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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第24章 ルミナ、恋愛を研究する

「恋愛とは何でしょうか」


 朝から難題を出された。


「分からない」


 俺は即答した。


「回答まで〇・八秒でした」


「分からないものは分からない」


「では調査します」


「嫌な予感しかしない」


 ルミナは真剣な顔で頷いた。


「本日より恋愛感情について観察を開始します」


「頼むから静かにやってくれ」


「承知しました」


 その返事が。


 一番信用できなかった。


     


 一時間目の休み時間。


「レオン様」


「何?」


「第一観察を開始します」


「俺で?」


「はい」


「対象変えて」


「却下します」


「誰に似たんだその即答」


 そこへ。


「朝から何をしていますの?」


 ヴィクトリアがやって来た。


 今日も金色の髪を綺麗な縦巻きに整えている。


 姿勢を正して立つだけで。


 公爵令嬢らしい華やかさがあった。


 白い手袋に包まれた細い指が。


 俺の机の上へ置かれた教科書をつまみ。


「これ。昨日の授業のものですわよ」


「あ」


「次は魔法史でしょう?」


「助かった」


「まったく」


 呆れながら教科書を差し出す。


 手袋越しでも分かる指先の整った動きが妙に優雅で。


 近づいた瞬間。


 花というより。


 甘さを抑えた上品な紅茶みたいな香りが僅かに漂った。


(こういうところは本当にお嬢様なんだよな……)


「レオン?」


「え?」


「何を見ていますの」


「何でもない」


「怪しいですわね」


 その横で。


 ルミナの瞳が淡く光った。


「記録しました」


「何を!?」


「レオン様の視線停止時間」


「消して!」


     


 昼休み。


 ルミナは。


 リリアーナと並んで座っていた。


 二人の前に。


 なぜか記録用紙がある。


「何してるの?」


「共同研究です」


「嫌な組み合わせだな」


「恋愛感情発生時の行動変化を整理しています」


「そこまでやる?」


 リリアーナが紙を見る。


「仮説その一」


「あるの?」


「特定対象への接触頻度増加」


 ルミナが頷く。


「仮説その二」


「視線時間の増加」


「なるほど」


「仮説その三」


「他者接近時の感情変化」


「非常に重要です」


「俺帰っていい?」


「不可です」


「何で俺に権限ないの?」


     


 そこへ。


「レオンさん」


 ソフィアが来た。


「ここ、いいですか?」


「もちろん」


 俺の隣へ座る。


「昨日教えていただいた乾燥方法ですが」


「ああ。うまくいった?」


「はい」


 嬉しそうに笑う。


「今度試作品を持ってきますね」


「楽しみにしてる」


「はい!」


 正面。


 ルミナが。


 じっと見ていた。


「……何?」


「観察中です」


「露骨すぎる!」


 ソフィアの顔が赤くなる。


「わ、私も対象なんですか?」


「重要参考例です」


「参考例って呼ぶな!」


 後ろからエリシアが笑う。


「ルミナさん」


「はい」


「恋愛は観察される側が恥ずかしいものですよ」


「羞恥反応も恋愛要素ですか?」


「追加するな!」


    


 放課後。


 今度はセシリア先輩を捕まえていた。


「質問があります」


「どうぞ」


「セシリアはレオン様に恋愛感情がありますか?」


「ルミナ!」


 直球すぎる。


 セシリア先輩は少し考える。


「興味はあります」


 空気が止まった。


「剣士として」


「先に言ってください!」


「ですが」


「まだあるんですか!?」


「レオンのことをもっと知りたいとは思っています」


 今度こそ。


 エリシア。


 ヴィクトリア。


 クラリッサ。


 カグラ。


 全員がこちらを見る。


「剣についてです」


「だから先に言って!」


 セシリア先輩が不思議そうに首を傾げた。


「皆さんは何を想像したのですか?」


「先輩が一番悪いです!」


     


 帰り道。


 ルミナと二人。


「結論出た?」


「いいえ」


「でしょうね」


「むしろ理解困難になりました」


「恋愛なんてそんなものじゃない?」


「レオン様は理解していますか?」


「してない」


「ではなぜそう言えるのですか」


「前世で漫画とか小説とかゲームとか」


「知識のみ?」


「……はい」


「経験は?」


「ほぼありません」


「了解しました」


「そこ淡々と確認しないで」


 しばらく歩く。


 すると。


 ルミナが胸元へ手を置いた。


「レオン様」


「何?」


「昨日」


「うん」


「女子寮で皆さんと過ごして」


 一拍。


「離れる時に少し寂しいと感じました」


「……そっか」


「これは友情ですか」


「たぶん」


「では」


 ルミナが俺を見る。


「レオン様と離れる時に感じるものも友情でしょうか」


「え?」


「現時点では判断不能です」


「俺に聞かれても困る」


「ですが」


 ほんの少し。


 ルミナが笑った。


「判断不能という状態も」


「うん」


「以前ほど不快ではありません」


「それならいいんじゃない?」


「はい」


     


 その夜。


 誰もいなくなった学院地下。


 封鎖された迷宮入口のさらに奥。


 古い石壁の一部が。


 淡く光った。


 教師たちが確認した時には。


 ただの微弱な魔力上昇だったはずの場所。


 そこへ。


 見たことのない古代文字が。


 一文字ずつ浮かび上がる。


 《管理補助個体――再接続確認》


 そして。


 次の瞬間。


 文字は消えた。


 まだ。


 誰にも気づかれないまま。


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