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四つの塔

「ところで、アイリスさんの力になってくれということでしたが、具体的にお聞かせいただけますか?」


「それは私から」

アイリスは、神のほうを見る。

神は頷く。


「実は、この神様は、私がいる国では、邪神扱いされています」


私は神を見る。

見た目的には、邪神という雰囲気ではない。


「人は見た目では、わからないものなのですね」

私は呟いた。


「あの、進さん」


いきなり下の名前か……。

そうか、私もアイリスと呼んでいるから、同じか……。

女性に下の名前で呼ばれるのは照れくさいが、

まぁ良い。


「はい。アイリスさん」


「邪神扱いされているだけで、本当は良い神様なのです」


良いというのは、なぜわかる。

そう問い詰めるのは、

野暮というものか……。


「申し訳ない。この国では、邪神とそうでない神の分類は、どのように行われるのですか?」


「えっ。えーっと」

アイリスは戸惑っている。


「ずいぶん意地悪な質問をされるのですね。あなたもご理解されているのでは」

神は言った。


「人間の都合による分類。

もっと正確に言えば、権力をいち早く持った者達による分類」


「その通りです」


「つまり、あなたは運が悪かったと」


「そうなりますね」


「しかし疑問だ。

神は絶大な力を持っているというが、それなら信者に、自分への信仰を強固にさせるための力を与えれば良かったものを」


「そう思いますよね。その疑問は正論です。しかし神同士が、お互いにそう考えたとしたら」


「なるほど、競争が拮抗すると」


「そして……、結局どうなります?」


「戦乱ですか」


「そうですね。戦乱を含む争い全般です」


「大いなる矛盾ですね」


「そうです。平和をもたらすはずの神の恩恵が、神の権威を維持するための争いの元凶になる」


「皮肉なものですね。人はなぜこうも争いたがるのでしょうか?」


「それもあなたが一番ご存じなのでは? ほら、学会で……」


「なるほど、信じたものの証明ですか……。それは実に耳が痛い」


「あなたは世界には、たった一つの結論しかないと思いますか?」


「いえ。

そうは思いません。

どの考えにも、抜けはあります。

結局のところ、曖昧模糊とした中庸が良いことも多いです」


「今、この世界は魔物によって侵略されています。

そして今の神では、この侵攻を止められないのです」


「もしかして、私に宗教的指導者になれと?」


「いえ、そうではありません。

アイリスをこの国の端にある四つの塔に連れて行ってほしいのです」


「少し待ってください。

私は現地の者ではありません。

もっと適切な人材がいるのでは?」


「ちょっと待ってください。ここからは私が説明を」

アイリスは言った。

神は頷く。


「神様は邪神扱いされてはいますが、魔王の襲来を防いでおられます。

そのことを今までも人々に伝えて、神殿を修復するように、色々手を打たれました。

しかし、人は動かないのです。

邪神扱いされていますから、神殿の修復はタブーなのです」

アイリスは少し悔しそうに言った。


「なるほど。それは道理だ。それで修復となると、いろいろとお金とか、建築材料とかかかるのでは? 人もいるし」


「それは大丈夫です。私が儀式を行えば修復されます」

アイリスは胸を張る。


私は神を見る。

神も頷いた。


「信仰とは無関係な案内人を雇うことも難しいのですか?」


「ですから、邪神扱いされているから、協力を得ること自体が難しいのです」

アイリスは悲しそうに言った。


「しかし、なぜ彼女なのですか?」


「実は唯一動いてくれたのが、このアイリスなのです。

ただ、アイリスは魔法の能力はそこそこ高いが、一人では心もとない。

そこで同行者として、あなたを指名しました」

神は言った。


「失礼ですが……、再び信仰を集めることを望んでいらっしゃるのですか?」


「いえ。魔王の侵攻さえ食い止められれば良い」


「既存の神では、対抗できないのですか」


「この荒廃した国を見てください」


魔物たちに襲われる村や街が映し出される。


「今の神は、戦と計略には長けていますが、邪悪を退ける力は乏しいのです」


「その現在信仰されている神から、協力の依頼はなかったのですか? 共同でやりましょうとか、そういうのは?」


「そんなことはしませんよ。彼は保身で頭がいっぱいですから、私が何かをやったところで、手柄は自分のものにし、損害は私の責任にするでしょう」


「そんな神に騙されている世界なんて、放っておけば……」


「人が滅ぶだけなら良いでしょう。

しかし罪もない動植物まで、巻き込まれるのですよ。

それに多くの民には関係のないことです」


なるほど。

それも一理あるか。


「技術的な面について伺います。塔はどのように機能するのですか?」


アイリスは神のほうを見る。


「アイリスも知りませんよね。この四つの塔というのは、それぞれ結界を意味します」


「結界……。防御用の壁のようなものですか」


「はい」


「それは物理的な壁ですか?」


「いえ、物理ではありません。魔法の壁のようなものです」


「少し理解に苦しみますね」


「では試してみましょう。私の前に、あなたの波長では通れない壁を作りました。私に近づけますか」

神はそう言った。


私は近づいてみる。

(ごつん)

たしかに壁のようなものがある。


「たしかに壁のようなものがあります。しかし壁というより、空間が歪んでいるようだ」


「よく気づきましたね。たしかに、その空間は歪んでいます」


「これはどのような仕組みなのですか……。実に興味深い」


「まぁ、それは追々お話しするとして、他に質問は?」


「神の力というのは、物理現象なのでしょうか?」


意味がわからないのか。

アイリスは、ぼーっとしている。


神はそんなアイリスを横目でちらりと見て、

「一番多いのが、認識への介入です」

そう答えた。


「今、私が経験しているのも、認識への介入ですよね」


「そうです」


「なるほど。つまり塔の建設なども、神が施工者の認識に介入して、と……」


「そういうことですね」


「儀式による修復というのは?」


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