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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第107章 学園への帰還


 セレスティア王国、王都。


 北境戦役から帰還したレオンたちは、ようやく懐かしいセレスティア学園へ戻ってきた。


 学園の正門をくぐると、見慣れた校舎が目に入る。


 整えられた花壇。


 石畳の中庭。


 講義棟から聞こえてくる、生徒たちの話し声。


レオン(……帰ってきたんだな)


 北境での激戦が脳裏をよぎる。


 砕けた城壁。燃え上がる陣地。傷ついた兵士たち。


 もう二度と、この場所へ戻れないかもしれないと思ったこともあった。


ルミナ「レオン様。お疲れではありませんか?」


レオン「……いや、大丈夫。まだ実感が湧かなくてさ」


ルミナ「私も、戻ることができて嬉しく思います」


レオン「……ああ」


 そのときだった。


クラリッサ「レオーーーン!! こっちこっちぃ!」


 中庭の向こうから、クラリッサが大きく手を振っていた。


レオン「……何だ?」


クラリッサ「いいから早く来てってばぁ!」


 妙に嬉しそうな顔だった。


 その後ろには、マリアベルとリリアーナの姿もある。


マリアベル「ほら! 主役が遅れてどうするのよ!」


リリアーナ「皆さん、準備して待っています」


レオン「……準備?」


 首を傾げながら歩いていく。


 そして、案内された講堂の扉を開いた瞬間。


学園生徒たち「おかえりなさーーい!!」


レオン「……うわっ!?」


 思わず飛び上がった。


 講堂には、大勢の学園生徒たちが集まっていた。


 壁には色とりどりの花飾り。


 中央には大きな横断幕。


 ――北境救援部隊の皆さん、おかえりなさい!


 長机には料理や菓子、飲み物が並べられている。


 戦争から無事に戻った仲間たちを労うため、生徒たちが自発的に用意した歓迎会だった。


ジェイド「レオン! よく帰ってきたな!」


マリエッタ「皆さん、本当にお疲れさまでした!」


男子生徒「アーヴェル! 無事でよかったな!」


女子生徒「ソフィアさんも、カグラさんも、おかえりなさい!」


男子生徒「クラリッサ! あの鎧で活躍したって本当か!?」


クラリッサ「もちろんだよぉ! でも、最後はちょっと壊れちゃった!」


 次々と声がかかる。


レオン(……なんだよ、これ)


 前世では、自分が誰かに歓迎されることなど、ほとんどなかった。


 それが今は、こんなにも多くの人たちが、自分たちの帰還を喜んでくれている。


 胸の奥が、少しだけ熱くなった。


     


 講堂の壇上には、学園長と教職員たちが並んでいた。


学園長「皆さん。本当によく無事に戻ってきてくれました」


 会場が静まり返る。


学園長「北境では、多くの方々が傷つき、尊い命が失われました。そのことを、私たちは決して忘れてはなりません」


 生徒たちの表情が引き締まる。


学園長「そして、救援部隊に参加した生徒たちと、ともに戦地へ赴いてくださった先生方にも、心から感謝申し上げます」


 セルジュ、セレフィア、ミレイユも、北境救援部隊に同行した教師として壇上に並んでいた。


セルジュ「皆、よく戻った。今日は十分に休み、仲間との再会を喜んでくれ」


セレフィア「皆さんの元気な姿を見ることができて、私も嬉しいです」


ミレイユ「先生たちもずいぶん心配したんだからねぇ。でも、怪我人は無理しちゃ駄目よぉ」


クラリッサ「今日くらいは許してよぉ!」


ミレイユ「クラリッサちゃんは特に駄目ぇー」


クラリッサ「えええっ!?」


 周囲から笑いが漏れる。


学園長「皆さん。本当によく頑張りました。そして……おかえりなさい」


 大きな拍手が講堂を包んだ。


     


 歓迎会が始まると、レオンたちの周囲には次々と人が集まった。


ジェイド「レオン! お前、竜族の将軍と戦ったって本当か!?」


レオン「……ああ。まあ、戦ったけど」


ジェイド「すげえな! よく生きて帰ってきたな!」


レオン「……いや、本当に死ぬかと思ったよ」


マリエッタ「でも、レオン君だけじゃなくて、皆さんが頑張ったからこそ帰ってこられたんですよね」


レオン「……ああ。そのとおりだよ」


 レオンは、近くにいた仲間たちへ目を向けた。


 ルミナ、アーヴェル、エリシア、ヴィクトリア、クラリッサ、カグラ、リリアーナ、ソフィア。


 そして、マリアベルとセシリア。


 皆がそれぞれの立場で、北境の危機に立ち向かった。


 さらに、セルジュ、セレフィア、ミレイユも、教師としてともに戦地へ赴き、生徒たちを支えてくれた。


 誰か一人でも欠けていたら、あの戦いは違う結末になっていたかもしれない。


アーヴェル「……お前も十分働いただろう。たまには素直に労われておけ」


レオン「……お前までそんなこと言うのか」


アーヴェル「事実だからな」


 そこへエリシアが飲み物を持ってやって来た。


エリシア「レオン様、ルミナさん。こちら、どうぞ」


レオン「……ありがとう」


ルミナ「ありがとうございます、エリシア様」


エリシア「皆さんと一緒に笑っていられることが、何より嬉しいです」


 その隣では、ヴィクトリアがハンカチを目元へ当てていた。


ヴィクトリア「まったく、北境では何度も肝を冷やしましたわ! ですが、こうして皆様と帰ってこられて本当によかったですの!」


 少し離れた場所では、カグラが焼き菓子を手にしていた。


カグラ「……レオン」


レオン「……ん?」


カグラ「……これ、おいしい」


レオン「……ありがとう」


カグラ「……今日はいっぱい食べて」


 カグラは満足そうに頷いた。


 そこへソフィアがやって来る。


ソフィア「レオン様。ちゃんと眠れていますか?」


レオン「……まあ、前よりは」


ソフィア「……前よりは、ですか?」


レオン「…………」


ソフィア「無理はなさらないでくださいね」


レオン「……ソフィアこそ、戦地ではずっと救護の仕事をしてただろ?」


ソフィア「……はい。でも、ミレイユ先生たちにも助けていただきましたから」


 ソフィアは穏やかに微笑んだ。


    


 そのとき。


マリアベル「さあ! 皆さん、注目!」


レオン「……ん?」


マリアベル「北境戦役で活躍した《アーマードクラリッサ》の実戦データについて、少しだけ報告を――」


レオン「……おい!」


クラリッサ「やったぁ! 研究発表だぁ!」


リリアーナ「資料は用意済みです」


レオン「……歓迎会だよな、これ!?」


マリアベル「もちろんよ! だからこそ、皆の頑張りを記録として残すの!」


リリアーナ「右脚の損傷と修復後の負荷についても、詳細な分析が必要です」


クラリッサ「次はもっと速く動けるようにしたいなぁ!」


レオン「……まず安全に動かせるようにしろよ!」


 生徒たちから笑いが起こる。


 そこへセレフィアが近づいてきた。


セレフィア「マリアベルさん。研究発表は、また別の日にしましょうね」


マリアベル「ええっ!? でも先生!」


セレフィア「今日は皆さんの帰還をお祝いする日ですから」


リリアーナ「では、研究発表会を別途開催します」


レオン「……結局やるのか!」


     


 やがて、歓迎会も終わりに近づいた。


 講堂の片隅で、レオンは窓の外を見つめていた。


 王都の夕空は穏やかだった。


 けれども、西方では今も戦争が続いている。


 そこへアーヴェルがやって来た。


アーヴェル「……どうした? 難しい顔をして」


レオン「……いや。こうしてみんなと笑っていられるのって、ありがたいなと思ってさ」


アーヴェル「……そうだな」


 アーヴェルも会場を見渡した。


 戦争で失われたものは戻らない。


 しかし、守り抜けたものも確かにある。


アーヴェル「……今夜くらいは、余計なことを考えずに楽しめ」


レオン「……ああ」


 そのとき。


クラリッサ「レオーーーン! またそんな隅っこにいるぅ!」


ジェイド「おいおい、今日の主役が一人で黄昏れてどうするんだよ!」


マリエッタ「まだお菓子も残っていますよ。皆さんと一緒に楽しみましょう!」


レオン「……分かった、分かった!」


 レオンは仲間たちの輪へ戻っていく。


 ルミナも静かにその隣へ並んだ。


ルミナ「レオン様。皆様がお待ちです」


レオン「……ああ。行こうか」


 北境から帰還した生徒たち。


 王都で無事を祈りながら待っていたジェイドやマリエッタたち。


 そして、北境へ同行したセルジュ、セレフィア、ミレイユ。


 今は皆が同じ場所にいる。


 その当たり前のようで、決して当たり前ではない時間を、誰もが大切に感じていた。


 レオンは小さく笑った。


レオン(……やっぱり、ここに帰ってこられてよかった)


    


 歓迎会の片づけが始まる頃。


 廊下では、ジェイドが数人の男子生徒と話していた。


ジェイド「そういえば聞いたか? 西方諸国連合に、十三歳の剣聖がいるらしいぞ」


男子生徒「十三歳!? そんな子供が?」


ジェイド「しかも、女の子みたいに綺麗な少年なんだってさ」


男子生徒「本当かよ?」


ジェイド「さあな。噂で聞いただけだ」


 その話は、それだけで終わった。


 まだ少年剣聖について、王都の生徒たちが知ることはほとんどなかった。


 そして、その翌日。


 学園では、もう一つの噂が広まり始める。


 ――魔王陛下の特使が、学園を訪問するらしい。


 ――人間ではないけれど、驚くほど可憐で美しいお嬢様なのだという。


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