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演者たち  作者: とも
4/5

第4話 美人な女性

「うん。君はこっちの方が似合っている!」


 声がうわずる若林。


「やっぱり」


それにしても。


「きれいだ」


それに、やっぱりアイツに似ている・・・


「若林君、これは一体何の真似だ?」


記憶の中にある。


「私を世界一のヒロインにしてくれる?」


いやな記憶だ。


カツラを取る謙信。


「もう、気が済んだだろうか?」


 カツラを若林に返却する。


「お前は今日から女な?」


「いや、何言って」


「女な?」


勝山は目を逸らす。若林は視界の端で勝山をとらえながら言う。


「君と初めて出会ったとき、感じた」


 若林は手に胸を置く。

 

「あのときめきを今もなお忘れることができずにいるよ」


 謙信は首を傾げた。


「でも、同時に違和感もあった。君が着ていたあの制服」


「あの、どうして君の制服は?」


 若林は振袖を握りしめる。


「スカートつまり、女子用の制服ではなかった。どうしてか~って考えていたら。まさか男だったなんて」


 勝山はスマホを取り出す。


「非常にがっかりだよ」


若林は後ろに手を組む。


「パンをいっぱい食べるっていうのも女の子で食いしん坊!ではなく、ただ単に食欲旺盛な男の子なんて」


 若林は人差し指を立てる。


「けれど、一つだけ。引っかかることがあったんだ。あの時君は髪がロングだった。なのに、どうして今はショートなのかな?そうだよ。そのせいで余計、君のことを女性と誤認してしまったんだ」


 勝山はスマホを構える。


「そのせいで君を」


 若林の言葉に口をはさむ勝山。


「似ている」


 若林は勝山に顔を向ける。


「おっと、誰かと思えばいつもクラスで浮いている勝山君じゃないか」


 勝山は白目をむく。


「いや、お前にだけは言われたくないな」


 若林は首を触る。


「そんな君が一体、オレたちに何の用があるのかな?」


 勝山は軽く息を吸う。


「謙信、コイツに見覚えはないか?」


 謙信にスマホの写真ホルダーを見せる。


「似ているね」


 謙信は少し笑った。


「知っているのか?」


 謙信は横に首を振った。


「なら、どうして」


「仲良くしろ!」


 若林は勝山の言葉を遮るように大声で言った。直後、勝山が硬直した。


「最初、それを言おうとしていたんじゃないのか?」


 謙信は勝山の方に向いていた体を若林に向きなおした。


「まあ、それはいい」


 若林は頭を掻いて勝山から視線を外した。


「とにかく、さっきの話の前に、これを」


 勝山は割って入る。


「これは衣装さ」


 若林は躊躇うことはなかった。


「衣装?」


「彼女、いや彼に必要な武器を与えたまでだ」


「強要だろう」


「それは謙信が判断することさ」


 謙信はその場に立ち尽くす。


「さあ、着るのだ!この」


「セーラー服に!」


いや、これはさすがに。謙信は無言で着替え始めた。そして。


「着たー」


「それでこ、大友謙信!」


勝山は思わず頭を抱えてしまった。


「これだ」


 いつもそうだ。


「じゃあ」


「ああ、このセーラー服は」


勝山は逃げるようにその部屋から出ると天井を見上げながら、真っ直ぐに走り始めた。


「やっと」


それに対し、若林はカーテンを閉めた。


「よし、うるさい子バエもいなくなったことだし、本題に入るとしよう」


椅子に腰かける。


「人を子バエ呼ばわりするなんて失礼ですよ」


 若林は謙信の社交辞令に答えない。


「まず、大友謙信!君には美人な女性になってもらおう!」


 謙信は首を横に振る。


「だから、それは・・・」


「わかった。それはもういい」


いいのかよ。謙信は片目を閉じた。


「ここからが、本題だ!」


 意図的に張り上げられたこの声に少しの不快感が付きまとう。若林は黒板にチョークで書き始める。


「大友謙信!」


 謙信は返事をする。


「君は演劇部に興味はあるかい?」


 謙信は咄嗟に手を後ろに組んだ。


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