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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第45章 古代遺跡の中と、二百十三年前の記録

 青く光る文字を前にして。


 俺はしばらく動けずにいた。


 《現管理者による追加認証を要求》


「……また俺か」


「はい」


 ルミナが迷いなく答える。


「たまにはリリアーナとかじゃ駄目?」


「駄目です」


「即答なんだ」


 リリアーナが少し残念そうに言う。


「代われるなら代わりたい」


「そうだろうね」


 この子の場合、危険より好奇心が勝っている。


     


「レオンさん」


 セレフィア先生が俺を見る。


「無理に認証する必要はありませんよ」


「そうしたいんですけど……」


 俺は奥の通路を見る。


 二百十三年前の記録。


 知らないはずなのに出てきた《前回》という言葉。


 そして《世界線識別値》。


「ここまで来て帰る方が気になるんですよね」


「では慎重に進みましょう」


「はい」


 俺は石壁へ手を触れた。


 青い光が広がる。


 《管理者照合》


 《認証完了》


 《記録閲覧権限を付与》


 さらに。


 《第二管理系統への接続状態 保留》


「よし」


「安心しましたか?」


 ルミナが聞く。


「かなり」


 勝手に新しい管理者権限まで押しつけられたら困る。


     


 奥へ進む。


 通路の壁には青い魔晶石が並んでいた。


 俺たちが近づくたび順番に光る。


「便利だな」


「自動照明と思われます」


「古代文明なのに妙なところ親切だね」


「昨日まで通路だった場所が壁になる施設です」


「前言撤回」


 後ろでミレイユ先生が笑った。


「レオン君 今日はよく喋りますねー」


「怖い場所では喋ってないと落ち着かないんです」


「分かりやすくていいですねー」


 今日は学院の白衣ではなく探索用の治療術師服。


 蜂蜜色の髪を緩くまとめ、紺色の上衣の上から短い白い外套を羽織っている。


 身体に合った服のせいか、柔らかな胸元から細い腰へ続く線がいつもより目立つ。


 濃いタイツと長い革靴に包まれた脚もすらりとしていて。


 普段の眠そうな先生とは少し違って見えた。


「レオン君?」


「はい!」


「今度は静かになりましたねー」


「気のせいです」


「そうですかー?」


 絶対気づかれてる。


     


 しばらく歩くと。


 広い円形の部屋へ出た。


 中央には大きな透明な魔晶石。


「これ 王都地下にも似たのあったな」


「はい」


 ルミナが近づく。


 魔晶石が光った。


 空中に地図が現れる。


「おお……」


 最初に映ったのは王都。


 王城。


 学院。


 城壁。


 そして。


 そこから何本もの光の線が王国各地へ伸びていく。


「こんなに?」


 リリアーナが身を乗り出す。


「広範囲に施設があります」


 ルミナが説明する。


「ここは《北西境界観測補助棟》です」


「つまり?」


「王都へ危険が近づく前に発見するための観測施設と思われます」


「見張り台みたいなもの?」


「大まかには」


「最初からそう言って」


 リリアーナが俺を見る。


「情報量が減る」


「俺にはそれくらいがちょうどいいの」


     * * *


 地図の横に文字が浮かぶ。


 《北西境界観測補助棟》


 《保全機能 低稼働》


 《脅威判定機能 休眠中》


「つまり半分寝てる?」


「かなり大まかですが正しいです」


「今日はルミナが優しい」


「説明方法を調整しました」


「成長したなあ」


 なぜか少し嬉しい。


     


「こっちに記録があります」


 リリアーナが呼ぶ。


 壁の一部に古い文字が残っていた。


 《最終有人点検》


 《二百十三年前》


「また二百十三年前……」


 続いて。


 《臨時管理協力者 立会》


 《管理権限移譲 拒否》


「拒否?」


 俺は思わず見る。


「管理者になるの断った人がいたんだ」


「そのようです」


 セレフィア先生が頷く。


「気持ちはよく分かります」


「レオンさんも同じことをしていますからね」


「ですよね」


 知らない相手なのに。


 少し親近感が湧いた。


     


 その時。


 ゴン。


 床の下から音がした。


「……何?」


 ゴゴゴゴ。


「何か動いてる!」


 壁がゆっくりせり出してきた。


「リリアーナ 下がって!」


「え?」


 記録に夢中で気づいていない。


 俺は慌てて腕を掴んだ。


「こっち!」


「わっ」


 引っ張った直後。


 リリアーナが立っていた場所を石壁が通過する。


「……」


「危なかった」


「非常に興味深い」


「第一声それ!?」


「壁が自動で移動した」


「今潰されかけたんだよ!」


「はい」


「研究者怖い!」


     


 さらに別の場所で石板が崩れた。


「危ない!」


 護衛騎士の一人が足を取られる。


 でも。


「停止します」


 ルミナが片手を上げた。


 ズン。


 大きな石材が空中で止まる。


「……」


 そのまま元の位置へ戻した。


「出力は?」


「〇・〇二パーセント」


「聞かなきゃよかった」


     


「足を見せてくださいねー」


 ミレイユ先生が護衛騎士の前へしゃがむ。


「少し捻っています」


 淡い緑色の光が先生の手から広がった。


 数秒後。


「これで大丈夫です」


「ありがとうございます」


「今日は無理しないこと」


 眠そうな口調なのに仕事は速い。


「先生 本当に治療師なんですね」


「レオン君?」


「いや 普段ずっと飴食べてるから」


「あとで苦い薬を出しましょうか?」


「すみませんでした」


    


 ルミナが施設の動きを一時停止した。


「長期間停止していたため再起動時に通路配置が動いたようです」


「罠じゃなかった?」


「はい」


「事故の方が怖くない?」


「否定できません」


 古代文明。


 もう少し安全設計を頑張ってほしい。


     


 最後に中央の地図を確認する。


 王国各地に七つの光。


「これ全部 同じ観測施設?」


「同種または関連施設と思われます」


 六つは青く光っている。


 でも。


 一つだけ暗い。


「ここだけ消えてる」


 ルミナが確認する。


「東部境界観測拠点です」


 文字が浮かぶ。


 《最終応答記録 欠落》


 《現状態 不明》


「……また調査?」


 俺が聞くと。


 セレフィア先生が首を振った。


「今日はしません」


「よかった!」


「まず今回の資料を整理して学院へ報告します」


「先生がすごくまともに見える」


「普段もまともです」


「すみません」


     


 夕方。


 俺たちは無事に遺跡を出た。


 森の外へ出ると。


 何だかものすごく安心した。


「結局分かったのは」


 俺は指を折る。


「ここが昔の見張り施設」


「はい」


「二百十三年前にも誰かが来た」


「はい」


「その人は管理者になるのを断った」


「はい」


「そして東に反応しない施設がある」


「正確です」


「よし」


 今日はこれくらいで十分だ。


「レオン様」


「何?」


「《世界線識別値》については未解明です」


「今それ思い出させる?」


「重要事項です」


「せっかく綺麗にまとまったのに……」


 ルミナは少しだけ首を傾げた。


 その隣で。


 リリアーナは楽しそうに大量の記録を抱えている。


 セレフィア先生は苦笑。


 ミレイユ先生は欠伸をしていた。


 古代遺跡の調査なのに。


 いつの間にか。


 いつもの学院の空気に戻っている。


 それが少しだけ嬉しかった。


 ただ。


 山の奥では。


 長く眠っていた青い光が。


 今も静かに灯り続けていた。


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