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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第73章 研ぎ澄まされた剣

 翌日。


 再び。


 学院の第二訓練場。


 昨日。


 フィオナと戦ったばかりなのに。


 今日は。


 セシリア先輩が。


 木剣を持って待っていた。


「本当にやるんですね」


「昨日、約束しましたから」


「ですよね……」


 逃げられない。


     


 今日も。


 見学者は多かった。


 クラリッサ。


 カグラ。


 アーヴェル。


 エリシア。


 ヴィクトリア。


 ソフィア。


 リリアーナ。


 ルミナ。


 昨日と。


 あまり変わらない。


「みんな暇なの?」


 クラリッサ。


「失礼な!」


「じゃあ何で来たの?」


「見たいから!」


「結局暇なんじゃ」


「違う!」


     


 その中で。


 妙に静かな奴が一人。


 アーヴェル。


「……」


 腕を組んで。


 訓練場中央をじっと見ている。


「アーヴェル」


「何だ」


「今日、静かだね」


「そりゃそうだろ」


「何で?」


 アーヴェルが。


 俺を見る。


「セシリア先輩の剣だぞ」


「……ああ」


 そうだった。


 こいつ。


 セシリア先輩のこと。


 剣士としてかなり尊敬してるんだった。


「昨日は第四候補にされてたのに」


「その話は忘れろ!」


「まだ気にしてる?」


「当たり前だ!」


     


「レオン」


 セシリア先輩が呼ぶ。


「はい」


「準備は?」


「できてます」


 俺も。


 木剣を持って。


 中央へ出る。


 向かい合う。


 そして。


 セシリア先輩が構えた。


「……」


 静かだった。


     


 昨日のフィオナとは。


 まるで違う。


 フィオナの剣は。


 辺境騎士として。


 生き残るための剣。


 泥臭くても。


 騙してでも。


 格上から一撃を奪う。


 そういう強さだった。


 でも。


 セシリア先輩は。


 綺麗だった。


 構え。


 足運び。


 剣先。


 全部。


 以前から完成度が高かった。


 だからこそ。


 今の構えを見て。


 少し嫌な感じがした。


(……何が変わった?)


 見た目は。


 ほとんど同じ。


 なのに。


 前より。


 隙がない。


     


「始め!」


 セルジュ先生の声。


 俺は。


 先に動いた。


 一歩。


 軽く踏み込む。


 正面。


 そこから。


 間合いへ。


「……?」


 入れない。


 セシリア先輩は。


 ほんの少し。


 位置を変えただけ。


 数センチ。


 それだけなのに。


 俺の攻撃線から。


 綺麗に外れている。


(何だこれ)


 次。


 角度を変える。


 入る。


 その前に。


「っ!」


 剣先。


 喉。


 俺は。


 反射的に弾いた。


 乾いた音。


     


「速っ!」


 アーヴェル。


 クラリッサ。


「前より速くない!?」


 ルミナ。


「速度上昇は限定的です」


「じゃあ何で速く見えるの?」


 カグラ。


「無駄がない」


 ルミナ。


「はい」


「動く前から、次にいる」


 その言葉で。


 俺も分かった。


(速くなったんじゃない)


 迷いが。


 減ってる。


 どこへ動くか。


 何を狙うか。


 選ぶ時間が。


 ほとんどない。


 だから。


 全部が。


 一拍早く見える。


     


 俺が踏み込む。


 セシリア先輩が流す。


 横。


 さらに。


 逆。


 受けられる。


 なら。


 誘う。


 わざと。


 少し大きく隙を見せる。


 以前なら。


 たぶん。


 最適な角度で。


 そこへ入ってきたはず。


 でも。


 今回。


 セシリア先輩は。


 半歩。


 変な入り方をした。


「……!」


 タイミングが。


 ずれた。


 剣先が。


 俺の頬すれすれを抜ける。


     


「今の……」


 俺が。


 一度距離を取る。


 セシリア先輩。


「フィオナから学びました」


「え?」


「実戦では」


 一度。


 木剣を構え直す。


「美しさだけでは、生き残れないそうです」


「……」


 なるほど。


 昨日の。


 フィオナの剣。


 それを。


 そのまま真似したわけじゃない。


 セシリア先輩の。


 完成された剣の中へ。


 ほんの少し。


 “崩し”を入れた。


(それ、かなり嫌な進化じゃない?)


    


「続けます」


「はい!」


 セシリア先輩が来る。


 一撃。


 受ける。


 二撃。


 流す。


 三撃。


 速い。


 いや。


 やっぱり。


 速さじゃない。


 隙がない。


 間がない。


 俺が。


 一瞬でも判断を遅らせたら。


 そこへ。


 剣が来る。


     


「っ!」


 一歩。


 避ける。


 その瞬間。


 袖に。


 軽い感触。


「……」


 見る。


 セシリア先輩の木剣が。


 制服の袖を。


 わずかにかすめていた。


「おおっ!」


 クラリッサ。


 アーヴェル。


「今の取っただろ!」


「まだ触っただけ!」


「十分だろ!」


 セシリア先輩。


「続けます」


「先輩が一番容赦ない!」


     


 そこから。


 攻防が続く。


 木剣が激しくぶつかる音が幾度となく響く


 俺が出る。


 セシリア先輩が流す。


 セシリア先輩が入る。


 俺が外す。


 昨日のフィオナとは。


 違う怖さ。


 フィオナは。


 何をしてくるか分からない。


 セシリア先輩は。


 何をしてくるか分かるのに。


 間に合わない。


     


 そして。


 セシリア先輩が。


 正面から来た。


(来る)


 一撃。


 受ける。


 強い。


 二撃目。


 角度。


 以前なら。


 絶対に選ばなかった場所。


(そこか!)


 俺も。


 踏み込む。


 木剣を。


 根元から押さえる。


「……!」


 セシリア先輩の目が。


 わずかに開く。


 そのまま。


 身体を入れ替える。


 一歩。


 俺の木剣が。


 セシリア先輩の肩口で止まった。


     


「……一本」


 セルジュ先生の声。


 静かになった。


     


 セシリア先輩が。


 ゆっくり。


 木剣を下ろす。


「……まだ届きませんか」


「いや」


 俺も。


 少し息を整える。


「前より」


「?」


「かなり怖かったです」


 セシリア先輩が。


 少しだけ目を細める。


「褒め言葉として受け取ります」


「褒めてます」


「それなら」


 ほんの少し。


 笑った。


「よかったです」


     


「先輩!」


 次の瞬間。


 アーヴェルが来た。


「最後の二撃目!」


「はい」


「あれ、最初から狙ってたんですか!?」


 目が。


 完全に少年。


「アーヴェル」


「何だ」


「急に子供みたいだね」


「うるさい!」


    


 セシリア先輩は。


 普通に説明してくれる。


「最初からではありません」


「じゃあ」


「レオンの受け方を見て、途中で変えました」


「途中で……」


 アーヴェル。


 真剣。


 ものすごく真剣。


「なるほど……」


 俺。


「そんな顔できるんだ」


「お前は黙ってろ!」


    


 その時。


 セシリア先輩が。


 アーヴェルを見る。


「あなたも」


「え?」


「以前より、足運びが安定していますね」


「……」


 アーヴェルが。


 完全に止まった。


「え?」


「模擬戦を見ていた時に、少し気になっていました」


「……」


「悪くありません」


「……あ」


 一拍。


「ありがとうございます!」


 声。


 少し裏返った。


    


「アーヴェル」


「何だよ」


「声」


「言うな!」


「ちょっと高かった」


「言うなって!」


 昨日。


 その憧れのセシリア先輩から。


 俺の第四婚姻候補みたいに見られていた男とは。


 思えない。


     


「じゃあ次!」


 クラリッサが。


 木剣を持つ。


「……何が?」


「私!」


「何で!?」


 カグラ。


「私も」


「昨日から続いてる!」


 クラリッサ。


「フィオナもセシリア先輩もやったんだから!」


「その理屈おかしくない?」


 ヴィクトリア。


「人気者ですわね」


「剣の方ならまだありがたいよ!」


 アーヴェル。


「結婚の方より?」


「比べるな!」


    


 その時。


 リリアーナが。


「問題があります」


「何?」


「昨日」


 淡々と言う


「辺境騎士の娘フィオナが、レオンと決闘して辺境へ戻りました」


「うん」


「本日」


「うん」


「辺境から戻ったセシリア先輩も、レオンと決闘しました」


「……うん」


 アーヴェルが。


 嫌そうな顔をする。


「やめろ」


「何で?」


「続きが分かるから」


     

 リリアーナ。


「噂だけを聞いた場合」


 一拍。


「辺境から戻った女性たちが、次々とレオンを巡って決闘していることに」


「何で全部恋愛に変換されるの!?」


 ヴィクトリア。


「昨日までの実績がありますもの」


「実績って何!?」


 アーヴェル。


「しかもフィオナ、第八夫人候補になってたしな」


「本人が勝手に言っただけだよ!」


     


 セシリア先輩が。


 少し考える。


「事実と異なるのであれば」


「はい」


「訂正すればいいでしょう」


 アーヴェル。


「先輩」


「何ですか」


「俺の噂がどうなったか思い出してください」


「……」


 セシリア先輩。


 沈黙。


「……訂正が間に合わない可能性がありますね」


「ご理解いただけましたか」


     


 しばらくして。


 訓練も終わった。


 俺とセシリア先輩は。


 使った木剣を片付けていた。


「でも」


「はい?」


「本当に強くなりましたね」


「まだ足りません」


 セシリア先輩が。


 木剣を見る。


「以前」


「?」


「私はあなたに一本取られました」


「はい」


「一度負けたのであれば」


 静かな声。


「次は、どうすれば届くのか考えるだけです」


「……」


 やっぱり。


 この人。


 強い。


 剣だけじゃなくて。


 考え方も。


「セシリア先輩らしいですね」


「そうでしょうか」


「はい」


    


 セシリア先輩が。


 俺を見る。


「レオン」


「はい」


「次は勝ちます」


「……」


 昨日も。


 同じことを。


 聞いた気がする。


「最近それ、よく言われるな……」


「何か?」


「何でもありません」


     


 翌日。


 俺は。


 ようやく。


 普通の学院生活に戻れると。


 そう思っていた。


 朝。


 教室。


 授業。


 昼食。


 訓練。


 いつもの一日。


 少なくとも。


 そうなるはずだった。



 昼休み。


 教室の扉が開く。


「レオン・アルセリア君」


「はい?」


 入ってきたのは。


 セレフィア先生だった。


「少し、いいですか?」


「俺?」


「はい」


 いつもの。


 柔らかい表情。


 でも。


 少しだけ。


 真剣だった。


「以前の記憶投影晶の件について」


 俺の手が止まる。


    


「まだ」


 先生は。


 静かに続けた。


「確認したいことがあります」


 教室が。


 少しだけ。


 静かになった。


 俺は。


 机から立つ。


「……分かりました」


 せっかく。


 普通の日に戻ったと思ったのに。


 どうやら。


 そう簡単には。


 いかないらしい。


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