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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第37章 辺境武闘祭開幕と、学院最強の先輩

 翌朝。


 領都中央闘技場。


「……人、多すぎない?」


 俺は観客席を見上げた。


 満員。


 いや。


 立ち見までいる。


 騎士。


 冒険者。


 傭兵。


 商人。


 領民。


 学院祭とは違う熱気が渦巻いていた。


「年に一度のお祭りだから!」


 フィオナが答える。


「優勝したら辺境伯家から褒賞も出るよ」


「初耳なんだけど」


「今言った」


「クラリッサみたいなこと言い始めたな」


「呼んだ?」


「呼んでない」


 


 学院生部門の参加者は六十四名。


 一対一の勝ち抜き戦。


 刃を潰した武器を使用し。


 魔法も許可。


 ただし危険な上位魔術は禁止。


 場外。


 降参。


 戦闘不能。


 いずれかで決着する。


「いいね!」


 クラリッサが大剣を抱えて笑う。


「分かりやすい!」


「お前向きだな」


「レオンも楽しみでしょ?」


「観客なら」


「参加者です」


 ルミナが横から訂正した。


「忘れさせてくれ……」


 


「レオン」


 カグラが対戦表を見る。


「私とは別」


「残念そうだな」


「少し」


「一回戦から当たりたかったの?」


「せっかくだから」


「普通はもっと後がいいだろ」


「そう?」


 この辺の感覚は。


 やっぱり剣士組と合わない。


 アーヴェルも自分の名前を探していた。


「俺も別ブロックだな」


「平和だ」


「お前のブロック見る限り、全然平和じゃないぞ」


「え?」


 指された先。


 俺の名前の少し上。


 《セシリア・ヴァルシュタイン》


「……」


 見なかったことにしたい。


 


「おはようございます」


 後ろから声。


 振り返る。


 いた。


 セシリア先輩。


「本当に来たんですか」


「はい」


「どうして」


「武闘祭があると聞きました」


「それだけで?」


「十分な理由です」


 相変わらずだった。


 今日は学院制服ではなく。


 白いシャツに細身の黒い乗馬用パンツ。


 腰には訓練用の長剣。


 普段より身体の線がはっきり分かる服装で。


 特に長い脚が膝下まである黒いブーツへすっと収まっている。


 姿勢がいいせいか。


 ただ立っているだけで剣士らしい綺麗な線が際立っていた。


 近くへ来ると。


 革の鞘の乾いた匂いに混じって。


 冷たい森を思わせるような淡い香りがする。


(……先輩って黙っていれば本当に綺麗なんだよな)


「レオン」


「はい!?」


「なぜ急に姿勢を正したのです?」


「何でもありません」


「そうですか」


 危なかった。


 


「セシリア先輩!」


 クラリッサが飛んでくる。


「私と当たったら本気でお願いします!」


「もちろんです」


「カグラも!」


「私も」


「了解しました」


「俺だけ温度差あるんですけど」


 セシリア先輩が俺を見る。


「レオンとも当たりたいですね」


「俺は遠慮します」


「なぜです?」


「疲れるからです」


「では短時間で終わらせます」


「そういう意味じゃない!」


 フィオナまで笑っていた。


 


 開会式。


 父上が闘技場中央へ立つ。


「本年も辺境武闘祭を開催する」


 会場が静かになる。


「今年は例年以上に若い参加者が多い」


 その言葉に。


 少しだけ。


 シオン・アルトゥスの話を思い出した。


 今年度から広げられた学院の入学資格。


 身分より実力。


 才能を取りこぼさないため。


 これから先の動乱に備えるため。


 この大会にも。


 その変化は少しずつ現れているのかもしれない。


「身分も所属も問わん」


 父上が続ける。


「示すべきものは己の実力だ」


 歓声が上がった。


「……父上らしいな」


 アーヴェルが隣で笑う。


「分かりやすいだろ」


「お前よりな」


「どういう意味?」


 


「第一試合!」


 ついに始まった。


 クラリッサ。


 対。


 領内の騎士見習い。


「始め!」


「はあああっ!」


 ドンッ!


 一撃。


 相手の訓練剣が宙を舞った。


「勝者! クラリッサ・バルシュタイン!」


「よし!」


「早っ」


 ヴィクトリアが呆れる。


「もう少し優雅にできませんの?」


「勝てばいい!」


「そこが問題ですわ!」


 次。


 カグラ。


 一歩。


 一閃。


 木刀が相手の喉元で止まる。


「参りました」


「勝者! カグラ・ミカヅキ!」


「二人とも怖いですね……」


 ソフィアが小声で言った。


「同感」


 


 アーヴェルも危なげなく勝った。


 ルミナは。


「開始!」


 相手が踏み込む。


 カンッ。


 一度だけ音がした。


 気づけば。


 相手の剣だけが地面へ落ちている。


「……」


 会場が静かになった。


「勝者……ルミナ!」


「出力は?」


「〇・一パーセントです」


「まだ下げよう」


「承知しました」


 リリアーナだけが高速で記録している。


「有用なデータです」


「大会を実験にするな」




「次!」


 係員が声を張る。


「レオン・アルセリア!」


 観客席がざわめいた。


「三男様?」


「剣が苦手だったはずじゃ」


「学院でかなり強くなったらしいぞ」


「本当か?」


(やっぱりこうなるか)


 この土地には。


 昔のレオンを知る人間が多い。


 俺は闘技場へ降りる。


 向かいに立ったのは。


 若い辺境騎士。


 かなり体格がいい。


「レオン様」


「はい」


「幼い頃、訓練場で何度かお見かけしました」


「……そうですか」


「失礼ながら」


 青年が笑う。


「随分変わられた」


「最近そればっかり言われます」


 審判が手を上げる。


「始め!」


 青年が踏み込んだ。


 速い。


 でも。


 シオンとは違う、ちゃんと見える。


 肩。


 腰。


 足。


 剣筋。


(ここ)


 半歩ずれる。


 剣を受け流しそのまま喉元へ。


「……」


 俺の剣先が止まった。


「参りました」


 一瞬の静寂。


「勝者! レオン・アルセリア!」


 次の瞬間。


 大きな歓声。


「……目立った」


 観客席を見る。


 母上がものすごく拍手している。


 父上は腕を組み。


 兄上たちも見ていた。


 フィオナは。


 ぽかんとしている。


「本当にレオン……?」


「今さら!?」


 


 控室へ戻ると。


 新しい対戦表が貼り出されていた。


「二回戦の組み合わせです!」


 クラリッサが飛びつく。


「次誰!?」


 俺も見る。


 そして。


 止まった。


 《レオン・アルセリア》


 対。


 《フィオナ・レーヴェン》


「……」


 横を見る。


 フィオナも俺を見る。


 数秒。


 にやり。


「やっとだね」


「何が?」


「昔の続き」


「昔の?」


「忘れた?」


 フィオナが剣を肩へ乗せる。


「子供の頃」


 一拍。


「一回も私に勝てなかったでしょ?」


 クラリッサの目が輝く。


 カグラまで振り返る。


 セシリア先輩も興味を示した。


 ルミナは静かに告げる。


「幼少期戦績の追加情報を取得しました」


「記録しなくていい!」


 どうやら。


 二回戦は。


 俺にとって。


 かなり面倒な試合になりそうだった。


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