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第105話 アリサ視点 勧誘

 勾玉に呪力を流したら、一瞬周りが虹色に輝いたかと思ったら、スゥと元に戻った。


 でもわかった。世界が一変した。呪力が見える。

 今までなんとなく感じられた呪力がはっきりとわかる。

 まずは目の前のセリーニさんを見てみよう。


 とても強い呪力を感じる。私とは比べ物にならない呪力を持っているけど、制御しているから圧を感じない。

 ほんの少しだけ呪力が漏れている。その呪力はとても濃い。そしていつも浄土世界にいるからなのかな? 神聖な気を帯びていた。

 呪力って漢字で書くと『のろう』に『ちから』だ。でも勉強してわかった。昔の人がよくわからないけど恐ろしい力と感じたから、呪力って名称にしただけで、本来はつけるべき名称は、『超自然的なエネルギー』だ。こっちの世界でいう魔力に似ている。

 そんな超自然的なエネルギーにも色々な属性があり、神聖なエネルギーもあれば、負のエネルギーもある。


 島の中央にあるホテルから、とてつもない呪力が幾つも感じられた。

 きっと秀一君の式神達だ。

 呼び出されても、昼間は特にやることがないので、この島でバカンスを楽しんでいるらしい。


 浜辺を見ると神聖な気と妖気がごちゃまぜになった強い気を感じた。

 これは沖田師匠だ。抑え込んでいるのがわかる。沖田さんって本当に人類なの? 人間が出せる呪力じゃない気がする。


 そして一番やばいのが狐鈴さんだ。神聖な気が八割、妖気が二割なんだけど、抑えても抑えきれない呪力が駄々洩れている。

 私、アレを流してもらってたんだ。そう思うとゾクッと震えてきた。

 またお願いして流してもらおう。今の状況で呪力を流してもらったら、一体どうなっちゃうのかな……


 それに比べたら秀一君と琴音ちゃんの呪力は可愛いもの?

 私から見たらすごい呪力なんだけど、式神達や沖田師匠と比べると少ない。

 

 私はどうだろう?

 私の呪力は神聖二割妖気八割。


 ……なんだろう。この変な呪力は……。私であって私じゃない。代々受け継がれてきたような、異質な呪力。探ってみるとなんとなくわかってくる。

 そして呪文がイメージとして浮かんできた。


「オン・ヴァジュラ・ラヴィナ・ソワカ。祖、安倍晴明の名と血の元に命ずる。南方の守護者、災厄を払いし霊鳥よ! ここに来れ! 朱雀! 急急如律令!」


 空が割れた。その向こうから大きな火の鳥が現れた。それと同時に私の呪力をごっそり持っていかれ……私の意識は途切れた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 目が覚めたら、見慣れない部屋にいた。


「あれ……ここどこ?」


「島のホテルよ」


 近くの椅子にセリーニさんが座っていた。


「セリーニさんが運んできてくれたのですか?」


「えぇ」


「ありがとうございます」


「あなた。とんでもないものを呼び出したわね。本物の朱雀。神獣よ」


「一瞬だったけど……」


「でも呼び出せた。陰陽局で扱っているレプリカの人造式神とは違う、本物を。やはりあなたを取り込むべきね」


「はは……でも呪力が足りなくて意味なかったですよ」


「呪力は上げればいい。あなたは安倍晴明の名を使って朱雀を呼び出せた。今まで土御門家の血筋でそこまで出来た人間なんていなかったわ。だから是非とも欲しいわね」


「勧誘されるまでもなく、私は陰陽師になりますよ」


「私が言っているのは、私の派閥にってことよ」


「派閥……ですか?」


「えぇ。そうね。私の派閥はちょっと特殊なの。私は秀一様が陰陽師として活躍しやすいために働いているけど、他の陰陽師はそうではないでしょう。真面目な職員からしたら、私は目ざわりな存在でしょうね。私を慕っている人もいるけど、そういう人こそ秀一様が邪魔になる。だからあなたのような存在は貴重なのよ。あなたはライバルであり、味方でもある」


「……そうですね」


「あなたにこれを譲りましょう」


 セリーニさんはそう言って、手提げのついた紙袋をベッドの上に置いた。

 

 中には布製のものや、ぬいぐるみが入っていた。


「……これは」


 私は紙袋の中から布を取り出して広げると、そこには半裸の秀一君がプリントされた抱き枕カバーだった。


 え?


 ぬいぐるみは……秀一君をデフォルメしたもの?


 はあ?


 これをどうしろと……

 いやいやいや!

 こんなものを持っているって知られたら、絶対まずいって! 配信はおろか琴音ちゃんにバレたらまずい!


「私の派閥に来たら、もっといいものをあげるわよ」


 どうしよう。ちょっと考えちゃう。


「それとこれを」


 セリーニさんはUSBメモリを渡してきた。


「それは陰陽局幕僚長権限でしか見れないトップシークレット。ネットに流したら殺すから」


「え! そんな怖いものいりません!」


「あら? 怖かったら術で燃やすなりしなさい。でもそれは中身を見てからでも遅くないわよ」


「……そこまで言うなら」


「では。ホテルのお金は私が払っておいたから。美味しいものでも食べてから帰りなさい」


 そう言ってセリーニは部屋を出ていった。


 私は手の中にあるUSBメモリが危険なものに思えてしかたがない。


◇◆◇◆◇◆◇◆ 


 私は自室に戻ってきて、手の中にあるUSBメモリを見た。

 いやいや、危ないものだし、壊しちゃおうかな……

 でもちょっとだけ……


 私は好奇心に負けて、USBメモリをパソコンに刺した。


 中に入っていたのは、大量の秀一君の写真だった。

 子供の頃の写真や、どう見ても盗撮した写真まである。

 脱衣所の写真ってどうやって撮ったの?

 人造式神でも使ったのかな……

 この写真なんて……うわぁ……うはぁ……うひゃぁ……


 ……って! セリーニってただのストーカーじゃない!

 

 でも私はこの時決意した。

 セリーニさんの派閥に入ることを。

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