↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/7

第2話「森で発見! 知らない調味料の原料と……お米!?」


食材を探して、私は森の中を歩き回っていた。


「うーん……食べられるもの、何かないかなぁ」


 森の中を歩きながら、私は周囲をきょろきょろと見回していた。

 頭上では大きな木々が枝葉を広げ、隙間から差し込む木漏れ日が地面を淡く照らしている。


 サラサラ……


 チュン……チュンチュン


 風が吹くたびに葉がさらさらと揺れ、どこからともなく小鳥の鳴き声も聞こえてくる。


 一見すると、どこにでもありそうな森。


 けれど――。


「……何だろう?」


 私は、ふと足を止めた。さっきから、何となく妙な感じがする。

 見たことのない植物や木の実があちこちに生えているだけではない。

 この森そのものが、普通の森とは少し違うような気がする。


「気のせいかな……?」


 首を傾げながら歩いていると、ふと足元に転がっている岩が目に入った。


「……あれ?」


 何の変哲もない灰色の岩。けれど、なぜか気になった。


「普通の岩……だよね?」


 私はしゃがみ込み、じっと岩を見つめる。表面も形も、ごく普通の岩にしか見えない。

 それなのに、なぜか料理人としての勘が告げていた。


「……何か違う気がする」

 

 私はそっと岩に手を伸ばした。


 その瞬間――。


 ピコン♪


 目の前に、突然透明なパネルが現れた。


「わっ!?」


 驚いて、私は思わず後ずさる。透明な画面には、聞いたことのない食材の情報が浮かび上がっていた。


 ===========

【岩石塩】

種別:調味料素材

品質:上質

分類:鉱物系食材

説明:

一見すると、普通の灰色の岩石にしか見えない特殊な鉱物。

岩石の内部には、白く輝く塩の結晶が含まれている。

結晶には岩石に含まれる天然の旨味成分が溶け込んでおり、一般的な塩よりもまろやかで、強い旨味を感じられる。

岩石を砕き、内部の塩の結晶を取り出すことで、調味料として使用可能。

料理に少量加えるだけでも、素材の味を引き立てる効果がある。

 ===========


「…………塩?」


 私は岩石の表面をじっと見つめた。


 灰色で、ごつごつとした普通の岩にしか見えない。


 けれど、鑑定に表示された文字を何度読み返しても、そこには確かに――塩と書かれている。


 まさか、こんな場所に――。

 料理に欠かせない塩が、岩に隠れているなんて。


「……見つけた」


 胸の奥が、じわっと熱くなる。

 ただの岩だと思って通り過ぎていたら、きっと気づけなかった。

 

 私の目が、ぱっと輝いた。

 さっきまでの戸惑いなど、すっかり消えていた。頭の中には、すでにこの岩石塩を使った料理が次々と思い浮かんでいる。


 焼いた肉に振りかけてもいい。

 スープの味付けにも使える。野菜の旨味を引き立てるのにも使えそうだ。

 それが、まさかこんな場所で見つかるなんて。


「これは……絶対に持って帰りたい!」


 嬉しくなって岩石を見つめた――が、しかし。

 ふと、私の表情が止まる。


「…………でも」


 私は岩石を両手で持ち上げてみた。


 ずしり。


「内側にあるんだよね……?」


 岩石の中を透かし見るように、じっと見つめる。


「どうやって取り出せば……」


 岩を砕けばいいのだろうか。けれど、力任せに割ってしまったら、中の塩の結晶まで壊してしまうかもしれない。

 私は岩石を前に、腕を組んで首を傾げた――が。 

 

「……あ」


 ふと、頭の中にいくつかのスキルが浮かんだ。


 【食材鑑定】。【調理促進】。【調味料錬成】。そして――。


「……【食材採取】?」


 私は思わず瞬きをした。そういえば、そんなスキルを持っていた。


「これ……使えるんじゃない?」


 半信半疑のまま、岩石塩へ手を伸ばす。


「えっと……【食材採取】」


 そう呟いた瞬間――。

 指先から淡い光が広がり、岩石塩の結晶を優しく包み込んだ。


「わっ……!」


 光に包まれた結晶が、岩肌からゆっくりと浮かび上がる。

 やがて、白く透き通った結晶がぽろりと私の手のひらへ落ちた。

 

「……取れた」


 手のひらの結晶は、傷ひとつなく綺麗な形を保っている。陽の光を受け、きらりと輝いた。


「すごい……!」


 思わず顔がほころぶ。


「【食材採取】って、こういうこともできるんだ……!」


 これなら、岩を無理に砕かなくてもいい。

 

「よーし……いっぱい採ろう!」


 こうして私は、岩を傷つけないように気をつけながら、必要な分だけ岩石塩の結晶を採取していった。


 ひとつ、またひとつと採取していき、気づけば袋の中には、大小合わせて一・二キロほどの岩石塩が集まっていた。


「これくらいあれば、しばらく使えそうかな」


 私は採れた岩石塩を眺めながら、満足そうに頷いた。

 そして、次に頭へ浮かんだのは――【調味料錬成】。


「……これも試してみよう」


 私は採取した岩石塩を地面に置き、両手をかざす。


「【調味料錬成】!」


 その瞬間、岩石塩が淡い光に包まれた。

 大きな結晶が次々と細かな粒へ変わり、光の中でさらさらと流れていく。

 やがて、光が二つに分かれて地面へ落ちると――。


 ぽんっ。


 ぽんっ。


 小さな音とともに、大きな二本の透明のガラス瓶が地面に現れた。


「えっ……?」


 私は驚きながら、瓶を拾い上げる。どちらの瓶にも、真っ白でさらさらとした塩がぎっしり詰まっていた。


「これ……一瓶五百グラムくらい?」


 手に持った感覚からして、かなりの量が入っている。

 瓶の中身を確認すると、目の前にスキルの結果が表示されたパネルが浮かび上がった。 


 ===========

 【調味料錬成 成功】

 素材:岩石塩 1,200g

 完成品:精製岩石塩 1,000g

 完成数:500g入り瓶×2

 品質:高品質

 ===========


「一キロ……!」


 思わず声が弾んだ。

 採取した岩石塩のすべてが、そのまま残ったわけではないみたいだけど、それでも一キロもある。


 しかも、瓶詰めまでしてくれている。


「これなら、料理にたっぷり使える!」


 私は二本の瓶を大切そうに抱えた。透明な瓶の中で、真っ白な塩がさらさらと揺れている。

 こんなにたくさんの塩を手に入れられるなんて、料理人としては嬉しくてたまらなかった。


 

 ◇◇◇


「ふっふふ〜ん♪ 大量〜♪ 大量〜♪」


 籠を背負いながら、私は鼻歌交じりに森の中を歩いていた。


 あれから15分経過した私は、スキルのおかげで食材になりそうなものを集めることができた。

 籠の中には、今日採集した食材がたっぷりと入っている。


「さてさて……今日の収穫はっと」


 私は籠の中を覗き込み、一つずつ【食材鑑定】をかけていく。


「あっ、これって……コウボの実!」


 ころんとした茶褐色の木の実を手に取り、私は思わず顔を輝かせた。

 

 発酵を助ける性質がある木の実で、パン作りにも利用できるらしい。


「ふふっ、これならふっくらしたパンが作れるかも!」


 さらに籠の中を探っていると、今度は淡い黄金色の穀物が目に留まった。


「おおっ! こっちはオルミールだ!」


 さっそく【食材鑑定】をかけてみると、パンや焼き菓子にも使える穀物だと分かった。


「やったぁ! これで作れる料理が増えるね!」


 私は大切な食材を籠にしまい直し、満面の笑みを浮かべた。

 今日の収穫も、大・成・功!


 ……なんて、すっかり満足しかけたところで、私はふと籠の中に目を向けた。

 

「そうそう、ほかにもいろいろ見つけたんだった!」


 まだまだ紹介したい食材はたくさんある。

 私は籠の中から、ころんとした果実をひとつ取り出した。

 まずは、レモンのような爽やかな酸味を持つ果実《シトレア》。


「これなら魚料理に合わせたら絶対美味しいよね。肉料理にも絶対合いそう!」


 次に手に取ったのは、良い出汁が取れるキノコ《出汁茸》。


「旨味成分が多いんだ。やっぱり出汁向きなんだね」


 煮物やスープに使えば、料理全体の味を底上げしてくれそうだ。

 その隣にあるのは《ミルク茸》。


「ほんのりミルク風味……。面白い食材だなぁ」


 クリーム系の料理やスープに使えば、優しい味に仕上がりそう。


 次々と思い浮かぶ料理に、私は思わず頬を緩めた。


 さらに、胡椒の原料になる《ピリカの実》や、お肉や魚の臭みを消してくれる、バジルによく似た香草《ミラージュバジル》まで手に入った。


「香辛料に香草……これだけ揃ってくると、料理が一気に楽しくなるなぁ」


 食材の香りを確かめながら、私はうんうんと頷く。


 籠の中から、ナッツのような香ばしい香りを持つキノコ《木実茸》を取り出した。

 手のひらに乗せてみると、ころんとした形がなんだか可愛らしい。指先で表面をそっと触れてみると、少し弾力があり、採れたばかりの新鮮さが感じられた。


 森の木々の隙間から差し込む柔らかな木漏れ日が、その表面を淡く照らしている。

 私は【食材鑑定】を使い、その特徴を確かめる。


「香ばしさが強い……これは焼いたら絶対美味しいやつ! バターと醤油があったら最高なのに……!」


 思わず、じゅわっと焼けた木実茸の姿を想像してしまう。


 表面をこんがり焼いて、仕上げにバターを溶かして……そこに醤油を少し垂らしたら――。


「……絶対美味しい」


 想像しただけで、お腹が空いてきた。

 香ばしく焼けたキノコに、とろりと溶けたバター。  そこへ醤油の香りがふわっと広がって……。


「はぁ……バターも醤油も、早く手に入れたいなぁ」


 私は思わず小さく息を吐き、籠の中をもう一度覗き込む。

 籠の中には、今日集めた食材が所狭しと詰め込まれている。コウボの実やオルミール、シトレアに出汁茸、ミルク茸、木実茸、ピリカの実にミラージュバジル。


 色も形も香りも違う食材が並んでいるのを眺めているだけで、料理人として胸が弾んでくる。

 これとこれを組み合わせたらどうなるだろう。焼いたら美味しいかな。それとも煮込んだほうがいいかな。

 そんなことを考えていると、自然と足取りまで軽くなった。


 すると――。


「……ん?」


 ふと、足元に見慣れない植物が生えていることに気づいた。

 足元に生えている植物へ目を向ける。

 細長く伸びた葉は鮮やかな緑色で、風が吹くたびにさらさらと揺れている。

 その中心から伸びた細い茎の先には、稲穂によく似た穂が垂れていた。


 けれど、よく見ると少し違う。

 穂には小さな粒がぎっしりと並び、一粒一粒は細長い楕円形をしている。まだ実っていないものは淡い緑色だが、熟してくると乳白色から淡い黄金色へと変化するらしい。

 穂全体は片手に収まるくらいの大きさで、茎は細いながらもしっかりとしている。


「これ……お米にそっくり……!」


 見た目だけなら、前の世界で見ていた稲とよく似ている。

 ただ、穂の先には小さな銀色の毛のようなものが伸びていて、風に揺れるたびにきらりと光っていた。


「もしかして……食べられるのかな?」


 私は興味津々で、そっと穂に手を伸ばした。


 指先で穂を軽く撫でると、さらさらとした葉が小さく揺れる。穂には細かな粒がびっしりと並び、陽の光を受けて淡い黄金色に輝いていた。


「【食材鑑定】」


 淡い光が穂を包み込み、目の前に透明なパネルが浮かび上がる。

 表示された名前を見た瞬間――。

 

 ============ 

■野生ライシア

種別:穀物

分類:野生食用植物

品質:★☆☆☆☆

食用:可

主な生息地:森林・湿地・水辺

保存性:普通

《説明》

 森林や湿地、小川の近くに自生する、米に似た異世界の野生穀物。

 細長い緑色の葉と細い茎を持ち、先端には小さな粒が並んだ穂をつける。熟すと穂が淡い黄金色に変化する。

 栽培されたライシアより粒が小さく、収穫量も少ない。青臭さがやや強く、普通に炊くと硬くぱさつきやすい。

 そのまま食べるにはあまり向いていないが、調理方法を工夫することで食用として十分利用できる。

 野生種ならではの生命力が強く、痩せた土地でも育つため、森の動物や魔獣の餌になることもある。

《料理人向け鑑定》

 下処理や浸水、調理方法を工夫すれば、食感と風味を改善できる可能性がある。

 ============


「……ライシア」


 私は思わず目を見開いた。

 名前は違う。

 けれど、この穂の形、この粒の並び――どう見てもお米にそっくりだ。


「お米……!」


 胸が大きく高鳴った。


 異世界に来てから、ずっと食べたかったもの。

 炊きたての白いご飯。湯気と一緒に立ち上る、ほんのり甘い香り。ふっくらとした粒を口に入れたときの、あの味。

 その記憶が一気によみがえってくる。


「まさか……こんなところで、お米に出会えるなんて……!」


 思わずライシアの穂を両手で包み込む。

 料理人の目で改めて眺めてみると、ますます興味が湧いてきた。

 粒は少し小さそうだけど、これを脱穀して、きれいにして……。水に浸して、火にかけたら――。


「炊いたら、どんな味になるんだろう……?」


 想像するだけで、胸がわくわくしてくる。

 もしかしたら、炊き込みご飯にもできるかもしれない。スープに入れてもいいし、柔らかく煮込めばお粥にもできそう。

 料理人として、知らない食材を見つけたときの胸の高鳴りは、何度経験しても特別だった。


「これ……絶対に美味しくしてみたい!」


 まだどんな味なのかも分からない。

 それでも、この小さな粒をどう料理すれば美味しくなるのか――考えただけで、わくわくしてくる。


「ふふっ……楽しみだなぁ」


 私は目を輝かせながら、ライシアの穂を見つめた。

 異世界で見つけた、小さなお米。

 それは私にとって、ただの新しい食材ではなかった。

 ――もう一度、お米を食べられるかもしれない。

 そう思うだけで、胸の奥までぽかぽかと温かくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。