第102話 アリサ視点 アリサの想い
私の名前は土御門愛理沙。バーチャルアイドルの名前はアリサよ。
私が寝ている間に、とんでもないことが起きていた。
アルベール王子がこの世界の真実を語るシーンなんて、映画みたいじゃない!
配信できなかったのが悔しい。
琴音ちゃんからアーカイブ動画を借りて、実況配信でもしようかしら。と思ったら、案内妖精が配信をシャットアウトしたみたいで、誰一人真実を配信できなかったみたい。別の枠で話そうとしても案内妖精が配信を止めちゃうみたい。よっぽど都合が悪いみたいね。みんな配信できないなら、まぁいいか。
それにしても、まさか一晩中戦う羽目になるとは思わなかったわ。
魔力も精神力も尽きて倒れてしまった。
早川が狐鈴さんの結界内に運んでくれなかったら危なかった。
そう。あの時私は一度起きたのよ。
抱きかかえられたら、そりゃあ起きるわよね。
うっすら目を開けたら、早川の顔が近くにあってドキッとした。
恥ずかしくてすぐに目を閉じたからバレていないはず。
抱きかかえられた状況に、心臓の鼓動が早くなったのも……
どうしよう。
私の中で早川秀一の存在が大きくなっていく。
でもダメだ。好きになってはダメだ。
早川は琴音ちゃんしか見ていない。
好きになったら絶対に後悔する。
でも目が離せない。
昨日の戦いも、この間の戦いも、さりげなく守ってくれた。
陰陽師なら後衛のはずなのに、前に出て戦う姿がかっこいい。
後衛も前衛もできるなんて、忖度なしにすごいと思う。
琴音ちゃんも同じスタイルで、後衛も前衛もできる。
二人が代わる代わる前衛と後衛を入れ替えて戦うところなんて、ずるいと思う。
もし私が琴音ちゃんだったら……もし私が陰陽師だったら……早川と本当の意味で一緒に戦えるのかな。
私は守られて、気を使われて、たぶん陰陽師の新人後輩くらいにしか思われていない。
いつまでもそんなのは嫌だ。
隣に立って戦いたい。頼られたい。
好きになって欲しい。
もうダメだ。
自分に嘘はつけない。
私は早川秀一が好きだ。
早川秀一に私をもっと見てもらいたい。琴音ちゃんばかり見ないで欲しい。
でも琴音ちゃんには勝てないよ。
可愛くて強くて、誰よりも秀一君のことを知ってる。想っている。
しかも前世でも恋人だったらしい。
運命の相手?
それを考えただけで胸が苦しくなる。
私だってそれなりに可愛いと思う。
胸だって琴音ちゃんよりある。
アイドルとしてレッスンしてきたから、体だって引き締まっている。
足りないのはやっぱり強さだ。秀一君の隣に並ぶためには、共に生きていくには、強さが足りない。
えぇやってやろうじゃない! なってやろうじゃない! 陰陽師に!
私の遠い親戚の先祖に、かの有名な安倍晴明がいる。
遠縁すぎて全然気にしてなかったし、陰陽師なんて和風ファンタジーだと思っていた。
私にも安倍晴明の血が流れているなら、その力を使えないだろうか?
式神が遺伝子的なモノに反応するとしたら、どうだろうか?
それならもっと血の濃い人達がやっているか。
そういえば、秀一君や琴音ちゃんから、安倍晴明の話って聞かないしなぁ。
今度聞いてみよう。
式神と言えば、なにあのハーレム!?
琴音ちゃん、よく耐えられるよね。
特にシルヴィア! あの雌狼!
なんなのよ!
あそこまで私は強気に出られない。
アシリアもよ! あざとくて、媚び売って!
なんて羨ましい! 私にはできないよ……
まぁ、秀一君は琴音ちゃんを気にして、少し迷惑っぽく感じてるみたいだから、まだ許せるけど……
これも惚れた弱みなのかなぁ。
琴音ちゃんにも嫌われたくない。
琴音ちゃんはどう思ってるかわからないけど、私の中ではもう大切な友達だ。
親友になりたい。
まどかや凛も友達よ。
こっちの世界に来る前は、仕事抜きで遊びに行ってたし、引退後も友達でいようって話をしている。
私って友達が少ないのよね。配信外だとちょっとコミュ障なところあるし。
でも琴音ちゃんとは普通にしゃべれるのよね。
秀一君のことになるとちょっと怖いところがあるけど……
だから私はどうしたらいいかわからない。
秀一君に恋しても絶対に実らない。
琴音ちゃんとも仲良くしたい。
なら秀一君を諦めたらいい。
理屈ではわかっていても、心が動かない。
そんな時に!
私は秀一君に助けられた!
ダンジョンでもだ!
ホントずるいよ……
秀一君達はなんでもないように思っているけど、あの時はヒヤッとした。
戦いが終わって、アドレナリンが引いて冷静になると、怖さが実感してくる。
ここはいつ死んでもおかしくない場所だって、改めて思い知らされた。
すごく怖いけど、秀一君が側にいるなら怖さが薄れる。
このパーティーから抜けたら、私はどうなる? 一歩も部屋から出られなくなるかもしれない。行けてせいぜい常夏の島にあるダンジョンくらいかもしれない。
あそこをメイン狩場にしている、他のプレイヤーの気持ちがわかったかもしれない。
私って依存してるのかなぁ。
デーモン達が王都に攻めてくるのは二週間後らしい。
戦う準備を整えろってことなのかな。
機動式神の使用許可も出たみたいで、今度は前の襲撃時よりも、多くの機動式神を投入するらしい。
真田さんと御影さんも憑依型機動式神を使うんだって。
沖田さんの強さはデタラメだから、きっと機動式神なんて必要ないんだろうな。
私達は王都から衛星都市フェルミアに戻ってきている。
みんな王都襲撃まで、できるだけレベルを上げようって、夜は常夏の島にあるダンジョンに行き、昼は沖田さん、真田さん、御影さんに戦い方を教わっている。
秀一君は呪力の総量を上げるために、今は式神をできるだけ多く、そして長時間出しっぱなしにしている。
琴音ちゃんも童子達を出しっぱなしだ。それだけじゃない。人造式神を新たに調伏して、朱雀、玄武、白虎、青龍を常に出していた。
その状態で秀一君と刀で組手をしているんだから、琴音ちゃんも相当すごいと思う。
あの二人が積み上げてきた経験、技術、知識、そして呪力。
今から追いつくことってできるのかしら?
ちなみに、呼び出された式神達は、常夏の島でバカンスを楽しんでいるらしい。
私は陰陽術を教わるために沖田さんの元へ訪れた。
沖田さんは常夏の島にある浜辺で、キャサリンさん達へ呪術の訓練をつけているところだった。
「よう。どうした?」
「沖田さん。私、陰陽師になりたいです」




