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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第93章 故郷への帰還


アルセリア辺境伯領。


懐かしい城壁が見えたとき、俺――レオン・アルセリアは、ようやく帰ってきたのだと実感した。


学院へ入学してからも、帰省や古代遺跡の調査で何度も訪れた故郷。


だが、今回は様子が違っていた。


城門の前には避難民の列が続き、負傷兵を乗せた荷馬車が次々と運び込まれている。


レオン(……こんなにひどいことになっていたのか)


魔物の大規模暴走。


組織的な襲撃。


地下古代施設の異変。


学院では何度も報告を聞いていた。


しかし、目の前に広がる現実は、報告書の文字よりずっと重かった。


門番「レオン様! お戻りになられたのですね!」


レオン「ああ。父上は?」


門番「軍司令部にいらっしゃいます!」


俺は頷き、城内へ足を進めた。



アルセリア辺境軍司令部。


大きな地図が広げられた執務室で、アルセリア辺境伯は複数の軍人と戦況を確認していた。


アルセリア辺境伯「……レオン。戻ったか」


レオン「はい、父上。ただいま戻りました」


アルセリア辺境伯「道中、異常はなかったか」


レオン「実は、正体不明の魔導人形と交戦しました」


父上の目が僅かに細まる。


俺は森の街道で遭遇した真紅の少女について説明した。


赤い瞳。


少女の姿をした魔導人形。


高密度の魔力障壁と異常な戦闘能力。


そして、俺が中核を斬り裂いたあと、少女が自ら燃え尽きたこと。


アルセリア辺境伯「……完全に消滅したのだな」


レオン「はい。灰も破片も残りませんでした」


アルセリア辺境伯「分かった。後ほど詳しい報告書を提出しろ」


レオン「はい」


父上は地図へ視線を戻した。


アルセリア辺境伯「現在、北境の魔物は一様に行動していない」


指先が三つの地点を示す。


アルセリア辺境伯「一部は南へ逃走を続けている。別の集団は部族単位で動き、さらに統率された部隊が補給路を狙っている」


レオン「……魔王の配下が関わっている可能性もあるんですよね」


アルセリア辺境伯「疑いはある。だが、確証はない」


その声には、厳格な軍人としての慎重さがあった。


アルセリア辺境伯「今回お前を呼んだのは、戦力の補充だけが目的ではない」


レオン「……では?」


アルセリア辺境伯「北境地下の古代施設だ。異常な魔力反応が広がっている。お前の精密な魔力制御と、これまでの調査経験が必要になる」


レオン(……やっぱり、ただ戦うだけじゃ済まないのか)


俺は小さく息を吐いた。




軍司令部を出たあと、俺は訓練場へ向かった。


そこには、見慣れた少女がいた。


フィオナ・レーヴェン。


幼いころからの知り合いで、学院へ入ってからも何度も顔を合わせている幼馴染だ。


フィオナは騎士たちに指示を出していた。


右腕にはまだ負傷の影響が残っているらしい。


レオン「フィオナ!」


彼女が振り返る。


フィオナ「あっ、レオン! 来たんだ!」


レオン「父上に呼ばれてね。相変わらず忙しそうだな」


フィオナ「そりゃそうだよ。今、どれだけ大変だと思ってるの?」


レオン「……それは分かってるつもりだけど」


フィオナ「ふふっ。あんた、また難しい顔してる」


レオン「今は仕方ないだろ」


フィオナ「そうだけどさ。ほんと、放っておくと一人で何でも抱え込むんだから」


レオン「……そんなつもりはないんだけど」


フィオナ「はいはい。そういうことにしといてあげる」


……相変わらずだ。


昔から、こいつには何を考えているのか見透かされることが多い。


俺はフィオナの右腕に視線を向けた。


レオン「腕の具合は?」


フィオナ「まだちょっと不自由だけど、何とかやってるよ」


レオン「無理するなよ」


フィオナ「もう、あんたまでそれ言うの?」


レオン「みんなも心配してたぞ」


俺は荷物から手紙の束と薬を取り出した。


レオン「クラリッサやカグラたちから。フィオナによろしくってさ」


フィオナ「えっ、私にまで?」


レオン「ああ。特にクラリッサは、絶対無茶するなって」


フィオナ「ふふっ。みんな優しいね」


彼女は手紙を受け取ると、大切そうに胸元へしまった。


フィオナ「……ありがと、レオン」


レオン「どういたしまして」


そのとき、遠くから騎士の声が響いた。


辺境騎士「フィオナ隊長! 第二班の配置が完了しました!」


フィオナ「分かった! そのまま北側の警戒を続けて!」


柔らかな表情が、一瞬で騎士のものへ変わる。


フィオナ「じゃあ、レオン。あとで作戦室に来て。話したいことがあるんだ」


レオン「了解」




続いて俺は、避難民の救護拠点へ向かった。


そこでは、銀髪の少女が負傷者の搬送を手伝っていた。


ルミナだ。


かつては命令を実行するために作られた存在。


だが今は、自分の意志で人々を助けている。


彼女は俺に気づくと、静かに歩み寄ってきた。


ルミナ「レオン様。到着されたのですね」


レオン「ああ。ルミナ、無事でよかった」


ルミナ「レオン様も、お怪我はありませんか?」


レオン「大丈夫だよ。それより、かなり忙しそうだな」


ルミナ「はい。避難民の搬送と、物資の輸送を行っています」


彼女は一度、言葉を止めた。


ルミナ「レオン様。一つ、お詫びがあります」


レオン「……お詫び?」


ルミナ「レオン様にご相談せず、王都を離れました。申し訳ありません」


俺は少し驚いた。


ルミナは静かに目を伏せる。


ルミナ「北境の被害が拡大していました。私の転移魔法と防御魔法が必要になると判断しました」


ルミナ「ですが、レオン様には何もお伝えせずに来てしまいました」


ルミナ「ご心配をおかけしました」


その言葉は、短く、正確だった。


けれど、彼女が俺のことを気にかけていたのは分かった。


レオン「謝らなくていいよ。ルミナが自分で考えて決めたんだろ?」


ルミナ「はい」


レオン「だったら、俺はその判断を尊重するよ」


ルミナ「……ありがとうございます」


レオン「ただ、心配したのは本当だからさ。次からは一言くらい連絡してくれると助かる」


ルミナ「はい。今後は、そのようにします」


少しの沈黙。


ルミナは俺を見つめた。


ルミナ「レオン様。怒っていないのですか?」


レオン「怒ってないよ。むしろ、ルミナらしいと思った」


ルミナ「私らしい、ですか」


レオン「ああ。困ってる人を放っておけなかったんだろ?」


ルミナ「……はい」


ほんの僅かに、彼女の口元が緩んだ。


ルミナ「私は、自分の意志でここへ来ました」


ルミナ「これからも、必要な方々を助けたいと思います」


レオン「うん。俺にもできることがあれば手伝うよ」


ルミナ「ありがとうございます、レオン様」


……。


レオン(……なんだか、少し嬉しいな)


以前の彼女だったら、自分の判断についてこうして話すことはなかったかもしれない。


ルミナは、確かに変わってきている。




俺は荷物から手紙の束を取り出した。


レオン「そうだ。みんなから手紙を預かってきたよ」


ルミナ「私に、ですか?」


レオン「ああ。エリシアもヴィクトリアも、すごく心配してた」


ルミナは両手で受け取る。


ルミナ「……ありがとうございます」


レオン「リリアーナからは、転移魔法の負担を減らす研究を続けてるって」


ルミナ「それは、ありがたいです」


レオン「ソフィアからは薬も預かってる」


ルミナ「救護班へ届けます。きっと役に立ちます」


彼女は手紙を静かに見つめた。


ルミナ「皆様にも、お礼を伝える必要があります」


レオン「帰ったら一緒に伝えよう」


ルミナ「はい」


その返事には、僅かな温かさが宿っていた。




その日の午後。


作戦室には、俺とフィオナ、ルミナが集まっていた。


フィオナ「じゃあ、二人とも。まずはこっちを見て」


机の上には北境の地図が広げられている。


レオン「魔物の移動経路か?」


フィオナ「そう。ここ数日、明らかに動きがおかしいの」


ルミナ「地下の魔力反応が強くなっている場所とも重なっています」


フィオナ「だからって、全部同じ原因とは限らないけどね」


レオン「逃げてる魔物と、軍隊みたいに動く集団がいるんだよな」


フィオナ「そういうこと。無駄に追い回したら、かえって被害が増えるかもしれない」


ルミナ「魔力が極端に弱くなった魔物も確認されています」


レオン「……魔境で何かが起きているのか?」


ルミナ「可能性はあります。ただし、現時点では断定できません」


フィオナ「だから調べるんだよ」


彼女は地図上の山岳地帯を指差した。


フィオナ「この周辺で、古代施設に似た反応が見つかってる」


ルミナ「レオン様の魔力制御能力があれば、調査の精度を高められるかもしれません」


レオン(……また古代遺跡か)


どうにも、俺の人生は遺跡と縁が深いらしい。


レオン「……分かった。できることはやるよ」


フィオナ「よし。それじゃ、行こうか」




山岳地帯へ向かう途中、俺たちは奇妙な魔物の群れを目撃した。


数十体の魔物が、人間の兵士に目もくれず南へ移動している。


しかも、その動きは弱々しい。


ルミナ「……魔力が著しく低下しています」


レオン「魔物なのに?」


ルミナ「はい。通常の状態とは異なります」


フィオナ「追撃はしない。避難路を確保して、群れを人里から逸らそう」


辺境騎士「了解しました!」


フィオナは負傷した右腕をかばいながら、部隊へ的確に指示を出す。


ルミナは魔力探知で安全な経路を確認し、俺は先頭で周囲を警戒した。


やがて、俺たちは山腹に埋もれた古代遺跡の入口へ辿り着いた。


ルミナ「……反応があります」


レオン「ここか?」


ルミナ「はい。地下から、一定の周期で魔力が流れています」


フィオナ「危険なの?」


ルミナ「不明です。ですが、以前より強い反応です」


フィオナ「分かった。周囲の警戒は私に任せて」


俺は剣の柄に手を置いた。


レオン(……何も起きなきゃいいんだけどな)


だが。


次の瞬間。


ゴゴゴゴ……!


地面が震えた。


埋もれていた古代魔法陣が、ゆっくりと光り始める。


ルミナ「……魔力反応が増大しています」


フィオナ「二人とも、下がって! 何かおかしい!」


レオン「……また面倒なことになったな!」


フィオナ「今さら何言ってるの。あんた、いつもそうじゃない」


レオン「……否定できない」


ルミナ「退避経路を確認しました。いつでも移動できます」


三人は互いの役割を理解し、警戒を強めた。


* * *


そのころ。


魔境の奥深く。


暗い古城の地下で、真紅の魔導人形が静かに微笑んでいた。


真紅の魔導人形「あら……レオンが北境に到着したのね」


少女は赤い瞳を細める。


真紅の魔導人形「ふふっ。本当に驚いたわ。あの障壁を一度で見抜くなんて……」


彼女は胸元に手を当てた。


そこには、傷一つない。


レオンに破壊されたのは、以前の身体だった。


真紅の魔導人形「次は、同じ失敗をしないようにしないといけないかしら」


少女は楽しそうに笑う。


だが、その視線が向けられたのは別の魔力反応だった。


真紅の魔導人形「あら……銀髪の子も動き始めたのね」


ルミナの魔力反応。


少女は満足そうに微笑んだ。


真紅の魔導人形「ふふっ。そちらも面白くなってきたわ」


彼女はゆっくりと立ち上がる。


真紅の魔導人形「マスターの計画も、そろそろ次の段階ね」


そう呟き、暗闇へ歩き出した。




北境の古代遺跡。


地面に浮かび上がった魔法陣は、さらに強く輝き始めていた。


ルミナ「……レオン様」


レオン「どうした?」


ルミナ「この魔力の流れ……以前にも、似たものを感じたことがあります」


レオン「王都の古代施設か?」


ルミナ「……はい。ですが、完全に同じではありません」


フィオナ「つまり、何かつながりがあるかもしれないってこと?」


ルミナ「可能性はあります」


地面の奥から、低い振動が響いた。


レオン(……また厄介なことが始まりそうだな)


俺は剣を抜いた。


フィオナは騎士たちへ退避命令を出し、ルミナは魔力障壁を展開する。


三人の視線が、光り続ける古代魔法陣へ集中した。


そして。


地下深くで、長い眠りについていた何かが、静かに動き始めた。


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