↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/96

第59章 合同実習最終日と、森に残った違和感

 合同実習三日目。


 朝。


「帰れるー!」


 クラリッサが両手を上げた。


「まだ最終課題が残っていますわよ」


 ヴィクトリアが即座に言う。


「終わったら帰れる!」


「それなら正しいですわ」


 俺は畳んだ寝袋を背負い袋へ押し込む。


「三日間、意外と早かったな」


「楽しかった?」


 アーヴェルが聞く。


「まあまあ」


「素直じゃないな」


「……楽しかったよ」


「急に素直になった」


「どっちを求めてるんだよ」


 


 最終課題は単純だった。


 演習林北部に設置された三つの標識を確認。


 それぞれで班員全員の魔力を記録。


 そのまま学院指定の帰還地点まで戻る。


「簡単!」


 クラリッサが言う。


 カグラが地図を見る。


「そういう時ほど何か起こる」


「やめて」


 アーヴェルも嫌そうな顔をする。


「昨日まで十分色々あっただろ」


「料理とか?」


「レオン!」


 ヴィクトリアに睨まれた。


「まだ覚えていますの!?」


「美味しかった方だけ」


「……それなら許しますわ」


 ちょっと嬉しそうだった。


 


 出発して一時間。


 一つ目の標識は簡単に見つかった。


「第三班、全員登録完了」


 ルミナが確認する。


 そこから少し離れた場所にも学生たちがいた。


「あ、レオン!」


 別班のエミリアがこちらに気づいて手を上げる。


「エミリアの班もここ?」


「そう。私たちは今から二つ目!」


「こっちも」


「じゃあ競争?」


「実習だから競争じゃないよ」


「クラリッサにも同じこと言ってあげて」


「何で私!?」


 本人が後ろから抗議した。


 


 二つ目の標識付近では。


「レオンさん」


 今度はソフィアに会った。


 ソフィアの班は少し休憩しているところだった。


「ソフィア、大丈夫?」


「はい。少し足が疲れただけです」


 今日のソフィアは野外実習用の白い上衣に、濃紺のスカートと歩行用の革靴。


 淡い桃色の髪は邪魔にならないよう後ろでまとめられている。


 普段より活動的な格好なのに。


 薬草袋を胸元へ抱えて座っている姿は、いつもの柔らかな雰囲気のままだった。


「レオンさんこそ怪我してませんか?」


「今のところ」


「手を見せてください」


「え?」


「確認です」


 言われるまま出す。


 ソフィアが俺の手を見る。


「小さな擦り傷があります」


「これくらい平気だよ」


「駄目です」


「即答」


「化膿したら困ります」


 薬を塗られた。


「……ありがとうございます」


「どういたしまして」


 ソフィアが少し嬉しそうに笑った。



「レオン様」


 後ろからルミナ。


「何?」


「負傷判定では処置不要でした」


「言わなくていいの」


 ソフィアが少しだけ頬を膨らませる。


「必要です」


「はい」


 ルミナが一拍置く。


「訂正します。必要でした」


「学習早いな」


 


 三つ目へ向かう途中。


 今度は紫色の小さな頭が茂みから出てきた。


「……リリアーナ?」


「レオン」


「何してるの?」


「観察」


「何を?」


「苔」


「実習は?」


「実習中」


「本当に?」


 リリアーナの班員が少し離れた場所で頭を抱えていた。


「リリアーナ! 勝手に離れないで!」


「呼ばれてるよ」


「分かった」


 でも動かない。


「何がそんなに面白いの?」


「この苔。魔力吸収率が高い」


「持って帰らないよね?」


「……」


「リリアーナ?」


「観察だけ」


「今の間が怖い」


 


 そこからさらに北へ。


 二十分ほど進んだところで。


 ルミナが突然止まった。


「……」


「どうした?」


「微弱な魔力変動を検出」


 クラリッサが剣へ手を伸ばす。


「魔物?」


「違います」


 カグラも周囲を見る。


「鳥の声がない」


 言われて。


 気づいた。


 森が静かだった。


 不自然なくらい。


 


「ここ」


 ルミナが地面を見る。


 落ちていたのは。


 小さな魔晶石。


 ただし。


 半分ほどが黒く濁っていた。


「何ですの、これ」


 ヴィクトリアが眉を寄せる。


「普通の魔晶石ではありませんわね」


「触らない方がいい?」


 クラリッサが聞く。


「触らない方がいい」


 俺が即答した。


「今日は素直だね」


「学習したんだよ」


 ルミナがしゃがむ。


 触れずに観察する。


「通常の魔力汚染とは異なります」


「原因は?」


「不明」


「ルミナでも?」


「はい」


 珍しい。


 


 アーヴェルが腕を組む。


「持って帰るか?」


「推奨しません」


 ルミナが答える。


「じゃあ場所だけ記録しよう」


 カグラが地図へ印をつける。


「学院へ報告」


「それが一番だね」


 誰も反対しなかった。


 何となく。


 これは学生が好奇心で触っていいものじゃない。


 そんな気がした。


 


 三つ目の標識は。


 そこから十分ほどで見つかった。


「最後!」


 クラリッサが魔力を登録する。


 俺。


 ヴィクトリア。


 カグラ。


 アーヴェル。


 ルミナ。


 全員終了。


「終わったー!」


「まだ学院まで戻りますわよ」


「ヴィクトリアは本当に現実を言う!」


「誰かが言わなければなりません!」


 


 午後。


 演習林出口。


 先に戻っていた学生たちの中には。


 エミリア。


 ソフィア。


 リリアーナの姿もあった。


「レオンさん!」


 ソフィアがこちらへ小さく手を振る。


 リリアーナは。


 何か袋を持っていた。


「……リリアーナ」


「何?」


「それ何?」


「苔」


「持って帰ってるじゃん!」


「少量」


「観察だけって言ったよね!?」


 エミリアが横で笑っている。


「先生には許可もらったらしいよ」


「許可取ってるなら先に言って!」


 


 担当教師が記録板を確認した。


「第三班。全員帰還」


「はい」


「課題達成を確認。総合合同実習、終了」


「やった!」


 クラリッサが跳ねる。


 ヴィクトリアも笑っている。


 カグラは小さく息を吐く。


 アーヴェルは肩の荷を下ろした。


 ルミナが俺を見る。


「レオン様」


「何?」


「三日間」


 少しだけ考えて。


「楽しかったです」


「俺も」


 本当に。


 そう思えた。


 


 ただし。


 帰る前に。


 俺は教師へ森の黒い魔晶石について報告した。


「場所は?」


「ここです」


 カグラが地図を渡す。


「分かった。教師側で確認する」


「お願いします」


 その時は。


 それで終わった。


 変な石を見つけた。


 ただそれだけ。


 少なくとも。


 俺たちはそう思っていた。


 森の奥。


 黒く濁った魔晶石の周囲で。


 ほんの一瞬。


 この世界を巡る魔力の流れが。


 まるで何かに削り取られたように。


 細く途切れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。