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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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108/112

第108章 特使の学園訪問


 北境戦役から帰還したレオンたちを迎える歓迎会から、一夜が明けた。


 セレスティア学園には、久しぶりに明るい空気が戻っていた。


 しかし、この日の生徒たちの話題は、北境での戦いとはまったく別のものだった。


ジェイド「おい、聞いたか? 今日、魔王の特使が学園に来るらしいぞ!」


マリエッタ「王都で和平交渉をしている方ですよね?」


ジェイド「そうそう! しかも、人間じゃないらしいんだけど、とんでもなく可憐で美しいお嬢様なんだってさ!」


クラリッサ「ええっ!? そんなに可愛いのぉ!?」


ヴィクトリア「魔王陛下の特使ともなれば、相応の気品を備えていらっしゃるのでしょうね」


マリアベル「魔族の高位外交官! ぜひ魔術についてもお話を伺いたいわ!」


リリアーナ「魔力の性質にも興味があります」


 生徒たちが盛り上がる中、レオンだけは興味が薄かった。


レオン「……魔王の特使ねえ」


アーヴェル「お前は興味がないのか?」


レオン「できれば、偉い人とは関わりたくない」


アーヴェル「相変わらずだな」


レオン「北境から帰ってきたばかりなんだ。今度こそ平穏な学園生活を送りたいよ」


 心の底からの願いだった。


 しかし、その願いが叶うことはなかった。


     


 午前。


 セレスティア学園の正門に、一台の立派な馬車が到着した。


 降り立ったのは、魔王の特使ラプソディア。


 人間ではないことを感じさせる神秘的な雰囲気と、可憐な容姿を備えた美女だった。


 王国との和平交渉の合間を利用し、両国の理解と親善を深めるため、学園を訪問したのである。


学園長「ようこそお越しくださいました、ラプソディア様」


ラプソディア「ふふっ。ご丁寧なお出迎え、ありがとうございます」


学園長「本日は、ぜひ学園の様子をご覧ください」


ラプソディア「ええ。未来を担う若者たちが学ぶ場所ですもの。楽しみにしておりましたわ」


 学園長の案内で校舎を歩くラプソディア。


 その美貌と優雅な振る舞いに、すれ違う生徒たちは思わず足を止めた。


男子生徒「……おい、本当に綺麗な人だな」


女子生徒「まるでお姫様みたい……!」


 講義棟、実習場、研究施設。


 ラプソディアは興味深そうに見学を続けていた。


 そして一行が中庭へ差しかかったときだった。


レオン「……ん?」


ラプソディア「……あら?」


 二人の視線が合う。


 次の瞬間、レオンの表情が凍りついた。


レオン「お、お前はあの時の!?」


 反射的に身構える。


学園長「レオン君! 何という態度ですか!」


レオン「……えっ!?」


学園長「このお方は、魔王陛下の特使として王国へお越しになっているラプソディア様です。失礼のないように!」


レオン「……と、特使!?」


 ラプソディアは優雅に微笑んだ。


ラプソディア「ふふっ。お久しぶりですわね、レオン様」


レオン「…………!」


レオン(何でこいつが、よりによって学園に!?)


 隣にいたアーヴェルが、不思議そうに尋ねる。


アーヴェル「レオン。お前、知り合いなのか?」


レオン「……いや、その、まあ……」


ラプソディア「以前、少々ご縁がありまして」


学園長「なるほど。ですが、今は大切なお客様をご案内している最中です。レオン君も礼節を忘れないように」


レオン「……は、はい」


ラプソディア「ふふっ。それでは、また後ほど」


 何事もなかったかのように、ラプソディアは学園長とともに立ち去った。


 レオンはその後ろ姿を呆然と見送る。


レオン(……あいつ、俺と戦ったことを忘れてるわけじゃないよな?)


 嫌な予感がした。


 しかも、かなり強烈な。


     


 午後。


 学園内の見学を終えたラプソディアは、学園長へ一つの申し出をした。


ラプソディア「学園長先生。先ほどお会いしたレオン様と、少しお話しする機会をいただけませんか?」


学園長「レオン君と、ですか?」


ラプソディア「ええ。北境でご活躍なさった銀髪剣聖様ですもの。ぜひ直接、お話を伺いたいのです」


学園長「承知いたしました。応接室をご用意しましょう」


ラプソディア「ありがとうございます」


 正式な外交特使からの申し出である。


 学園長も特に疑問を抱かなかった。


 そして、突然呼び出されたレオンは困惑していた。


レオン「……俺に話って、何ですか?」


学園長「ラプソディア様が、あなたとお話ししたいそうです」


レオン「……断ることは?」


学園長「レオン君?」


レオン「……何でもありません」


レオン(……嫌な予感しかしない!)


 やがて、レオンは応接室へ案内された。


 そこには、優雅に紅茶を楽しむラプソディアが待っていた。


ラプソディア「ふふっ。お待ちしておりましたわ、レオン様」


レオン「……お前、何を考えてるんだ?」


ラプソディア「まあ。久しぶりにお会いしたというのに、ずいぶんなご挨拶ですこと」


レオン「……あんなことがあったんだぞ。普通に話せるわけないだろ」


ラプソディア「だからこそ、こうしてお話ししたかったのですわ」


 レオンは警戒を解かなかった。


 目の前にいるのは、ただの美しいお嬢様ではない。


 以前、自分が剣を交えた相手なのだ。


 それが今や、正式な外交特使として学園を訪問している。


 迂闊な行動など取れるはずもない。


レオン「……それで、何の用なんだ?」


ラプソディア「ふふっ。そんなに警戒なさらなくてもよろしいですのに」


レオン「……無理だろ」


ラプソディア「まあ、つれないお方」


 ラプソディアは紅茶を一口飲み、懐かしそうに微笑んだ。


ラプソディア「それにしても……レオン様との、あの熱い夜の出来事は、今でも片時も忘れられませんわ」


レオン「……は?」


 その頃。


 応接室の近くを、クラリッサ、エリシア、ヴィクトリア、セシリアたちが歩いていた。


クラリッサ「ねえねえ! さっきの特使様、本当に綺麗だったよねぇ!」


エリシア「はい。とても素敵な方でした」


ヴィクトリア「立ち居振る舞いも見事でしたわ」


 すると、少し開いた応接室の扉の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


レオン「……だから、あの夜の話はもういいだろ!」


クラリッサ「……あれ? 今の、レオンの声じゃない?」


 その直後。


ラプソディア「ふふっ。あの夜のレオン様は、本当に凄かったですわ」


 一同の足が止まった。


クラリッサ「……え?」


ラプソディア「私も簡単には許すまいと、必死に守りを固めておりましたの」


レオン「……おい! その言い方、やめろ!」


ラプソディア「ですが、レオン様は本当に巧みで……私のガードを次々と破ってしまわれたのです」


ヴィクトリア「……ガ、ガードを!?」


エリシア「……レオン様……?」


ラプソディア「そして、とうとうレオン様の鋭い剣が、私の身体を深々と貫いてしまいましたわ」


 廊下に沈黙が落ちた。


ラプソディア「その瞬間、私の身体は熱く燃え上がって……すっかり燃え尽きてしまいましたの」


クラリッサ「…………!!」


セシリア「……まさか」


エリシア「……そ、そんな……」


ヴィクトリア「いったい何をなさったんですの!?」


 もはや我慢できなかった。


 クラリッサが勢いよく扉を開ける。


クラリッサ「レオーーーン!! 何やってるのぉぉぉ!?」


レオン「うわぁっ!? 何でお前らがここに!?」


ラプソディア「……あら?」


 ラプソディアは驚くどころか、楽しそうに微笑んだ。


ラプソディア「まあ、皆様。ごきげんよう」


クラリッサ「ごきげんようじゃないよぉ!」


    


 突然始まった尋問。


クラリッサ「レオン! 今の話、本当なの!?」


レオン「……違う! いや、違わないけど違うんだ!」


ヴィクトリア「どちらなんですの!?」


レオン「だから、言ってることは本当だけど、みんなが思ってるようなことじゃないんだよ!」


エリシア「……えっと、それはどういう……?」


レオン「だから! 確かにあの夜、俺はこいつのガードを破った!」


クラリッサ「やっぱりぃぃぃ!?」


レオン「違うって!!」


 レオンは頭を抱えた。


レオン「剣で! 戦ってたんだよ! 本当に!」


ラプソディア「ええ。レオン様の剣技は、それはもう見事でしたわ」


レオン「……そう! だから、そういうこと!」


ラプソディア「私も必死に抵抗いたしましたのに、とうとう最後まで押し切られてしまって……」


レオン「何でそういう言い方するんだよぉぉぉ!!」


エリシア「……最後まで、ですか……?」


ヴィクトリア「レオン様!? ま、まさか……!」


セシリア「……レオン。落ち着いて、最初から説明してくれ」


レオン「だから、その夜に戦って、剣が刺さって、燃えたんだよ!」


クラリッサ「自分で言っちゃったぁぁぁ!?」


レオン「事実だけど! その意味じゃないんだってば!!」


 そこへ、騒ぎを聞きつけたアーヴェルとジェイドも駆けつけた。


アーヴェル「……何の騒ぎだ?」


ジェイド「おい、レオン! お前、美女特使と何かあったのか!?」


レオン「アーヴェル! 助けてくれ!」


アーヴェル「……まず事情を説明しろ」


クラリッサ「レオンがあの綺麗な特使様と熱い夜を過ごして、剣で貫いて、燃え上がったんだって!」


アーヴェル「…………」


ジェイド「…………」


 長い沈黙。


レオン「……な? 誤解を招く説明だろ!?」


 アーヴェルは静かにレオンの肩へ手を置いた。


アーヴェル「……レオン」


レオン「お前なら分かってくれるよな!?」


アーヴェル「……すまん」


レオン「……え?」


アーヴェル「もう俺の力では、お前を庇いきれない」


レオン「裏切り者ぉぉぉっ!!」


ジェイド「……レオン、お前、北境で一体何やってたんだよ……」


レオン「だから戦ってたんだよぉぉぉ!!」


 そこへルミナが現れた。


ルミナ「レオン様。状況を確認しました」


レオン「ルミナ! お前なら説明できるよな!?」


ルミナ「はい。ラプソディア様は、過去の戦闘を別の意味に受け取れる表現で説明されています」


レオン「そう! それ!」


ルミナ「レオン様との私的な関係を示す事実ではありません」


レオン「……ありがとう! やっと味方がいた!」


 しかし、ラプソディアは微笑みながら続けた。


ラプソディア「まあ。あの夜のことは、私とレオン様だけの大切な思い出だと思っておりましたのに」


レオン「お前はもう黙ってろぉぉぉ!!」


 再び大騒ぎとなった。


     


 応接室の騒動は廊下にまで響き、ついに学園長が駆けつけた。


学園長「……皆さん。いったい何の騒ぎですか?」


 全員が一斉に黙り込む。


ラプソディア「まあ、学園長先生。お騒がせして申し訳ございません」


学園長「……ラプソディア様?」


ラプソディア「レオン様と、以前お会いした夜のことをお話ししておりましたら、皆様が驚いてしまわれて」


レオン「……頼むから、それ以上は!」


学園長「…………」


 学園長は静かにレオンへ視線を向けた。


学園長「……レオン君」


レオン「……は、はい?」


学園長「北境で大変なご活躍をなさったことは、十分承知しています」


レオン「……ありがとうございます」


学園長「ですが、それとこれとは別のお話です」


レオン「……えっ?」


 学園長はにっこり微笑んだ。


学園長「後ほど、職員室へいらっしゃい。詳しいお話を、ゆっくり聞かせていただきますから」


レオン「…………!」


レオン「待ってください! 誤解なんです!」


学園長「それも含めて、詳しく聞かせていただきましょう」


レオン「そんなぁぁぁ!!」


 一方、ラプソディアは上品に頭を下げた。


ラプソディア「私のために、レオン様が叱られてしまうのは心苦しいですわ」


レオン(……嘘つけぇぇぇ!!)


 その後。


 職員室で事情を説明したレオンは、あの夜の出来事が実際には魔術と剣による戦闘だったことを、ようやく理解してもらえた。


学園長「……事情は分かりました。ですが、レオン君」


レオン「……はい?」


学園長「もう少し、周囲が誤解しないように説明する努力をなさい」


レオン「……俺が悪いんですか!?」


 重大な誤解は解けた。


 しかし、学園中に広まった妙な噂は、そう簡単には消えそうになかった。


     


 その日の夜。


 王都の滞在先へ戻ったラプソディアは、三人のサキュバスと密談を交わしていた。


 長姉は優雅で妖艶。


 次姉は活発で、一人称は「ボク」。


 末妹は甘えるような口調で話す、愛らしい雰囲気の少女だった。


ラプソディア「……皆さん、西方の情勢はいかがですか?」


サキュバス長姉「ふふっ。諸侯たちは相変わらず、それぞれの欲望に従って動いているわ」


サキュバス次姉「でもね、最近は王国軍もかなり苦戦してるんだよ! ボクが聞いた話だと、防衛線がいくつも突破されてるんだって!」


サキュバス末妹「ねえねえ、お姉さまぁ。王国軍って、そんなに弱いのぉ?」


サキュバス長姉「いいえ。決して弱くはないわ。ただ、連合軍の数が多いのよ」


ラプソディア「……なるほど」


 サキュバスたちは、西方諸国の有力者たちに接近し、彼らの野心や不満を巧みに煽っていた。


 しかし、連合軍全体を支配しているわけではない。


 各国の諸侯は、それぞれの政治的・経済的利害に従って行動していた。


 やがて、話題は一人の少年剣士に移る。


サキュバス長姉「そういえば、例の十三歳の剣聖だけれど……」


ラプソディア「……何かありましたか?」


サキュバス次姉「あの子、本当にすごいんだよ! ボクも報告を聞いてびっくりしちゃった!」


サキュバス末妹「ねえねえ、そんなに強いのぉ?」


サキュバス長姉「ええ。あの少年が投入された戦線では、王国軍が大きな損害を受けているそうよ」


サキュバス次姉「ボクが聞いた話だと、前衛部隊が何度も突破されて、砦や陣地まで失っているんだって!」


サキュバス末妹「ええ〜っ! あんなに可愛い男の子なのにぃ?」


サキュバス長姉「しかも、本人は戦略には一切口を出さないの。将軍から命令された場所へ行って、ただ剣を振るうだけ」


ラプソディア「……なるほど。王国軍にとっては、厄介な存在でしょうね」


サキュバス次姉「ボク、あの子とお話ししたことがあるんだけど、とっても礼儀正しいんだよ。でも、何を考えているのか全然分からないんだ」


サキュバス末妹「むぅ〜。あんなに可愛いんだから、もっと仲良くしてくれてもいいのにぃ」


ラプソディア「ふふっ。皆さん、無理に関わる必要はありませんわ」


 ラプソディアは穏やかに微笑んだ。


 少年の素性について、それ以上の言葉を重ねることはなかった。


サキュバス長姉「それにしても、あの子一人で戦況がずいぶん変わったみたいね」


サキュバス次姉「ボクも驚いたよ。王国軍って、結構強いはずなのに!」


サキュバス末妹「でもでも、お姉さまぁ。剣聖って、そんなにすごいものなのぉ?」


サキュバス長姉「ふふっ。それだけの力を持つ者もいる、ということよ」


 ラプソディアは紅茶を一口飲んだ。


ラプソディア「……皆さんは引き続き、諸侯たちの動向を調べてくださいませ」


サキュバス長姉「承知したわ」


サキュバス次姉「うん! ボクに任せてよ!」


サキュバス末妹「はぁい! 頑張るねぇ!」


 こうして密談は終わった。


    


 翌朝。


 セレスティア学園。


 レオンは、昨日の騒動を思い出して深いため息をついていた。


レオン(……まったく、とんでもない目に遭った)


 職員室で事情を説明し、ようやく解放されたというのに、学園内では妙な噂が広まり始めていた。


(あの場にマリアベル先輩とリリアーナが居合わせなかったことだけが、せめてもの救いだったな……)


あの場にあの二人がいたら、

更に恐ろしい混乱になっていたであろう……。


ジェイド「……おい、レオン」


レオン「……何だよ」


ジェイド「お前、あの美女特使と本当に何もなかったんだよな?」


レオン「何もないって言ってるだろ!」


エリシア「でも、ラプソディア様、とても嬉しそうにお話ししていましたよね……」


レオン「……だから! それは戦いの話なんだって!」


クラリッサ「ふふーん。じゃあ、あの熱い夜も?」


レオン「それも戦いの話だよ!!」


 またしても笑いが起こった。


 そのとき、ルミナがレオンへ近づいてきた。


ルミナ「レオン様。王国軍より連絡が届いております」


レオン「……今度は何?」


ルミナ「西方戦線について、新たな報告です」


 レオンは受け取った報告書へ目を落とした。


 そこには、西方諸国連合軍の進撃状況とともに、信じがたい情報が記されていた。


レオン「……十三歳の剣聖?」


ルミナ「はい。西方諸国連合に所属する少年剣士とのことです」


レオン「……十三歳って、そんな子供が?」


ルミナ「報告によれば、複数の防衛陣地が突破され、多数の兵士が死傷しています」


レオン「…………」


 王国軍の前衛部隊は、少年剣聖の攻撃によって何度も突破されていた。


 彼が陣地の守りを崩した直後、後続の連合軍が進撃し、防衛線を押し下げているという。


 失われた砦や陣地も、すでに複数に及んでいた。


ルミナ「少年剣聖が投入された戦場では、前衛騎士隊が壊滅的な損害を受けた例もあるそうです」


レオン「……たった一人の剣士で、そこまで戦況が変わるのか」


ルミナ「王国軍は、極めて危険な戦力と判断しています」


 レオンは報告書を見つめた。


 少年自身が戦略を立てているわけではない。


 しかし、命じられた場所で防衛線を突破するだけで、その後の戦況が大きく変わってしまう。


 王国軍が受けている損害のすべてが少年一人によるものではない。


 だが、彼の存在が連合軍の進撃を大きく後押ししていることは明らかだった。


レオン「……剣聖が敵にいるって、こういうことなのか」


 北境での戦いを思い出す。


 ヴェルセリアとの激闘。


 あのときのような強敵が、今度は王国の西方に現れている。


レオン「……できれば、戦いたくない相手だな」


ルミナ「王国軍は対処方法を検討しています」


レオン「……そうか」


 北境の戦いは停戦を迎えた。


 しかし、王国の西方では今も戦火が広がっている。


 そして、その戦場には十三歳の少年剣聖が存在するという。


 可憐な容姿を持ち、礼儀正しく、将軍の命令に従って剣を振るうという少年。


 その実力も、正体も、レオンたちはまだ知らない。


 ただ一つ確かなのは、その少年によって、王国軍がすでに深刻な打撃を受けているということだった。


レオン(……せっかく学園に帰ってきたのに、また戦争かよ)


 窓の外には、穏やかな王都の空が広がっていた。


 だが、その平穏の向こう側では、新たな戦いの足音が確実に近づいていた。


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