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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第53章 食堂の席と、新しい顔ぶれ

 自主練の翌日。


 昼休み。


「腹減った……」


 俺は教室を出た。


「昨日あれだけ動けば当然だな」


 アーヴェルが隣を歩く。


「クラリッサの自主練、もう自主じゃない気がする」


「参加を断ればいいだろ」


「断れると思う?」


「無理だな」


「だろ?」


     


 食堂へ向かう途中。


「あ」


 前に見覚えのある二人がいた。


 ジェイドとマリエッタだ。


 ただ。


 二人とも食堂の入口付近で止まっている。


「何してるの?」


「レオン」


 ジェイドが振り返る。


「いや、その……」


 珍しく歯切れが悪い。


 マリエッタも困ったように笑った。


「ここって、本当に私たちも使っていいんですよね?」


「食堂?」


「はい」


「学生ならいいんじゃない?」


「俺もそう聞いてるんだけどさ」


 ジェイドが中を見る。


「なんか入りづらい」


 言われて。


 俺も食堂を見る。


 確かに。


 制服は同じでも。


 座っている学生の多くは貴族出身。


 食事中の作法も。


 会話も。


 妙に上品だ。


「気持ちは分かる」


 前世の俺なら。


 知らない店ですら入れないことがあった。


「じゃあ一緒に食べる?」


「いいのか?」


「何で駄目なの?」


「いや……お前、伯爵家だろ?」


「三男だけど」


「そういう問題?」


 アーヴェルが笑った。


「気にするだけ無駄だぞ。こいつそういうの全然気にしないから」


「それ褒めてる?」


「一応」


     


 四人で食堂へ入る。


 ちょうどその時。


「レオンさん」


 小さな声。


「ソフィア」


 淡い桃色の髪を揺らしながら、ソフィアがこちらへ来た。


 今日は制服の上に薬草実習用の白い短い上着を羽織っている。


 少し大きめの袖から細い手首が覗き。


 膝下までの濃紺スカートから、白い靴下に包まれた細い脚が伸びていた。


 胸元には小さな薬草袋。


 両手には昼食の盆。


 相変わらず派手ではないけど。


 控えめな服装が本人の柔らかな雰囲気によく合っている。


「……レオンさん?」


「何?」


「いえ……見られていたので」


「ごめん」


 最近。


 本当に誤魔化せなくなった。


 ソフィアの頬が少し赤くなる。


「嫌では……ないです」


「え?」


「な、何でもありません」


    


「一緒に食べる?」


「はい」


 ソフィアも加わって。


 空いている大きなテーブルへ向かう。


 そこへ。


「あら」


 先に座っていた男子学生がこちらを見た。


 知らない顔だ。


 たぶん別クラス。


「そこを使うのか?」


「空いてるけど」


「いや」


 男子学生の視線が。


 ジェイドとマリエッタへ向いた。


「その二人も?」


 空気が少し変わる。


 ジェイドの顔が固くなった。


「俺たちがいたら駄目なのか?」


「駄目とは言っていない」


「じゃあいいだろ」


「ただ、以前なら――」


「あ」


 俺はそこで気づいた。


「以前なら入学してない?」


「……まあ」


「でも今年は学生だよ」


「それはそうだが」


「じゃあ終わりじゃない?」


「……」


 男子学生が黙る。


 俺も黙る。


 何か間違えた?


     


 アーヴェルが俺の肩を叩いた。


「お前、もう少し言い方あるだろ」


「え?」


「正しいけど直球すぎる」


「でも学生だよね?」


「そうだけど」


 すると。


 男子学生がため息をついた。


「別に追い出すつもりはない」


「そうなの?」


「ただ……慣れていないだけだ」


 ジェイドが眉を上げる。


「俺たちもだよ」


「何?」


「俺だって貴族ばっかりの食堂なんて慣れてない」


「……」


「だから同じだろ」


 今度は男子学生が少し困った顔をした。


「そう言われると……そうだな」


 何だ。


 喧嘩じゃなかった。


     


 結局。


 なぜかその男子学生まで同じテーブルに座ることになった。


「ロイド・ハーゼンだ。子爵家の次男」


「ジェイド・オルセン。鍛冶屋の息子」


「マリエッタ・コールです。商家です」


「レオン・アルセリア」


「それは知っている」


「何で?」


「お前を知らない一年生の方が少ないぞ」


「またそれ?」


 隣でアーヴェルが笑う。


「諦めろ」


     


 食事が始まる。


「これどうやって食うんだ?」


 ジェイドが魚料理を見て固まる。


「普通に?」


「骨が多い」


「そこ?」


 ソフィアが小さく笑う。


「こうすると取りやすいですよ」


 器用に骨を外して見せる。


「おお」


「薬草の処理と似ているので」


「魚と薬草って似てるの?」


「少しだけです」


 本当かな。


     


 マリエッタは周囲を見ながら言った。


「思っていたより普通ですね」


「何が?」


「学院です」


 少し考えてから続ける。


「入る前は、貴族の人たちと一緒に授業を受けるなんて怖いと思っていました」


 ロイドが気まずそうに水を飲む。


「こちらも似たようなものだ」


「え?」


「今年は妙な連中が大量に入ってくると聞かされていた」


 ジェイドが笑う。


「妙な連中って俺?」


「今のところ否定できない」


「おい!」


 みんなが笑った。


     


 昼休みの終わり。


 食堂を出る。


「明日もここでいいかな」


 マリエッタが言う。


「いいんじゃない?」


「俺も来る」


 ジェイド。


 ロイドは少し迷って。


「……席があればな」


「来るんだ」


「悪いか?」


「別に」


 また一人増えた。


     


 教室へ戻る途中。


 ソフィアが俺の横へ来る。


「レオンさん」


「何?」


「こうやって少しずつ変わっていくんでしょうか」


「学院が?」


「はい」


 俺は少し考える。


「多分」


 急に全部が変わるわけじゃない。


 慣れない人もいる。


 戸惑う人もいる。


 でも。


 一緒に授業を受けて。


 一緒に剣を振って。


 一緒に昼飯を食べていれば。


「そのうち普通になるんじゃない?」


「普通に?」


「うん」


 ソフィアが微笑んだ。


「それなら、いいですね」


 俺もそう思う。


 静かな学院生活ではなくなったけど。


 人が増えていくのも。


 案外。


 悪くなかった。


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