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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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103/114

第103章 停戦命令



 北境南方包囲線。


 王国軍と魔王軍の激闘は、ついに最後の局面を迎えていた。


 包囲の内側からはアルセリア辺境伯軍が、外側からは王国解囲軍が進撃している。


 両軍ともに多くの将兵を失い、もはや長期戦を続ける余力は乏しかった。


 ここで包囲を突破できるか。


 それとも魔王軍が最後まで防ぎきるか。


 北境戦役の勝敗は、この一戦に懸かっていた。


    


 その戦場の中心で、俺は竜族の女将軍ヴェルセリア・ドラグレインと剣を交えていた。


ヴェルセリア「ふっ! どうした、レオン! 先ほどの勢いはどこへ行った!」


レオン「……まだまだ!」


 剣が激突する。


 凄まじい衝撃が腕を伝った。


レオン(……強すぎるだろ、この人!)


 三百年近い年月を生きてきた竜族の女将軍。


 身体能力も経験も、桁違いだった。


ヴェルセリア「見事な剣筋だ! だが、まだ甘い!」


レオン「……くそっ!」


 その瞬間、敵の一撃が俺の肩口をかすめた。


 冷たい汗が背中を伝う。


 彼女は笑っている。


 だが、その剣に一切の手加減はなかった。


ヴェルセリア「私には守るべき戦線がある。お前を通すわけにはいかん!」


レオン「……俺だって、後ろに守らなきゃならない人たちがいる!」


ヴェルセリア「ならば、剣で示せ!」


 レオンは魔力を極限まで絞り込み、刃の軌道をわずかに変えた。


 ヴェルセリアの剣を紙一重でかわし、踏み込む。


ヴェルセリア「……ほう!?」


 鋭い一閃。


 銀色の軌跡が、彼女の頭上を走った。


 ――キィン!


 硬質な音。


 何かが宙を舞った。


レオン「……え?」


 地面へ落ちたのは、白く輝く小さな欠片。


 ヴェルセリアの二本の角のうち、片方の先端だった。


レオン(……や、やばい! 角を斬っちゃった!?)


 俺は思わず身構えた。


 竜族の角だぞ。


 これ、絶対に怒られるやつじゃないか?


ヴェルセリア「…………」


 彼女は、自分の角へ手を伸ばした。


 そして、地面に落ちた欠片を見つめる。


レオン「……あの、悪い。狙ったわけじゃ……いや、戦闘中だから狙ってはいたんだけど……」


 自分でも何を言っているのか分からない。


 しかし、ヴェルセリアは怒らなかった。


ヴェルセリア「……ふっ」


 笑った。


ヴェルセリア「はははっ! 見事だ、レオン・アルセリア!」


レオン「……え?」


ヴェルセリア「まさか、この私の角に剣を届かせるとはな!」


 彼女は心底楽しそうだった。


 だが、その胸の奥では、これまで経験したことのない感情が芽生えていた。


 強い。


 美しい。


 そして、仲間を守るために一歩も退かない。


 長い年月を生き、幾多の勇者や英雄を見てきた彼女にとっても、これほど心を奪われた相手はいなかった。


ヴェルセリア(……何だ、この胸の高鳴りは)


 彼女はレオンを見つめた。


ヴェルセリア(……まさか、これが……恋というものなのか?)


 三百年近く生きてきた竜族の女将軍。


 その、生まれて初めての恋だった。


 しかし、彼女は魔王軍の将軍である。


 恋心が芽生えたからといって、任務を放棄するつもりは微塵もなかった。


ヴェルセリア「……レオン」


レオン「……何だ?」


ヴェルセリア「お前は実に素晴らしい男だ」


レオン「……は?」


ヴェルセリア「だが、ここから先へは通さん!」


 彼女は再び剣を構えた。


ヴェルセリア「さあ、続けよう!」


レオン(……いや、どういうこと!?)


     


 再び剣が交わされた。


ヴェルセリア「はあっ!」


レオン「……っ!」


 鋭い突きが俺の胸元を狙う。


 剣を傾けて受け流すと、彼女は即座に追撃してきた。


レオン(……本当に容赦がない!)


 ところが、その直後だった。


ヴェルセリア「……ふふっ。やはりお見事ですね、レオン」


レオン「……え?」


 何かがおかしい。


 今、明らかに口調が変わらなかったか?


ヴェルセリア「さあ、もう一度だ。遠慮はいらんぞ」


レオン「……あ、ああ!」


 俺は踏み込んだ。


 激しい斬撃が交錯する。


 彼女はまるで俺の攻撃を楽しむように、軽やかに受け流していった。


ヴェルセリア「まあ……! なんと見事な剣なのでしょう!」


レオン「……ちょっと待て!」


ヴェルセリア「どうした?」


レオン「……いや、何でもない!」


 気のせいだ。


 そう思いたかった。


 だが、彼女の頬はわずかに赤く染まっていた。


ヴェルセリア(……いけない。どうにも落ち着かないな)


 彼女自身も、自分の変化に戸惑っていた。


 しかし、目の前の青年への想いを自覚したことで、無意識に言葉が柔らかくなっていたのである。


ヴェルセリア「……レオン様」


レオン「…………は?」


ヴェルセリア「さあ、お続けください。あなたの剣を、もっと見せていただきたい」


レオン「……いやいやいや!」


 俺は思わず一歩下がった。


レオン「何で急に『様』がついたんだ!?」


ヴェルセリア「……何か問題でも?」


レオン「問題しかないだろ! さっきまで普通にレオンって呼んでただろ!」


ヴェルセリア「……ふふっ。そうでしたね」


 彼女は楽しそうに微笑んだ。


ヴェルセリア「ですが、レオン様とお呼びしたくなったのです」


レオン「……意味が分からない!」


 しかも、その間も彼女の剣は容赦なく襲いかかってくる。


ヴェルセリア「ですが、ここから先へは通しませんよ!」


レオン「……くそっ! 敬語になっても攻撃は全然優しくならないのかよ!」


ヴェルセリア「当然です。私は魔王軍の将ですから」


 凄まじい一撃。


 俺は辛うじて受け止めた。


レオン(……この人、本当に何なんだ!?)


 恋する乙女のような微笑み。


 しかし、戦いぶりは三百年を生きた竜族の猛将そのものだった。


     


 王国解囲軍の前進陣地。


 クラリッサ、マリアベル、リリアーナの三人は、遠方の戦場を魔導望遠鏡で観察していた。


クラリッサ「……あっ! レオンだぁ!」


マリアベル「えっ!? どこ!?」


クラリッサ「あそこぉ! 角の生えた女の人と戦ってる!」


リリアーナ「……確認しました。非常に強い魔力反応ですね」


 三人は興味津々で観察する。


 距離が遠いため、会話までは聞こえない。


 しかし、レオンがヴェルセリアの角の先端を斬り落とした瞬間は、はっきり見えた。


クラリッサ「……ええええっ!?」


マリアベル「……角を斬った!?」


リリアーナ「……片方の角の先端ですね。興味深いです」


 そして、その直後。


 ヴェルセリアがレオンを見つめて微笑んだ。


クラリッサ「……あれ?」


マリアベル「……何よ、あの顔」


リリアーナ「……敵対する相手に向ける表情としては、少々意外ですね」


クラリッサ「……ねえ、先輩。あの女の人、レオンのこと好きなんじゃないのぉ!?」


マリアベル「ありえるわ!!」


リリアーナ「……好意を抱いている可能性がありますね」


クラリッサ「やっぱりぃ!?」


 三人は顔を見合わせた。


 ここまでは、実は正解だった。


 しかし、問題はその次だった。


マリアベル「……待って!」


クラリッサ「なになに!?」


マリアベル「竜族って、角が重要な意味を持つ種族だったわよね!?」


リリアーナ「……身体的な象徴である可能性はあります」


マリアベル「じゃあ、もしかして……角を斬ることが、特別な求婚の儀式だったりするんじゃない!?」


クラリッサ「……ええええっ!?」


リリアーナ「……強さを婚姻条件とする文化ですね。興味深い仮説です」


マリアベル「ありえるわ!!」


クラリッサ「……ってことはぁ!?」


 三人は同時に、遠方のレオンを見つめた。


クラリッサ「レオンが敵の女将軍と婚約しちゃったかもしれないのぉぉ!?」


 とんでもない勘違いだった。


 竜族にそんな婚姻儀式があるという確証は、何一つない。


 しかし、三人の想像力は止まらなかった。


マリアベル「戦場で角を斬られ、恋に落ちる竜族の女将軍……! これは歴史的な出来事よ!」


リリアーナ「……角の損傷が婚約成立の象徴である可能性もありますね」


クラリッサ「すっごぉい! でもレオン、絶対に何も知らないよぉ!」


マリアベル「そこがまた面白いのよ!!」


     


アーヴェル「……お前たち、何を騒いでいる?」


クラリッサ「大変なのぉ! レオンが敵の女将軍と婚約しちゃったかもしれないのぉ!」


アーヴェル「……は?」


マリアベル「竜族の角を斬ったのよ! しかも相手は微笑んでいたの!」


リリアーナ「……求婚の儀式である可能性があります」


アーヴェル「……いや、根拠は?」


マリアベル「仮説よ!」


アーヴェル「……仮説で婚約させるな!」


 その騒ぎを聞きつけ、エリシアとヴィクトリアもやって来た。


エリシア「……レオン様が、婚約……?」


ヴィクトリア「ちょ、ちょっとお待ちなさい! どういうことですの!?」


クラリッサ「角を斬ったら婚約しちゃったかもしれないのぉ!」


ヴィクトリア「意味が分かりませんわ!」


カグラ「……まだ何も決まってない」


 そこへセルジュが現れた。


セルジュ「……お前たち、戦場で何を騒いでいる!」


マリアベル「先生! 竜族の婚姻文化について重大な発見をしたかもしれません!」


リリアーナ「……追加調査が必要ですね」


セルジュ「……その前に任務を果たせ!」


 だが、三人の暴走は止まらなかった。


     


 魔王軍中央本陣。


 ヴァルガスは戦況図を見つめていた。


魔族参謀「将軍! 南方包囲線で激戦が続いております!」


ヴァルガス「……ああ」


魔族参謀「ヴェルセリア将軍が銀髪の剣聖を足止めしていますが、王国軍は依然として突破を試みています!」


ヴァルガス「……やはり簡単には終わらねえな」


 そのとき、王都方面から新たな報告が届く。


魔族伝令「将軍! ラプソディア様による和平交渉は、重要な局面に入っているとのことです!」


ヴァルガス「……そうか」


 ヴァルガスは地図へ視線を落とした。


 王国解囲軍も、アルセリア辺境伯軍も、限界に近づいている。


 王都では西方諸国連合の侵攻によって、国王が厳しい決断を迫られていた。


ヴァルガス「……そろそろだな」


魔族参謀「……将軍?」


ヴァルガス「王国軍への通信妨害を解除しろ」


魔族参謀「……解除、ですか!?」


ヴァルガス「ああ。王都が停戦を決めても、前線に命令が届かなきゃ意味がねえ」


魔族参謀「しかし、敵軍の連携も回復してしまいます!」


ヴァルガス「……分かってる。それでもやる」


 彼は静かに続けた。


ヴァルガス「陛下が望んでおられるのは、戦争の継続じゃねえからな」


魔族参謀「……承知しました!」


 魔王軍の通信妨害が、順次解除された。


     


 セレスティア王国王宮。


 西方諸国連合の進撃は、王国首脳部をさらに追い詰めていた。


王国伝令「陛下! 西方の防衛拠点が複数後退しております!」


王国軍務高官「……このままでは重要都市への進撃路が脅かされます!」


王国財務高官「これ以上、北境と西方の両方を支える余裕はありません!」


 国王は静かに目を閉じた。


 北境では、今も将兵たちが命を懸けて戦っている。


 しかし、西方の防衛を犠牲にしてまで戦争を続ければ、王国そのものが危うくなる。


国王「……ラプソディアを呼べ」


 魔王の特使が再び会議室へ招かれた。


国王「……確認したい。我が国が古代遺跡の共同調査と魔力配分についての協議を受け入れれば、魔王軍は停戦するのだな?」


ラプソディア「はい。双方が正式に合意すれば、即時戦闘停止の命令を下す用意がございます」


国王「……賠償や領土の割譲は求めぬのだな?」


ラプソディア「もちろんでございます」


国王「……魔力配分の変更そのものを、今ここで承諾するわけではないぞ」


ラプソディア「承知しております」


 国王はしばらく沈黙した。


 そして、決断を下す。


国王「……分かった。共同調査と魔力配分について、正式な交渉を開始する」


ラプソディア「ありがとうございます、陛下」


国王「同時に、北境での停戦にも合意しよう」


 ラプソディアは静かに一礼した。


 こうして、両国は停戦の実施について正式に合意した。


 国王は軍務高官へ向き直る。


国王「北境の全王国軍へ即時停戦命令を発せよ!」


王国軍務高官「……陛下!」


国王「無条件降伏ではない。交渉を開始するための停戦だ。負傷者の救護と将兵の安全を最優先とせよ!」


王国軍務高官「……承知しました!」


     


 北境。


 魔王軍による通信妨害が解除されたことで、王都からの指令が次々と届き始めた。


王国軍通信兵「通信回復! 王都から最優先指令です!」


 王国解囲軍司令部へ、そして包囲下のアルセリア辺境伯軍へ。


 正式な停戦命令が伝達される。


 同時に、王都で軍務に就くレオンの長兄と次兄からの報告も届いた。


王国軍通信兵「閣下! 西方諸国連合が王国領へ侵攻しております!」


アルセリア辺境伯「…………」


王国軍通信兵「ご子息お二人からも報告が届いております!」


 アルセリア辺境伯は静かに報告書を受け取った。


 ――王都の守りは、我々が務めます。


アルセリア辺境伯「……そうか」


 そして、もう一通の緊急指令。


王国軍通信兵「閣下! 国王陛下より停戦命令です!」


アルセリア辺境伯「……停戦だと?」


王国軍通信兵「はい! 魔王軍との和平交渉開始に伴い、攻撃を停止せよとのご命令です!」


 周囲の騎士たちが息を呑む。


王国軍騎士「……ここまで戦って、停戦……?」


王国軍騎士「……もう、戦わずに済むのか……」


 アルセリア辺境伯は静かに目を閉じた。


 多くの将兵が命を落とした。


 それでも、これ以上の犠牲を出さずに済むのなら。


アルセリア辺境伯「……陛下の命令だ。全軍へ伝達せよ」


    


 南方包囲線。


 俺とヴェルセリアの激闘は、なおも続いていた。


ヴェルセリア「ふふっ! レオン様、素晴らしい剣です!」


レオン「……だから、何で急に『様』がついたんだよ!」


ヴェルセリア「お呼びしたくなったのです。いけませんか?」


レオン「……戦闘中に聞かれても困るんだが!」


 彼女は微笑んだ。


 だが、斬撃は鋭い。


ヴェルセリア「それは残念です。ですが、ここから先へは通しません!」


レオン「……くそっ!」


 恋心と戦意が、まるで矛盾なく同居している。


 俺には、その感覚がさっぱり理解できなかった。


 そのときだった。


 両軍の後方から、停戦を告げる角笛が鳴り響いた。


レオン「……何だ!?」


ヴェルセリア「……む?」


王国軍騎士「レオン様! 攻撃停止です!」


レオン「……えっ!?」


王国軍騎士「国王陛下より停戦命令が届きました!」


レオン「……停戦!?」


 ヴェルセリアにも、魔王軍の指令が届く。


魔族騎士「ヴェルセリア将軍! 正式な停戦命令です! 攻撃停止を!」


ヴェルセリア「……そうか」


 彼女は静かに剣を下ろした。


ヴェルセリア「陛下の御意向ならば従おう」


 俺も剣を収める。


レオン「……本当に、終わるのか?」


ヴェルセリア「少なくとも、今ここで剣を交える理由はなくなりましたね」


 彼女は、片方の角の短くなった先端へ手を触れた。


ヴェルセリア「……レオン様」


レオン「……何だ?」


ヴェルセリア「あなたとの戦いは、決して忘れません」


レオン「……俺も、あんたの強さは忘れられそうにないよ」


 彼女は嬉しそうに微笑んだ。


ヴェルセリア「ふふっ……また、お会いしましょう」


レオン「……できれば、戦場以外でな」


ヴェルセリア「……ええ。ぜひ」


 その返事に、彼女の頬がわずかに赤く染まる。


レオン(……何か、最後まで妙な人だったな)


 もちろん、俺はまったく気づいていなかった。


 この竜族の女将軍が、恋に落ちてしまったことなど。


     


 王国解囲軍西方陣地。


セルジュ「クラリッサ! 戦闘停止だ!」


クラリッサ「ええっ!? 停戦!?」


マリアベル「何ですって!?」


リリアーナ「……追加の実戦データが取れなくなりましたね」


セルジュ「……戦闘が終わるのは喜ばしいことだ!」


クラリッサ「……あっ、そっか!」


 だが、クラリッサはすぐに別の問題を思い出した。


クラリッサ「……それより先輩! レオンの婚約疑惑はどうなるのぉ!?」


マリアベル「そうよ! 竜族の婚姻文化について調べなくちゃ!」


リリアーナ「……本人への聞き取り調査が必要ですね」


アーヴェル「……そもそも婚約したとは決まってないだろ!」


カグラ「……まだ仮説」


クラリッサ「でも、あの女の人、レオンのこと絶対好きだよぉ!」


マリアベル「ありえるわ!!」


リリアーナ「……かなり興味深い事例ですね」


 戦争が終わっても、三人の暴走だけは止まりそうになかった。


     


 夕刻。


 北境の戦場に、久しぶりの静寂が訪れた。


 王国軍と魔王軍は、互いに武器を下ろした。


 負傷者の救出が始まり、倒れた将兵の遺体が運ばれていく。


 王国軍は包囲突破を果たす前に、王都からの命令によって攻撃を停止した。


 一方、魔王軍も激しい損耗を受けながら、最後まで包囲網を維持した。


 軍事的な決着がつかないまま、政治的な判断によって戦いは終わったのである。


 魔王軍中央本陣。


魔族参謀「将軍。王国軍の攻撃停止を確認しました」


ヴァルガス「……そうか」


魔族参謀「我が軍も全戦線で停戦命令を実施しております」


ヴァルガス「……ああ。だが、勝った気はしねえな」


 彼は地図を見つめた。


ヴァルガス「……大勢死んだ。王国も、俺たちもな」


 しばらくの沈黙。


ヴァルガス「……あとはラプソディアの仕事だ」


 王都では、魔王の特使ラプソディアが、国王からの正式な返答を受け取っていた。


 古代遺跡の共同調査。


 魔力配分についての協議。


 魔王が求めていた和平への道が、ようやく開かれようとしていた。


 だが、ラプソディアには別の目的があった。


 シオン。


 レオン。


 ルミナ。


 魔王。


 そして、ラプソディア自身。


 五人が揃うことで、《原初の魔導核》の解放条件が満たされる。


 停戦は、その計画へ大きく近づく第一歩となった。


 しかし、その真意を知る者は、まだいない。


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