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サビたロボットと、ダメなヒト。  作者: あおば がしゅん


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4/20

共同

「あっ。いくらですか?」

青山さんは聞き逃したと思い、もう一度言い直す。


「いえそうではなくて、本当にいいんですか?この店潰れるので……その……返品は」




「大丈夫です。分かっています」

俺は何を考えているんだ


青山さんは悩んでいる。

その間に気付く。値札には5000円の文字。


「5000円か……」

俺は預金残高の数字が達さないことに、自分で括り付けた鎖の影響で恐怖を覚えた。


待って……買えなくね?買ったら貯金切り崩さなきゃなんだけど

あっ

 「……差し上げます」

気が変わったタイミングで、店主は答えた。



 ……え?



「もうお店としては、機能もしていないので差し上げます」


「えっあぁ……いえ、買わせてください」


 


「本当に差し上げます。これも何かの縁かなって」

青山さんは、なぜか涙を浮かべていた。


えぇ……?

訳も分からず引き気味に、彼女を見つめる。


事情も聞けず俺が抱き上げようとした時、制止してきた。


戸惑いつつ、ロボットから離れる。



「……じゃあね元気でね」

彼女は優しく囁きながらゆっくり、悲しむように項垂れる無機質な頭を撫でる。


 ……たかがロボットだぞ?



「お客様が、最後の商品を買ってくださった最後のお客様です。本当にありがとうございます」

向き合うと深く頭を下げる。


「俺は、貰ったんですよ」困惑する。


「いえいえ…………この子、直していないだけで動かないけどレジ近くにいてくれたから、相談や雑談をすることがあったんです。だから値段は合ってないようなものでした。売ることにためらいがあったのも事実です」

青山さんは優しい目で、ロボットを見つめていた。


「あと今までにない感情で。優しそうな方に引き取って頂けてなんというか親心みたいな友だちが結婚していくみたいな。そんな感情です」

その目には涙が溢れていた。


「そっ、そうなんですね」

思いがけぬ彼女の涙に驚いた。


「ありがとうございました。私この奥が自宅なので、何かあったら気軽に来てください。出来ることはなんでもします」



頭を下げ、ロボットを肩に担ぎ上げる。

ロボットの腕は俺の腰の近くでだらんとぶら下がる。

歩き始めると青山さんに向かって手を振るように動いていた。


青山さんは、ロボットに小さく微笑みながら手を振った。

だが俺はそのやり取りは知らなかった。



帰宅すると知り合いをいつもの壁に座らせ、落ち着いてもらう。


「ここ俺んち」

項垂れる知り合いは、何も言わない。



……ロボットだもんな

てか、なんで話しかけてんだ?疲れてんのかな


モヤモヤした感情を頭をガシガシと掻き振り払う。

そのあとは適当に時間を潰した。時計を見る夕方5時58分。


ん~たまにはご飯でも作るか……

何年か振りに前向きな感情で家事を始めようと決意。


白黒だった世界に、色が付いた世界に切り替わったような気がしたまま冷蔵庫を開ける。


ん~……卵……マヨネーズ……なんもねぇや



ブー ブー ブー ブー

諦めに返事をするかのようにポケットの中でスマホが震える。

スマホを取り出し画面を見ると母親の着信(もじ)

画面をスライドさせ、電話に出る。


「仕事はどう?」


……そうか伝えてなかったんだっけ



事情を説明する。


「今色んな経験が出来ているのね。ならいつか糧になって返ってくると思う。悩んでも、失敗しても。歩くスピードはゆっくりになったけど止まらずに歩いてるなら、何の文句もない」


安定した仕事が後味の悪い退職。長続きしなくないバイト生活がだめだと怒らないのか…?


母の言葉に詰まっていると最後に一言

「でもあんたは変なところで真面目なんだから。もっと肩の力を抜いてごらん。たまには立ち止まってもいいんだから」

 


母親の最後まで言わない温かく優しい言葉に俺は言葉が詰まり、その後の記憶はない。

「今はカップラーメンでもいいからしっかり好きなものを食べなさい」

母親との電話が終わると項垂れるロボットの目の前で、仰向けになった。


ふー……

……


喉の奥から拳とも違う硬いものが出てくる感覚を飲み込む代わりに、目尻から今まで溜め込み続けたすべてが溢れ出た。

お読み頂き本当にありがとうございます。

全20話

2話から10話は【2026年3月6日から14日まで 深夜1時00分】 

11話から20話は【2026年3月15日から24日まで 午前10時00分】 に投稿いたします。


お時間ある時に、見て頂ければ幸いです。

まだまだ勉強不足で魅力に欠けていると思っております。

読者様の正直な、お気持ちで結構です。

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