第3話 正しさ
「先生、これは絶対におかしいです!」
勝山は先生に詰め寄る。
「そう、いわれても」
先生は目を逸らす。
「だって、そうでしょ?人を」
勝山は右手首を触る。
「ましてや父親を手にかけた男が自分のクラスになんて。動揺して当然なのに」
先生は両膝をつく。
「いいか、人には」
「それぞれ事情がある。謙信だって何かやむを得ない事情があったかもしれない」
今も先生はオレと目を合わせようとしない。
「あの事件には不可解な部分が多いんだ」
勝山はその場に正座する。
「あの事件について私も詳しくは知らない」
先生の掴む手が震えている。
「大友家は四人家族だった」
「先生?」
先生は瞳を揺らした。
「事件時刻、現場にいたのは父の正俊と母の清子。そして、息子である謙信。そう三人なんだ」
「なのに、四人家族」
「どういうことですか?」
「今いる、あの子は。そうだ、あの子はきっと」
すると、先生は平静を取りしたように振る舞った。
「きっと、謙信はやむを得ない事情があったんだ」
だから仕方ない、そう言いたげだった。
「どんな理由があろうと人殺しはいけないことだ!」
「確かに、勝山の言う通り・・」
「勝山の言う通り、どんな理由であれ人が人を殺めるなど許されることではない」
「でしょ?だったら・・・」
「だが、大友謙信はすでに罪を償っている」
勝山は目を見開く。
「罪をどうこう言う場はすでにないのだよ」
勝山は目を逸らす。
「ここで、大友を過度に刺激することこそ危険であると私は考える」
「少年法であれ何であれ、この場にいる以上仕方がない。彼は今この学校の三年三組のクラスの一員なのだ」
「オレは」
先生は勝山の目を見る。
「だが、賢い選択をする必要はない」
勝山は顔を上げる。
「お前が正しいと思うほうを選べ」
「けれど、さっき過度に刺激することこそ危険って」
「私は考える。私はだ!」
「私は自分の理想を貫くだけさ」
「なら、僕はどうしろと」
「お前の理想はなんだ?」
オレの理想。
「それは」
勝山は拳を握りしめる。
「正しさのため」
先生は表情を和らげる。
「なら、そのために動け」
自分の理想に。勝山は廊下を全力で駆け出した。
「押しつぶされるなよ」
その正しさに。先生は言葉をその場に置いていく。
「謙信はどこに」
前に、ただ前に。そして、勝山の視界に謙信の後ろ姿をとらえる。
「大友謙信!お前に話が・・・」
謙信はこちらを振り返った。やけにアイツと似ていた。
「オレのときめきを返せ!」
「やめて」
一体何が。追いかけた先で見た光景は謙信にカツラを被せる若林の姿だった。




