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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第32章 長期休暇の帰省と、なぜか先生まで同行することになった

 長期休暇まで、あと三日。


 俺は自分の机を囲む顔ぶれを見ていた。


 エリシア。


 ヴィクトリア。


 クラリッサ。


 カグラ。


 リリアーナ。


 ソフィア。


 アーヴェル。


 ルミナ。


「……本当に全員来るの?」


「今さら何言ってるの!」


 クラリッサが即答する。


「お母様から正式に招待されたのでしょう?」


 ヴィクトリアも当然という顔だ。


「そうだけど」


「なら問題ありません」


 リリアーナはすでに調査用のノートを開いている。


「アルセリア領北部の古代遺構について、現存する資料は非常に少ないです」


「旅行じゃなくて完全に調査になってない?」


「両立可能です」


「前にも聞いた気がする」


 カグラが小さく頷く。


「私は剣術も見たい」


「何の?」


「辺境騎士団」


「やっぱりそっちか」


 ソフィアは少し緊張した顔で荷物のメモを見ている。


「辺境伯家への訪問ですから、やはり正装も必要でしょうか……」


「普通で大丈夫だよ」


「その普通が分からないんです」


 それは分かる。


     


 その時、教室の扉が開いた。


「ちょうど皆さん揃っていますね」


 セレフィア先生だった。


 その隣には。


「こんにちはー」


 ミレイユ先生までいる。


「先生?」


「お話があります」


 セレフィア先生が教壇の前へ立つ。


「アルセリア辺境領で確認された古代信号について、学院から正式な遺跡調査を行うことになりました」


「やっぱり調査するんですね」


「はい。ただし、辺境伯家との協議を優先します」


 そこまでは予想できる。


 問題は。


「調査班の学院側責任者として、私が同行します」


「先生も?」


「はい」


「私もですよー」


 ミレイユ先生が手を上げた。


「ミレイユ先生まで?」


「遺跡には未知の魔力や古代魔導機構があるでしょう?」


「はい」


「怪我人が出るかもしれませんから」


 眠そうな口調なのに。


 内容はかなり真面目だった。


「それに」


 ミレイユ先生が俺を見る。


「レオン君は無茶しますからねー」


「そんなに?」


 全員が頷いた。


「何で誰も否定してくれないの?」


     


「学院長は来ないんですか?」


 アーヴェルが聞く。


「学院長は王都を離れられません」


 セレフィア先生が答える。


「セルジュ先生も学院警備に残ります。ですので現地調査は私とミレイユ先生が担当します」


「リリアーナは?」


「同行を許可しました」


「やった」


「即答だな」


「古代魔術研究の補助要員です」


 リリアーナの目が輝いている。


 絶対に旅行より調査を楽しみにしている。


 ルミナが尋ねる。


「私は?」


「もちろん同行をお願いします」


「承知しました」


「レオンさんもです」


「俺は帰省するだけの予定なんですけど」


「管理者権限保持者ですから」


「ですよね……」


 もう諦めよう。


     


 放課後。


 調査用の荷物を確認するため、俺たちは保健室へ集まった。


「回復薬、止血布、解毒剤、それから魔力疲労用の薬ですねー」


 ミレイユ先生が棚から次々と取り出す。


 いつもの白衣ではなく、今日は動きやすい薄手の治療術師服だった。


 蜂蜜色の髪を緩くまとめ、しゃがんで下段の棚を探すたび、長い脚がすっと伸びる。


 眠そうな雰囲気とは違って、立ったり屈んだりする動作は意外なほど軽い。


 そして近くで荷物を受け取ると、清潔な石鹸と薬草、それにいつもの甘い飴が混じったような匂いがほんのりした。


「レオン君?」


「はい?」


「これ持ってください」


「あ、はい」


「ぼーっとしてました?」


「してません」


「そうですかー?」


 少し笑われた。


 何となく悔しい。


     


 そして出発前日。


 学院正門前には。


 すでに大量の荷物が積まれていた。


「……多くない?」


 ヴィクトリアの鞄。


 クラリッサの武器。


 リリアーナの研究器具。


 ソフィアの薬草用品。


 教師二人分の調査装備。


「これ全部馬車に乗る?」


「大型魔導馬車を二台手配しています」


 セレフィア先生が答える。


「二台!?」


「学院の正式調査ですから」


 ただの帰省だったはずなのに。


 どんどん規模が大きくなっている。


 そこへルミナが俺の隣へ来た。


「レオン様」


「何?」


「今回の目的を整理します」


「嫌な予感」


「第一、アルセリア家への帰省」


「うん」


「第二、友人との旅行」


「うん」


「第三、古代信号の調査」


「うん……」


「第四、北部古代遺跡の確認」


「増えた」


「第五――」


「まだあるの!?」


 クラリッサが笑う。


「絶対楽しいって!」


「その自信どこから来るんだよ」


 でも。


 みんなの顔を見る。


 友人たち。


 ルミナ。


 セレフィア先生。


 ミレイユ先生。


 こんな大人数で実家へ帰るなんて。


 前世どころか。


 この世界でも想像したことがなかった。


「……まあ」


 少しだけ笑う。


「普通の帰省よりは面白そうか」


「レオン様」


「何?」


「現在、楽しみにしている表情です」


「分析しなくていい」


 こうして。


 俺たちの長期休暇は。


 帰省と旅行と。


 古代遺跡調査まで全部まとめて。


 始まろうとしていた。


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