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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第15章 迷宮の隠し部屋と、突然できた魔導人形

 迷宮実習当日。


 俺たちは《ルミナス旧迷宮》の入口にいた。


「……本当にダンジョンだ」


「だんじょん?」


 隣にいたエリシアが首を傾げる。


「迷宮のこと」


「また妙な言葉ですわね」


 ヴィクトリアが怪しそうに見る。


「気にしないでくれ」


 危ない。


 前世の言葉が自然に出た。


 今日の班は昨日聞いた通り。


 俺。


 エリシア。


 ヴィクトリア。


 アーヴェル。


 リリアーナ。


 さらに合同探索要員として。


「よし! 宝箱探そう!」


 クラリッサ。


「目的は実習」


 カグラまで一緒だった。


「……濃いな」


「何が?」


「何でもない」


 


 迷宮内部は想像以上だった。


 古い石壁。


 青白く光る魔石灯。


 地下なのに不思議と空気は澄んでいる。


「ここ、本当に何百年も前からあるのか?」


「記録上は千年以上です」


 リリアーナが答える。


「正確な建造年代は不明です」


「千年……」


 ゲームなら絶対何かある。


 そんなことを考えていると。


「前方」


 カグラが止まった。


 三体のゴブリン。


「来るよ!」


 クラリッサが真っ先に飛び出す。


「お前、楽しんでない?」


「レオンに言われたくない!」


 否定できない。


 戦闘は数分で終わった。


 俺たちは前回の森林実習より明らかに連携が良くなっている。


 俺が全部やる必要もない。


 むしろ。


「レオン様。左をお願いします」


「了解」


 こんなふうに自然に頼まれる方が楽だった。


 


 第一階層の最奥。


 地図に記された第二階層への階段を探していた時だった。


「待ってください」


 リリアーナが壁を見た。


「どうした?」


「魔力があります」


 何の変哲もない石壁。


 俺も近づく。


「魔法陣?」


「非常に古い術式です」


 リリアーナが壁へ触れる。


 しかし反応しない。


「開かない?」


「通常の魔力鍵ではありません」


 そこで。


 何となく。


 俺も壁へ手を置いた。


 瞬間。


 青白い光が走った。


「え?」


 壁全体に複雑な文字が浮かぶ。


『魂魄波形照合』


「何だこれ」


 読める。


 なぜか。


 文字そのものは知らないはずなのに。


 意味だけが頭へ直接入ってくる。


『現地生命規格――不一致』


「……は?」


『外界魂魄反応検出』


 心臓が跳ねた。


(外界?)


『転移者認定』


「ちょっと待て」


『管理権限継承対象を確認』


 ゴゴゴゴゴ――。


 壁が動いた。


「隠し部屋!」


 クラリッサの目が輝く。


「レオン」


 アーヴェルが俺を見る。


「今の文字、お前に反応したように見えたが」


「気のせいじゃない?」


「無理がありますわよ!」


 ヴィクトリアの突っ込みが飛んできた。


 俺は冷や汗をかいていた。


 転移者。


 明らかに俺のことだ。


 だが。


(俺は転生したんじゃ……)


 この装置にとっては同じ扱いなのだろうか。


「入る?」


 カグラが聞く。


 隠し通路の奥を見る。


 当然。


 気になる。


「……先生を呼んだ方がいいよな」


「意外です」


 リリアーナが言った。


「何が?」


「すぐ入ると思いました」


「俺を何だと思ってるんだ」


「好奇心の強い剣士」


 反論しづらい。


 だが。


 その時。


 隠し部屋の奥から。


 カチリ。


 機械音がした。


 


 全員が武器を構えた。


「何かいる」


 アーヴェルが前へ出る。


 暗闇の中。


 一つ。


 白い光が灯った。


 次に赤。


 さらに金。


 部屋全体へ魔導灯が点灯していく。


 中央に。


 人がいた。


「……女の子?」


 クラリッサが呟く。


 違う。


 人ではない。


 少女の姿をした何か。


 腰まで伸びる銀白色の髪。


 白磁のような肌。


 黒と白を基調とした古風な服。


 だが関節部分には金属の継ぎ目があり。


 胸元には淡い青色の結晶が埋め込まれている。


「魔導人形……」


 リリアーナの声が震えた。


「こんな精巧なもの、見たことがありません」


 少女の瞼が開く。


 青銀色の瞳。


 最初に見たのは。


 俺だった。


『魂魄情報確認』


「また?」


『外界記憶反応――正常』


「正常なのかよ」


『転移者権限――確認』


 少女が一歩前へ出る。


 俺も反射的に一歩下がった。


「待って待って」


 少女は止まらない。


 そして。


 俺の前で。


 静かに跪いた。


「……え?」


 長い銀髪が床へ広がる。


 少女は両手を胸元へ添え。


 俺を見上げた。


「管理者登録を完了いたしました」


 声は人間そのものだった。


「管理者?」


「はい」


 少女は穏やかに微笑む。


「異界転移者レオン・アルセリア様」


 背中に冷たい汗が流れた。


 全員いる。


 エリシアも。


 ヴィクトリアも。


 クラリッサも。


 カグラも。


 リリアーナも。


 アーヴェルも。


 全員。


 聞いた。


「ちょっと待って」


「承知いたしました」


 少女が頭を下げる。


「ご主人様」


「待てってそういう意味じゃない!」


 迷宮に俺の声が響いた。


 


 沈黙。


 最初に口を開いたのはヴィクトリアだった。


「……ご主人様?」


「俺が聞きたい」


 クラリッサが目を輝かせる。


「レオン! 何それ! どういうこと!?」


「知らない!」


 リリアーナは魔導人形を凝視していた。


「転移者という言葉の意味も気になります」


「そこは後にしない?」


「最重要事項です」


「俺にとっては最重要で後回しにしたいんだよ!」


 エリシアは何も言わない。


 ただ。


 俺をじっと見ていた。


 その視線が一番怖い。


「レオン様」


「はい」


「あとで」


 笑顔。


「ゆっくりお話を聞かせてくださいね」


「……はい」


 逃げ道が消えた。


 カグラが魔導人形へ尋ねる。


「名前は?」


「個体識別名はありません」


 少女は答えた。


「管理者による命名を推奨いたします」


 そして。


 再び俺を見る。


「ご命令を。ご主人様」


「……」


 古代迷宮。


 隠し部屋。


 謎の魔導人形。


 そして。


 どうやら俺の前世まで。


 平穏な学園生活から。


 また一歩。


 ものすごい勢いで遠ざかった気がした。


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