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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第50章 休暇明けの合同授業と、平民の一年

 翌朝。


 久しぶりの教室。


「……眠い」


 俺は机に突っ伏した。


「レオン様」


「何?」


「授業開始まで七分です」


「七分もあるなら寝られる」


「効率が悪いです」


「睡眠に効率求めないで」


 向かいではアーヴェルも同じように机へ伏せている。


「分かるぞレオン……」


「心の友よ……」


「休暇明けの朝は人間が活動する時間じゃない」


「それな……」


 バン。


 クラリッサが俺たちの机を叩いた。


「元気出して!」


「……朝から元気すぎるんだよ」


「昨日も剣術講義あったよね?」


「寝れば回復する!」


「その身体が欲しい……」


     


 一時間目。


 担当教師が教室へ入る。


「今日は通常授業を変更する」


 嫌な予感。


「第一学年の合同実技を行う」


「合同?」


「今年度から始まった推薦入学制度の学生も含め、複数クラス合同だ」


 なるほど。


 今年から学院は身分より能力を重視する入学枠を増やした。


 平民。


 地方騎士の子。


 商人の家。


 冒険者の家。


 そういう出身でも、優れた能力があれば推薦される。


「移動!」


 クラリッサが一番に立った。


「だから元気だな!」


     


 訓練場。


 すでに百人近い一年生が集まっていた。


「レオン!」


 聞き覚えのある声。


「あ」


 ジェイド・オルセン。


 武闘祭で俺と戦った一年生だ。


「久しぶり」


「数日前だけどな」


「そうだった」


 休暇中が濃すぎて感覚がおかしい。


「お前、辺境武闘祭優勝したんだって?」


「何で知ってるの?」


「学院じゃもう噂だぞ」


「早くない?」


 横からアーヴェル。


「お前、自分が思ってるより有名だからな」


「嫌な情報ありがとう」


     


「ジェイド」


 少し離れたところから男子学生が声をかけた。


 身なりを見る限り貴族だ。


「今日こそ負けないからな」


「おう」


「……」


 俺は少し意外だった。


 てっきり身分で揉めるのかと思った。


「仲いいの?」


「いや」


 ジェイドが即答する。


「あいつとは毎回喧嘩してる」


「仲いいじゃん」


「違う」


 本人だけ気づいていないタイプらしい。


     


 合同実技は四人一組。


 剣士二人。


 魔術担当。


 補助担当。


 役割を交代しながら模擬戦をする。


「組み合わせは教師側で決めた」


 名簿が読み上げられる。


「レオン・アルセリア」


 はい。


「カグラ・ミカヅキ」


「はい」


「ジェイド・オルセン」


「はい!」


 そして。


「マリエッタ・コール」


 知らない名前だ。


 小柄な茶髪の女子学生が手を上げた。


「よろしくお願いします!」


 商家出身。


 推薦枠で入った魔術科の学生らしい。


「面白い組み合わせ」


 カグラが言った。


「確かに」


     


 カグラは今日は学院指定の実技服だった。


 濃紺の上衣に細身の白い訓練袴。


 いつもの長い黒髪は高めにまとめられている。


 普段は静かな印象が強いけれど。


 腰へ刀を差し、背筋を伸ばして立つと雰囲気が一気に変わる。


 細く締まった腰。


 袴の下でも分かる長い脚。


 無駄のない立ち姿。


 何というか。


(綺麗というより格好いいな……)


「レオン」


「ん?」


「見ていた?」


「……何を?」


「私」


「……」


「沈黙は肯定」


「最近みんな察し良すぎない?」


 カグラの口元がほんの少し上がった。


「悪い気はしない」


「それならよかった」


 後ろから。


「レオン様」


「ルミナは今日は別班だろ!」


 遠くから見ていた。


 怖い。


     


「始め!」


 模擬戦開始。


 最初は。


 俺とジェイドが前衛。


 カグラが遊撃。


 マリエッタが魔術支援。


「行くぞ!」


 ジェイドが飛び出す。


「待って!」


「え?」


 敵班の魔術が飛んできた。


 ドン!


「うおっ!」


「だから待ってって!」


「悪い!」


 ジェイドは強い。


 でも。


 勢いがありすぎる。


「右」


 カグラが短く言う。


「分かった!」


 俺が右へ。


 カグラは左。


 相手の前衛を挟む。


「速っ――」


 俺が剣を合わせる。


 その瞬間。


 カグラが横を抜けた。


 相手の腕へ軽く一撃。


「一本!」


 早い。


「次!」


 ジェイドが戻ってくる。


 今度は。


「俺、先に行っていい?」


「聞くようになった!」


「成長した!」


     


 二戦目。


 役割交代。


 俺が後ろ。


 ジェイドとカグラが前。


 マリエッタが補助。


「防御魔術を張ります!」


 透明な膜が二人を覆う。


「おお!」


 ジェイドが驚く。


「これ便利だな!」


「便利って言わないでください!」


「褒めてる!」


 そのまま突撃。


 相手の剣をジェイドが受ける。


 カグラが横から抜ける。


「そこ」


 コツン。


「一本!」


 また取った。


「カグラ強すぎない?」


「普通」


「その普通おかしいよ」


     


 休憩。


 ジェイドが地面に座る。


「俺、もっと強くならないとな」


「十分強いと思うけど」


「武闘祭でお前に負けた」


「それ基準にしなくていいよ」


「あとカグラにも勝てる気がしない」


「正しい判断」


「本人が言う!?」


 マリエッタが笑う。


「でも、こういう授業いいですね」


「そう?」


「はい」


 少しだけ迷ってから。


「私、去年までならこの学院に入れなかったので」


 俺たちは黙った。


「商人の娘ですから」


「でも今年は入れた」


「はい」


 嬉しそうに頷く。


「魔術試験で推薦をもらいました」


 ジェイドも言う。


「俺も鍛冶屋の息子だしな」


「そうだったね」


「親父、合格通知見て三回読み直したぞ」


「分かる気がする」


     


 俺は周囲を見る。


 以前なら。


 この学院にはいなかった人たち。


 でも。


 今は普通に一緒に授業を受けている。


 剣を振って。


 魔術を使って。


 失敗して。


 笑っている。


(悪くないな)


 そんなことを考えていたら。


「レオン」


 カグラが呼ぶ。


「何?」


「次の試合」


「あ」


「相手」


 見る。


 クラリッサ。


 アーヴェル。


 ヴィクトリア。


 ルミナ。


「……」


 嫌な予感しかしない。


「レオン!」


 クラリッサが大剣を持って笑う。


「本気で行くよ!」


「授業だからね!?」


「分かってる!」


 ヴィクトリアが杖を構える。


「覚悟なさい」


「何でそんなやる気なの?」


 アーヴェルまで剣を抜く。


「悪いなレオン」


「お前は味方だと思ってたよ!」


 最後。


 ルミナ。


「出力制限を確認」


「何パーセント?」


「〇・〇一」


「絶対守って」


「承知しました」


    


 教師が手を上げる。


「始め!」


 クラリッサが突っ込んでくる。


「レオーン!」


「速い!」


 ヴィクトリアの光弾。


 アーヴェルの剣。


 さらにルミナ。


「待って待って待って!」


 ジェイドが叫ぶ。


「これ授業だよな!?」


「俺もそう思ってた!」


 横では。


 カグラが静かに刀を抜く。


「楽しくなってきた」


「カグラまで!?」


 休暇明け。


 普通の学院生活。


 俺が望んでいたものは。


 確かに戻ってきた。


 ただし。


 普通の基準が。


 少しだけおかしくなっている気がした。


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