声≪りそう≫と心≪げんじつ≫
年を越し2月。
俺は何も変わらず、「さて次はと……」車内でぼそぼそ呟きながら地図アプリで、次の配達先を確認。
ここか
場所を確認してエンジンをかけ、周りを見てアクセルを踏み次に向かった。
先ほど確認した場所は、とあるアパート。
アパート、もっと分かりやすくしてほしいんだよな~……
ひと様の自宅にいちゃもんを付けながら、車のエンジンを止め後部座席のドアを開け荷物を抱える。
二階建てのアパートの階段を上がり配達先に向かった。
一番奥の部屋。
インターホンを鳴らし待つ。
はーい
奥から受取人が出てくる。
「宅急便です。こちら田中様でお間違いないですか?」
伝票を見せながら確認をしてから荷物を渡す。
「ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。」
ドアが閉まる。
伝票のデータを入力。
でさ~
伝票に集中していた耳の中に届く、女性の声。
聞き覚えのある声。
声のする方を見つめる。
カップルか
しかし見覚えのある横顔。
あっ……
その瞬間、ギュッと体の最深部をひもとも違う、何かで縛られるような感覚。
足が思うように動かなくなり、既に処理が済んだ伝票を何度も見返す。
元カノだ……琴音…………
誰かに腕を組み、楽しそうに反対の方向へ向かう。
隣に居る人物が声で分かった。付き合っていた当時浮気された相手でもある、会社の先輩。
反対の一番奥の部屋に消えていった。
はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……
視界が揺らぐも気合で揺れを止め、車に戻る間改めて実感。
思ったより重症……だな……トラウマになってんのか?
車に辿り着きドアを閉めると、ハンドルを掴み額を押し当て呼吸を整える。
ふーふー…… 仕事仕事……
自分の心の傷を現実的なおまじないで誤魔化し、次の配達先に向かう。
とはいえ自分でも気づいていなかった。
一年近く経っているのに……
改めて感じたこと。
心に負った傷は、外傷とは全く違う。
気にしなければいい"程度"で済むのなら、心を癒すための病院もこの世に存在し無いだろう。
俺は気にしなければいい程度で見積もっていたから、いざ自分がなったとき、いとも簡単に
目が見えるから、肌の傷が見える。病院に行けば体内の病も見つけられる。
なんなら薬を塗れば・薬を投与すれば治るから、外傷ごとき大したことないんだ……甘く見てた……
と感じた。
混乱しながらも現実と向き合い仕事を終える。
「オカエリナサイ(おかえりなさい)」
「ただいま……」サビ太郎に作り笑顔。
ピピ
「ナニカアリマシタカ?(何かありましたか?)」
サビ太郎に、表情を読み取る機能でもあるのか
サビ太郎の機能を時間と共に知っていきながら初めて心の声のまま、素直に話した。
「ソレハツライデス。ナキマショウ(それは辛いです。泣きましょう)」
驚きを隠せず。
「ニンゲンニハ"ナク"・"オコル"トイウキノウガソンザイシマス(人間には、"泣く"・"怒る"という機能が存在します)」
「ふふ。ありがとう」サビ太郎の肩を2度軽く乗せ感謝した。
たしかにそうだな。何のための”涙”だ
スマホをポケットから取り出す。
翌日の夜。
俺は、空さんの家の玄関に来ていた。
「おまたせー」
「全然大丈夫」
ふと表札が、目に入った。
[水月]
「みずつき……?」
「ん?あぁこれ?父の姓で[みなつき]って読むの。私の前の名字でもあるの。今母方の姓を名乗ってるから」
事情は特に聞かず、2人で居酒屋に来た。
「何名様ですか~?」
「2人です」
「2名様ご来店~」
らっしゃいませ~
店舗の奥から複数人の声。
お読み頂き本当にありがとうございます。
全20話
11話から20話は【2026年3月15日から24日まで 午前10時00分】 に投稿いたします。
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