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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第54章 図書館の勉強会と、次の合同実習

 放課後。


「レオン、助けてくれ」


 ジェイドが真顔で言った。


「何?」


「魔法理論が分からん」


「……俺に聞く?」


「お前、成績いいだろ」


「剣術よりは自信ないよ」


「俺よりは絶対分かる!」


 そこまで力強く言われると断りづらい。


「どこが分からないの?」


「ここからここまで」


 教科書を開く。


 三十二ページ。


 そして指が止まったのは。


 百八十六ページ。


「ほとんど全部じゃん!」


    


 ということで。


 放課後。


 学院図書館。


 気づけば俺たちは大きな机を囲んでいた。


 俺。


 ジェイド。


 マリエッタ。


 アーヴェル。


 エリシア。


 リリアーナ。


「何で人数増えたの?」


「私も復習しようかと思いまして」


 エリシアが微笑む。


「俺は巻き込まれた」


 アーヴェル。


「私は質問がある」


 マリエッタ。


「研究資料を読んでいただけ」


 リリアーナ。


「最後の人、勉強会参加してないよね?」


「今から参加する」


「切り替え早いな」


     


 エリシアは今日は制服の上から薄い生成り色のカーディガンを羽織っていた。


 長い栗色の髪を片側へ流し。


 椅子に座ると、膝までの制服スカートから白い靴下に包まれた脚がきちんと揃う。


 柔らかな色合いの服がよく似合っていて。


 机へ身を寄せて教科書を覗く姿は、いつも以上に穏やかに見えた。


「レオンさん」


「はい」


「また止まっています」


「……最近みんな気づくの早くない?」


「分かりやすくなったのでは?」


「それは困る」


 エリシアが楽しそうに笑った。


     


「まずここ」


 ジェイドが教科書を指差す。


「魔力循環効率って何だ?」


「そこから?」


「そこから」


「ええと……」


 俺が説明しようとすると。


「魔力をどれだけ無駄なく術式へ送れるか」


 リリアーナが即答した。


「おお」


「水路を想像するといい」


「水路?」


「広くて真っ直ぐなら流れやすい。細く曲がっていれば損失が増える」


「分かりやすい!」


 ジェイドが感動している。


「リリアーナ、教えるの上手いね」


「当然」


「そこは謙遜しないんだ」


     


「じゃあこれは?」


「術式安定率」


「これは?」


「魔力の揺らぎを抑える指標」


「これは?」


「基礎」


「それは?」


「常識」


「それが分からないから聞いてるんだよ!」


 ジェイドが頭を抱えた。


 リリアーナは少し考える。


「質問の難易度を下げる」


「頼む!」


     


 一方。


 マリエッタが困っていたのは別のものだった。


「この礼法の授業が難しくて……」


「礼法?」


「はい。晩餐会での席次とか、挨拶の順番とか」


 ジェイドが遠い目をする。


「俺もそこ全部捨てた」


「捨てちゃ駄目だよ」


 エリシアが笑う。


「では一緒に確認しましょうか」


「お願いします!」


 そこからエリシア先生の礼法講座が始まった。


「公爵家と伯爵家が同席した場合は――」


「はい」


「ただし主催者との関係によって――」


「はい」


「さらに王族がいる場合は――」


「待ってください」


「はい?」


「条件増えすぎです!」


「そうですよね」


 エリシアが困ったように笑う。


「私も小さい頃、何度も間違えました」


「エリシアさんでも?」


「もちろんです」


 マリエッタが少し安心した顔になった。


     


 アーヴェルは隣で教科書を閉じた。


「なあ」


「何?」


「俺たち普通に学生してるな」


「何それ」


「いや、最近遺跡とか武闘祭とか多かっただろ」


「ああ」


 言われてみれば。


 図書館で宿題。


 友達に勉強を教える。


 分からないところを聞く。


 ものすごく普通だ。


「いいじゃん」


「俺もそう思う」


「ただ」


 ジェイドを見る。


「このままだと今日中に終わらない」


「聞こえてるぞ!」


    


 それから一時間。


「できた!」


 ジェイドが答案用紙を掲げる。


「全部?」


「七割!」


「三割どこ行ったの?」


「明日の俺に任せる!」


「駄目だろ!」


 マリエッタも礼法ノートを閉じる。


「私もかなり整理できました」


「よかったですね」


 エリシアが微笑む。


 その時。


 図書館の入口から教師が入ってきた。


「一年生は少し聞いてください」


 何人かが顔を上げる。


「明日の朝、正式に告知しますが」


 教師が掲示用の紙を持ち上げた。


「来週から一年生の《総合合同実習》を行います」


「総合?」


 俺たちは顔を見合わせる。


     


「複数クラスを混ぜた班を作り、三日間の実習を行います」


 内容は。


 戦闘。


 魔術。


 応急処置。


 野営。


 探索。


 そして状況判断。


 今まで別々に習っていたものを全部まとめて行うらしい。


「場所は学院北西の演習林です」


 クラリッサがいたら喜びそうだな。


 そんなことを考えていたら。


「今年は推薦入学生も増えたため、班分けは家柄や所属クラスを考慮せず行います」


 ジェイドが俺を見る。


「また合同か」


「みたいだね」


「今度こそ同じ班になったら勝負しようぜ」


「実習だからね?」


     


 教師が去ったあと。


 アーヴェルが机へ頬杖をつく。


「三日間か」


「野営もあるって」


「面倒そうだな」


 マリエッタが不安そうに手を上げる。


「私、野営したことありません」


「俺はあるぞ」


 ジェイドが胸を張る。


「親父と鉱山へ行った時に」


「それ野営なの?」


「外で寝た!」


「大体合ってる」


 リリアーナが言う。


「演習林には希少な魔力植物もある」


「採っちゃ駄目だよ」


「観察だけ」


「本当に?」


「……可能なら少量」


「駄目じゃん」


     


 帰り道。


 エリシアが俺の隣を歩く。


「レオンさんは楽しみですか?」


「合同実習?」


「はい」


「まあ、ちょっと」


「意外です」


「そう?」


「以前なら『面倒』と言っていた気がします」


「……言ってたかも」


 でも今は。


 誰と同じ班になるのか。


 どんな実習になるのか。


 少しだけ楽しみだった。


「俺も変わったのかな」


「良い方に?」


「そうだといいけど」


「私はそう思いますよ」


 エリシアが笑う。


     


 翌朝。


 教室の掲示板には。


 大きな紙が貼られていた。


 《第一学年 総合合同実習》


 その下。


 班分けは――


 明日発表。


「今日じゃないの!?」


 教室中から不満の声が上がる。


 俺も同じだった。


「そこ一番気になるのに……」


 どうやら。


 普通の学院生活も。


 普通に退屈とはいかないらしい。


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