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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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25/99

第25章 学院祭の準備と、賑やかすぎる俺たちのクラス

 翌朝。


 教室へ入った瞬間。


 いつもと違う空気に気づいた。


 黒板いっぱいに。


 大きな文字。


 《学院祭まであと十日!》


 周囲には簡単な花飾りまで付いている。


「……学院祭?」


「そこから!?」


 クラリッサが勢いよく振り返った。


「レオン、予定表見てないの?」


「見落としてた」


「十日前まで?」


「……はい」


 隣でアーヴェルが笑う。


「お前、迷宮の古代文字は気にするのに予定表は読まないのな」


「興味の問題だ」


「堂々と言うことじゃないだろ」


 いつの間にか。


 クラス全体も学院祭の話で盛り上がっていた。


 窓際では男子生徒たちが屋台について相談し。


 前方では女子生徒たちが衣装の話。


 普段あまり話さない生徒まで。


 今日は妙に声が大きい。


「レオン様」


 隣のルミナが黒板を見る。


「学院祭とは何でしょうか」


「前世にも似た行事はあったよ」


「参加経験は?」


「……最低限」


「具体的には?」


「教室の端で終わるのを待ってた」


「それ参加って言うの?」


 近くの女子生徒にまで突っ込まれた。


「俺もそう思う」


 エリシアがくすりと笑う。


「では今回はちゃんと楽しみましょう」


「逃げ道なくなってない?」


「ありません」


 ヴィクトリアまで即答した。


     


「それでは」


 一時間目のホームルーム。


 セレフィア先生が教壇に立つ。


「学院祭の出し物を決めます」


「模擬戦大会!」


 クラリッサ。


 早い。


「却下です」


 先生も早い。


「まだ説明してない!」


「昨年似た企画で窓が三枚壊れました」


「誰が壊したんですか?」


 クラスの男子が聞く。


「主にセシリアさんです」


「……」


 全員納得した。


「魔法展示」


 リリアーナが手を上げる。


「安全な範囲なら」


「古代術式の再現実験を」


「安全な範囲なら」


「……初級魔術にします」


「先生強いな」


 アーヴェルが呟いた。


「演劇は?」


 後方から栗色の短髪の女子生徒が手を上げる。


「衣装作るの楽しそう!」


「でも台詞覚えるの大変じゃない?」


 別の男子が返す。


「屋台!」


「教室の中で火は使えません」


「展示!」


「何を?」


「……今から考える!」


「それ案じゃないだろ!」


 教室が笑いに包まれる。


 こうして見ると。


 うちのクラス。


 結構騒がしい。


     


「喫茶店はいかがでしょう?」


 エリシアが手を上げた。


「簡単なお菓子なら私も作れますし」


「賛成!」


 前の席の女子が続く。


「接客衣装も作れるよ!」


「衣装目的じゃない?」


「半分は!」


 正直である。


 カグラが静かに手を上げる。


「東方のお茶も出せる」


「それ面白そう」


 俺が思わず反応した。


「東方菓子も?」


「ある」


「食べたい」


「レオン、急に乗り気じゃん」


 クラリッサが笑う。


「食べ物は重要」


「カグラと意見一致してる!」


 ヴィクトリアが腕を組む。


「でしたら王国式の紅茶や菓子も用意して、東西両方を楽しめる形にすればよろしいのでは?」


「それいい!」


 何人ものクラスメイトが賛成する。


 こうして。


 出し物は。


 《東西交流喫茶》


 に決まった。


     


「次は役割分担ですね」


 調理班。


 エリシア。


 ソフィア。


 カグラ。


 料理が得意な女子数名。


 それに。


「俺も簡単なのならできるよ」


 男子生徒の一人。


 農業領出身で家ではよく厨房を手伝うらしい。


「ならお願いしましょう」


 エリシアが笑った。


 装飾班。


 ヴィクトリア。


 リリアーナ。


 絵の得意な生徒。


 魔法細工が得意な男子。


「店の看板は任せて!」


「光文字も追加します」


「リリアーナ」


「爆発しません」


「まだ誰も言ってない」


 全員の考えていることは同じだったらしい。


 会計班には。


 商家出身の女生徒が即座に立候補。


「金銭管理なら得意だから」


「頼もしすぎる」


 俺が言うと。


「アルセリア君は接客でしょ?」


「……え?」


     


 黒板を見る。


 接客班。


 クラリッサ。


 ルミナ。


 アーヴェル。


 数名の男女。


 そして。


 《レオン》


「誰が書いた!?」


「推薦多数」


 セレフィア先生が笑う。


「俺、接客得意じゃないですよ?」


 後ろの男子が手を上げる。


「顔が得意」


「顔に得意不得意ある!?」


「客呼べそう」


「俺は看板か!」


 別の女子まで頷く。


「ルミナさんと二人で入口にいたら絶対目立つよ」


「集客効率は高いと推測します」


 ルミナまで賛成した。


「味方がいない!」


 アーヴェルが肩を叩く。


「諦めろ。俺も一緒だ」


「お前は普通に接客できるだろ」


「俺、お前の暴走防止係らしい」


「何の暴走!?」


     


 放課後。


 教室がそのまま準備室になった。


「衣装合わせしますよ」


 エリシアが声をかけてくる。


「もう?」


「十日しかありませんから」


「十分ある気がする」


「ありません」


 妙に強かった。


 渡された黒い給仕服へ着替える。


「これで?」


「少し襟がずれています」


 エリシアが近づき。


 俺の襟元へ指を伸ばす。


「自分で直せるよ」


「動かないでください」


「はい」


 近い。


 栗色の長髪が肩からさらりと落ちる。


 衣装確認のためにしゃがんだ時には。


 制服のスカートから伸びる脚をきちんと揃え。


 細い足首まで崩さない所作が妙に上品だった。


 立ち上がったエリシアから。


 柔らかな石鹸と。


 焼きたての菓子みたいな淡い甘い香りがする。


(……近いと余計に意識するな)


「レオン様」


「うわっ」


 ルミナが真横にいた。


「心拍数が上昇しています」


「今言うな!」


「観察対象として興味深い変化です」


「恋愛研究を学院祭準備に持ち込むな!」


 エリシアまで頬を赤くして。


 少しだけ俺から離れた。


「……ルミナさん」


「はい」


「そういうことは黙っておくのも友情ですよ」


「新規情報として記録します」


     


 その向こうでは。


「看板曲がってる!」


「あなたが動かしたのでしょう!」


「違うよ!」


 クラリッサとヴィクトリア。


「光量をもう少し」


「十分眩しいです!」


 リリアーナと装飾班。


「この茶葉は?」


「東方では食後向け」


 カグラと調理班。


「薬草茶も一種類なら出せそうです」


 ソフィアの周囲にも。


 何人かの女子生徒が集まって相談している。


 アーヴェルは男子たちと机を運び。


 普段あまり話さないクラスメイトたちまで。


 それぞれ自分の仕事をしながら笑っている。


「……」


「レオン様」


「何?」


「現在笑っています」


「そう?」


「はい」


 ルミナが教室を見回す。


「学院祭準備は非効率な作業が多数存在します」


「またそれ言うの?」


「しかし」


 ほんの少し。


 ルミナが笑った。


「好ましいです」


 俺も。


 騒がしい教室を見る。


 前世では。


 こういう輪から。


 自分で離れていた。


 でも今は。


 その真ん中にいる。


「……俺も」


「はい?」


「ちょっと楽しみになってきた」


「ちょっとじゃないだろ、さっき東方菓子の試食三つも食ってたぞ」


「アーヴェル! 見てたのか!」


 教室中が笑った。


 どうやら今年の学院祭は。


 俺が思っているよりずっと。


 騒がしいものになりそうだった。


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