えるのか?
そこで俺は訓練の合間に、案内妖精に聞いてみた。
周りで訓練していたみんなも気になっていたみたいで、次々と集まってきた。
「全てのモンスターではないけど、一部のモンスターは罪人の魂が使われているわ。安心しなさい。島のダンジョンにいるモンスターは、プログラムで作られた魂みたいなもの。例えるなら生きたゴーレムのようなもの。だから気軽に倒しちゃってね!」
「天然のモンスターは?」
「罪人の魂が使われているモンスターもいるわ。特に大罪人の魂は、魔族領の奥に生息している、弱いモンスターに使われているわ」
「……弱い?」
「そう。そこで何度も殺されて、何度もモンスターに転生される。罪が消えるまで」
怖すぎる。隣で琴音が身震いして、袖をギュッと掴んできた。
「離宮で王女を襲ってきたデーモン達は、比較的罪が軽い方ね」
「やつらは前世の記憶とかあるのか?」
「ないわよ。ここでモンスターとして悪を演じる。それが彼らの役目なの。ただ、人に化けていたデーモン達は、愉悦之神様に罪を消す方法を教えてもらったのでしょうね」
「役目って……それじゃぁまた罪が増えるんじゃないか?」
レンさんがみんなが疑問に思っていたことを聞いた
「この世界にいる人間は罪が軽い罪人なのよ。お互いが執行人であり、罪を償うもの。まぁ人間の方は、怯えて暮らすくらいの罪。寿命を迎えて死んだら罪は消えるわ」
「ええっ!?」
「はぁっ!?」
「もしかして私達も!?」
「配信してるならわかるでしょ? 多かれ少なかれ、妬まれ、ひがまれ、恨まれているでしょう? アンチだっていっぱいいるじゃない? 人を不快にしたのだって立派な罪。ここで過ごしただけでその罪が消えるのよ。ラッキーじゃない!」
「そんなの……イメージ悪すぎだろ……」
「俺はそんなことしていない……」
「い、いやぁ……もう帰りたい!」
「なら、頑張ってグランドクエストをクリアしましょう! 今回のクエストは英雄級よ!」
案内妖精はにっこり笑顔で応援した。
もしかしてこの案内妖精の魂も、プログラムで作られた人工的な物なのか?
触れただけでモンスターの死骸をアイテムボックスに入れたり、質問は何でも答えてくれる。
まさにこの世界のシステムの一部じゃないか。
みんなもそう思ったのか、案内妖精を見る目が変わった気がする。
暗い雰囲気になったところで、配信者の一人が声を上げた。
「……私はやるよ。もうこんな世界、早く抜け出してやる!」
それをきっかけに、みんな次々と声を上げた。
「俺……早川達の配信見て、付いて行けないと思った。あんな強敵と戦えないって。でも、島のダンジョンでレベルも上がった。ちょっと自信が付いてきた。だから俺もグランドクエストに積極的に参加するぜ!」
「私も! 私だってやってやる! みんなに負けてられない!」
「俺もだ! 島のダンジョンは七十階層までたどり着いたんだ! この間のデーモンだって倒せた! やってやるよ! グランドクエストを!」
「ギャハハハッ! いいねぇ! いいねぇ! んじゃやりますか? 地獄の訓練ってやつをよぉ!」
師匠が言うと、みんな一瞬怯んだ後、頷き合った。
デーモン襲撃の予告の後、みんな師匠や真田さん、御影さんに戦い方のコツなどを教わっていた。
確かにパッシブスキルやアクションスキルを覚えると、一緒に戦い方もわかってくる。
でもそれだけじゃだめなんだ。立ち回りだったり、判断だったり、そういうのを師匠達に教わっていた。
今までは指導レベルだったのを、地獄の訓練レベルに上げるということなのだろう。
「望むところだ!」
「師匠と呼ばせてください!」
「手が足りねぇな。真田と御影も呼んでくるか。そうだ。秀一、琴音。キャサリン達の面倒はお前らが見ろ。できるだろ?」
「了解です。キャサリンさんとレンさんって師匠が基礎を叩き込んでますよね」
「ん? そうだな。座学メインだったが、最近術も発動できるようになったぞ」
「それなら任せてください」
「アリサちゃんもな。昨日のアレ。見ただろ」
「……見ました」
アリサさんが本物の朱雀を召喚した。才能だけなら俺なんかよりずっと上だ。
ちゃんと修行すれば超一流の陰陽師になれる。
「ありゃあ、本物だ。アリサちゃん。全力で陰陽術を教えてやるとか言ったけど、状況が変わっちまった。秀一に教わってくれ。手取り足取りな」
師匠はそう言って、アリサさんにウィンクした。
なにか約束でもあったのか?




