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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第38章 幼馴染との再戦と、昔とは違う俺

 二回戦。


 俺は闘技場の中央で。


 フィオナと向かい合っていた。


「まさか、こんな形でまた剣を合わせるとはね」


「俺は望んでなかったけど」


「私は楽しみにしてた」


「昨日再会したばっかりだろ」


「だからこそ!」


 フィオナが訓練剣を抜く。


 さっきまでの明るい笑顔が消えた。


 重心が下がる。


(……強いな)


 幼い頃の記憶しかなかったけど。


 当然。


 フィオナだって成長している。


 騎士家でずっと鍛えてきたんだ。


 金茶色の髪を高く結び。


 軽装の剣士服で構える姿は。


 昨日まで昔話で俺を弄っていた幼馴染とは別人だった。


 細身の脚で地面を確かめるように踏み。


 剣先がぴたりと俺の中心へ向く。


「レオン」


「何?」


「手加減したら怒るから」


「それ、最近いろんな人に言われるんだけど」


「人気者だね」


「嬉しくない方向でな」


     


「始め!」


 フィオナが消えた。


「っ!」


 速い。


 真正面から一気に間合いを潰してくる。


 右。


 受ける。


 すぐ左。


 さらに突き。


「速っ……!」


「喋ってる余裕あるんだ!」


 剣が連続でぶつかる。


 昔の記憶では。


 俺はこの攻撃を一度も捌けなかった。


 怖くなって後退して。


 最後は転んで。


 フィオナに笑われた。


 でも。


 今は違う。


(次は下)


 見える。


 剣聖が教えてくれる。


 いや。


 それだけじゃない。


 この数か月。


 セルジュ先生。


 セシリア先輩。


 クラリッサ。


 カグラ。


 色々な相手と剣を交えてきた。


 身体が。


 自然に動く。


「そこ」


「え?」


 フィオナの剣を斜めに流す。


 体勢が僅かに崩れた。


 その隙へ。


 剣を止める。


 首筋まで。


 あと数センチ。


「……」


「終わり?」


 一瞬。


 フィオナが笑った。


「まだ!」


「うわっ!」


 身体を捻って逃げる。


 そのまま足払い。


 危ない。


「それあり!?」


「実戦ならあり!」


「武闘祭なんだけど!」


     


 観客席から笑いが起きる。


「フィオナ押してる!」


 クラリッサの声。


「いや」


 カグラが答える。


「レオンが合わせてる」


「……やっぱり?」


 セシリア先輩も静かに試合を見ていた。


「まだ本来の速度ではありませんね」


 ルミナが補足する。


「現在のレオン様は推定二十七パーセント程度です」


「それ言わなくてよくない!?」


 俺の声が闘技場に響いた。


「集中して!」


 フィオナが斬ってくる。


「誰のせいだと思ってるんだ!」


     


 フィオナの攻撃は速い。


 しかも。


 癖が少ない。


 辺境の騎士らしく。


 魔獣相手を想定した実戦的な剣。


 それでも。


 剣筋は全部見える。


(……終わらせるか)


 一歩。


 フィオナの視線が動いた。


 俺の剣へ。


 その瞬間。


 踏み込む方向を変える。


「え?」


 剣を合わせない。


 横へ抜ける。


 剣柄でフィオナの剣を軽く押し上げ。


 手首を返す。


 カラン。


 剣が地面へ落ちた。


 俺の剣先は。


 フィオナの胸元の少し手前で止まる。


「……」


 静寂。


「そこまで!」


「勝者! レオン・アルセリア!」


 歓声が上がった。


     


「……負けた」


 フィオナは落ちた剣を見る。


「なんか、ごめん」


「何で謝るの?」


「昔は七戦七敗だったから」


「八戦目で急に強くなりすぎ!」


「間が十年以上空いてるんだから仕方ないだろ」


 フィオナが俺を見る。


 それから。


 ふっと笑った。


「そっか」


「?」


「本当に変わったんだね」


 今までとは違う。


 少しだけ寂しそうな。


 でも。


 嬉しそうな笑顔だった。


「昔のレオンは、負ける前から自分が負けるって思ってた」


「……そうだったな」


「今は違う」


「まあ」


 前世もそうだった。


 どうせ無理。


 どうせ自分なんて。


 最初からそう決めて。


 何もしなかった。


 でも。


「やる前から諦めるのは、やめた」


「うん」


 フィオナが手を差し出す。


「今度は私が追いかける番かな」


 俺も握り返す。


「ほどほどにして」


「無理」


「だと思った」


     


 控室へ戻ると。


「レオン!」


 クラリッサが飛んできた。


「最後どうやったの!?」


「普通に剣を外しただけ」


「普通じゃない!」


 カグラも近づく。


「次、見せて」


「嫌な予感しかしない」


「私にも使って」


「やっぱり」


 セシリア先輩までやってくる。


「良い動きでした」


「ありがとうございます」


「私との試合でもお願いします」


「まだ当たると決まってませんよね?」


「当たります」


「何で確定してるんですか」


「勝ち上がれば」


「怖いなあ……」


     


 その頃。


 アルセリア家の書庫では。


 セレフィア先生たちの調査が続いていた。


「第二管理系統との接続……」


 リリアーナが古文書を写している。


「でも年代がおかしいです」


「どこが?」


 ミレイユ先生が覗き込む。


「王都地下の第二管理系統は、少なくとも千年以上前の設備です」


「ええ」


「この記録は二百十三年前」


 セレフィア先生がページをめくる。


「つまり」


「二百年前にも誰かが起動させた可能性があります」


 部屋が静かになった。


 さらに。


 次のページ。


 そこには北部山岳の簡易地図と。


 一人の人物名が記されていた。


 《調査責任者――アルトゥス》


「……アルトゥス?」


 ミレイユ先生の眠そうな目が僅かに細くなる。


「偶然ですかねー」


 セレフィア先生は答えない。


 王都で出会った。


 銀髪の特務騎士。


 シオン・アルトゥス。


 その姓が。


 二百年以上前の記録にも。


 確かに残されていた。


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