第51章 合同模擬戦と、増えていく仲間
「始め!」
合図と同時に。
「レオーン!」
クラリッサが突っ込んできた。
「最初から俺!?」
「一番強いから!」
「理由になってない!」
大剣が振り下ろされる。
受ける。
重い。
「うわっ!」
「まだまだ!」
「授業だからね!?」
その横から。
光弾。
「危なっ!」
俺は慌てて身体をひねる。
ヴィクトリアだ。
「避けないでくださる?」
「無茶言わないで!」
「模擬戦ですもの」
「楽しんでるよね!?」
「少しだけですわ」
絶対かなり楽しんでる。
「レオン!」
今度はアーヴェル。
「悪く思うな!」
「思うよ!」
剣同士がぶつかる。
キン!
一合。
二合。
三合。
そこへ。
「右」
カグラの声。
「了解!」
俺が身体を下げる。
次の瞬間。
カグラの木刀がアーヴェルの肩へ。
「一本」
「うわっ!」
アーヴェルが悔しそうに下がる。
「助かった!」
「問題ない」
カグラは平然としている。
「ジェイド!」
「おう!」
今度はジェイドが前へ出る。
狙うのはクラリッサ。
「行くぞ!」
「来い!」
剣と大剣がぶつかった。
「ぐっ……!」
「力あるね!」
「そっちこそ!」
かなりいい勝負だ。
その間に。
「マリエッタ!」
「はい!」
後ろから補助魔術。
淡い光が俺たちを包む。
「身体が軽い」
「速度補助です!」
「便利!」
「ジェイドさんと同じこと言ってます!」
「褒めてる!」
そして。
問題が一人。
ルミナ。
「……」
「ルミナ」
「はい」
「動かないの?」
「好機を待っています」
「怖いこと言うな」
その直後。
ルミナが消えた。
「え?」
いや。
速すぎて見えなかっただけ。
「後ろ!」
《剣聖》が反応する。
振り返る。
カン!
何とか受けた。
「危なっ!」
「反応速度良好」
「試験されてる!?」
ルミナは少しだけ首を傾げる。
「模擬戦ですので」
「最近言い訳覚えたよね!?」
試合は。
想像以上に長引いた。
クラリッサが前。
アーヴェルが補助。
ヴィクトリアが後ろ。
ルミナが隙を狙う。
こっちは。
俺。
カグラ。
ジェイド。
マリエッタ。
「左から来ます!」
マリエッタが叫ぶ。
「分かった!」
ヴィクトリアの光弾。
避ける。
そこへクラリッサ。
「今!」
「させない」
カグラが止める。
木刀と大剣がぶつかる。
「カグラ!」
「クラリッサ」
二人とも楽しそうだ。
「なんでみんな戦うと元気になるんだよ!」
最後は。
ルミナがジェイドを狙った。
「来た!」
ジェイドが構える。
「正面!?」
「はい」
ルミナの木剣。
ジェイドが受ける。
「ぐっ!」
耐えた。
「おお!」
俺も驚く。
「耐えた!」
「俺だって少しは!」
でも。
「終了です」
「え?」
ルミナが一歩横へ。
ジェイドの剣が空を切る。
次の瞬間。
木剣が首元で止まった。
「一本!」
教師の声。
「くそー!」
ジェイドが地面に座る。
「惜しかった」
俺が言う。
「全然惜しくない!」
「受けられたじゃん」
「その後一瞬だった!」
結局。
時間切れ。
勝敗なし。
「引き分けです」
教師が言う。
「えー!」
クラリッサが不満そう。
「もう一回!」
「やりません」
「なんで!」
「授業だからです」
「正論」
休憩時間。
みんな芝生に座った。
「疲れた……」
俺は仰向けになる。
「楽しかった!」
クラリッサは元気。
「体力おかしいだろ」
「レオンの方が動いてたじゃん」
「俺は疲れてる」
「鍛え方が足りない!」
「昨日まで休暇だったんだけど」
少し離れた場所では。
ヴィクトリアが水筒を飲んでいた。
実技用の白い上衣。
紺色の細身の訓練服。
長い金髪は邪魔にならないよう高くまとめられている。
いつもの華やかなドレス姿とは違い。
身体の線がすっきり見える格好だった。
背筋を伸ばして座っているだけなのに。
細い腰。
長い脚。
動くたび揺れる金色の髪。
妙に目に入る。
「レオン」
「はい」
「また見ていますわね」
「……」
「否定しませんの?」
「最近否定しても意味ない気がして」
「少しは努力なさい!」
顔を赤くして怒られた。
「レオン様」
ルミナが横から言う。
「視線時間は約――」
「測定禁止」
「まだ数字を言っていません」
「先に止めた」
「学習していますね」
「お互いにね」
午後。
合同授業の最後に。
教師が全員を集めた。
「今日の目的は勝敗ではない」
学生たちが静かになる。
「普段組まない相手と戦い、協力することだ」
貴族。
平民。
地方出身。
推薦入学。
いろんな学生が並んでいる。
「今年から学院は入学制度を広げた」
教師が続ける。
「当然、考え方の違いもある」
少しだけ空気が変わる。
「だが実戦では家柄は剣を振らない」
「魔術を撃つのも肩書きではない」
「最後に頼れるのは」
教師が全員を見る。
「隣にいる人間だ」
静かだった。
授業が終わったあと。
ジェイドが俺のところへ来た。
「レオン」
「何?」
「今度また戦ってくれ」
「いいよ」
「即答?」
「学院なら安全だし」
「それどういう意味だよ」
「辺境武闘祭よりは」
「確かに」
そこへ。
マリエッタも来る。
「私も一緒に練習していいですか?」
「もちろん」
「補助魔術もっと上手くなりたいので」
カグラも頷く。
「私も参加する」
「増えたな」
その後ろ。
「私も!」
クラリッサ。
「当然ですわ」
ヴィクトリア。
「俺も入れてくれよ」
アーヴェル。
「……」
俺は周りを見る。
「普通の自主練だよね?」
「多分」
アーヴェルが答える。
「多分って何だよ」
帰り道。
俺は少し笑っていた。
「レオンさん」
エリシアが隣を歩く。
「楽しそうですね」
「そう見える?」
「はい」
「……そうかも」
学院へ来た頃。
目立ちたくなかった。
誰とも深く関わらず。
静かに過ごしたかった。
でも。
いつの間にか。
剣を教えてくれと言う人がいて。
一緒に練習したいと言う人がいて。
笑いながら帰る相手がいる。
「悪くないな」
「何がです?」
「学院生活」
エリシアが笑う。
「今さらですね」
「本当に」
その頃。
学院の地下。
誰もいない管理室で。
青い文字が静かに浮かんでいた。
《北西観測拠点 接続維持》
《東部観測拠点 応答なし》
そして。
一瞬だけ。
新しい表示。
《外部変動 微弱》
だが。
すぐに消えた。
学院の地上では誰もそのことを知らない。
俺たちはまだ普通の学生として笑っていた。




