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第101話 知りたくなかった真実

 アルベールは軽く俺を睨みながら、手を広げていた。

 まるで話がしたいから待てという意思表示に感じられた。


「少し話そうか」


「アルベール王子と呼べばいいのか? それともデーモンエンペラーと?」


「やはりお前にはバレていたか。鑑定レベル三では見抜けぬはずだが?」


「ちょっと気合い入れたら看破できるんだよ」


「ふははは! 気合いか! まるで少年漫画みたいなことをいうな!」


「お前! 転生者か!?」


「少し違うが、似たようなものだ。まぁ先を急ぐな。俺はお前達に真実を教えてやろうと思ってきたのだ」


「真実?」


「あぁそうだ。この世界の真実だ」


 信用できるかどうかは置いておいて、聞くだけ聞くのはありだな。


 師匠を見ると頷き返してきた。師匠が奇襲をかけていないということは、聞いとけってことなんだろう。


「我々デーモンは、いや、モンスターは皆、罪人なのだ」


「……どう言うことだ?」


「そうだな。前世罪を犯した者だ。ここは地獄なんだよ。知っているか? 魔族領は不毛の地。作物も育ちにくい。住んでいるのは醜いモンスターのみ。当然技術もなければ、統治もない。お互い殺し合い、食らい合う。唯一あるのは魔王による恐怖の支配のみ」


 まさに地獄だな。


「罪を償う方は一つのみ」


「……なんだ?」


「お前達人間に殺されることだ」


「なっ!」


 この襲撃は罪から解放されるためだったと言うのか?


「この真実を知るものは、デーモンの中でも一部のみ。皆前世の記憶など持っていないし、ただ『悪』という役割をまっとうしているだけだ。まぁ我々の中でも、前世の記憶を持っているのは少数だがな」


「……どうして前世を……真実を知ったんだ?」


「薄々気づいているのだろう? お前達が愉悦之神と呼んでいる、あのお方が授けてくれた」


「お前達は何て呼んでいるんだ?」


「真名を教えるはずないだろう」


 それはそうだな。


「真実を教える目的は?」


「地獄からの解放だ。自殺ではまたこの地に魔物として生まれ落ちるだけだからな。本気で『悪』を演じ、人に殺されて、始めて罪が償えるのだ」


「殺してくれと」


「まぁそうだな。だが我らは別の道も考えたのだ。人に化け人の世界で暮らせば、地獄が地獄でなくなる。あのお方はそう教えてくれたのだ」


「……入れ替わったアルベール王子はどうした?」


「同化したぞ。アルベール王子は今も私の中にいる」


「なっ! そんなこと許されるわけないだろう!」


「そう思うなら私を殺せ! 私はどちらでもいいのだ! ちなみに私は同化した後、誰も殺してないぞ?」


「一人でも大罪だ! 同化する前だって人を殺していただろう!」


「そうだ。私は殺されるべき『悪』なのだよ」


「それにお前! 圧政を強いていたと聞いたぞ!」


「はっ!? 圧政なものか! 多少税率は上げたが、それも治水工事、下水工事、技術力向上のためだ。なんだこの世界の文明レベルは? 伝染病が起きたらどうする? 黒死病のようなものが発生したらどうする? 人として暮らすなら、権力を持った者なら、対策するのは当然だろう!」


「……魔法があるだろう」


「全人類が使えるわけではない。技術力は、高度な文明は、人を救うのだ。これは推測だが……オレリアが権力欲しさに適当なことを言ったのではないか? もしくは頭が悪いか、それとも無知か……」


「……」


「我々が人類を導く。そう思っていたが、お前達が来た時点で終わりなのだろう。ならば我々は『悪』を演じ、『悪』として死すのみ」


「成仏の手伝いならするぞ」


「それではダメだ。我々は『悪』として駒にならなくてはならない。グランドクエストとかいう、ふざけた遊戯の駒にならねば、輪廻の輪に戻れぬのだ。まさに地獄だと思わぬか?」


「ここには愚痴を言いにきたのか?」


「遺言だと思ってくれ。さて、本題だ。我々の最後の晴れ舞台を用意した。二週間後、我々デーモンは他のモンスターを道連れにして王都を襲う。国民も貴族も王族も皆殺しだ。我々の邪魔をしなかったら、犠牲者は貴族のほんの一部の人間だけですんだのにな!」


 俺達のせいだっていうのか……


「グランドクエストのせいで多くの人が死ぬぞ。享楽之神はどう動くかな?」


「我々ということは、魔王も出てくるのか?」


「あれは何も知らぬただの駒だ。我々は愉悦之神の目に留まった、幸運な魔族にすぎない」


「お前達を倒しても魔族はいなくならないってことか」


「そうだ。この地にアストラルゲートを複数設置した。王都の次はお前達が拠点にしている都市だ」


 それを聞いて一緒に聞いていたプレイヤー達がざわめいた。


「さぁお膳立てがすんだぞ。全力で我々の解放に付き合ってもらおう。あぁ……そうそう。アストラルゲートは愉悦之神によって守られている。探し出すのも無理だろう。せいぜい頑張れ」


 アルベールがもう言うことはないとばかりに、アストラルゲートに向かったその時、


「待ちなさい!」


 オレリア王女が駆けつけて声をかけた。


「あなたは、もう兄様ではないのですか!?」


「オレリアか。我はデーモンでもあり、アルベールでもあるぞ。だが残念だ。お別れだ。オレリア。後はそこにいる異世界からの勇者に頼れ。彼らの知識はこの国を豊かにしてくれよう」


「そこまで国を思うのならば、なぜ襲うのですか!? もうおやめください!」


「ふむ。お前は聞いてなかったのか。詳しいことはそこにいる男に聞け」


 アルベールは言うだけ言うと、アストラルゲートへと消えていった。


「機動式神の使用許可が下りたわ」


 案内妖精のセレナが告げた。


 セレナはバツが悪そうに苦笑いしていた。


「この世界は地獄なんかじゃないわ。ただ……罪を償う場所もある。それは必要なことなの。魂を浄化するためには、罰を受け、罪を償う必要があるのよ」


「……そうか」


 嫌な情報が多すぎて、考えることが嫌になる。

 ただ、考え方が変わった。正直異世界転移して、楽しんでいた部分もあった。

 でも今は違う……

 この異世界から早く帰りたい。

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