作戦決行
タケシは、草むらに隠してあった軍馬車に乗り、工房に向かった。バルザを呼び出し、作業予定を伝え、バルザを家の鍛冶場に来ないようにさせた。
黒馬車に乗り換え、町に向かう。
家では、オットーとエレナが食事の用意をしていた。昼までに部隊が着くなら多めに作らねばと、カツミが指示した。マシロが調理台の隅で見張りをしている。
座敷ではリゥトスとカツミ。
「オットーは、どうなるんでしょうか」
「そうだな、カツミさん。これは国家機密の漏洩だ。軽い罪ではないんだよ」
「でもオットーは脅されて......」
「あぁ。だが、情状酌量されても......ここに戻ることはない」
「そんな......何とか......」
「オットーは、元々国から派遣されている。余計にまずいんだ」
「アルネシアに連れて行くんですね」
「そうだ。まず収監して取り調べになるが」
あぁ。エレナが心配だ。私が支えてやらないと......
町に着いたタケシは噴水広場に出て、開店準備をしている隣の屋台に声を掛けた。
「どうしたタケシ、今日はカレーは休みかい」
「あぁ、カツミがちょっと体調崩してさ、2,3日休ませるよ」
「そうか、お大事にな」
その後テラの宿に行った。
事情を話すと、「分かった」とあっさり返すテラ。
わかってたんか?
タケシが一瞬そう思うと、
「そんなんじゃないわよ」
え?
「タケシ間違えないで、神だからって、全部分かるわけないんだから」
「でも、伝えてもらえて良かったわ。うん。こっちのことは任せて」
神様と俺らって......何やろ。
クニオは、神の子って言ったけど......
親は、子を守って.....導く...
ほな、子は何をする。
何が....できる......
タケシが家に帰って来ると、家の前には普通の荷馬車と馬が数頭停まっていた。
黒馬車を降り荷馬車を見る。
あ。やっぱりサス変えとる。
ぱっと見は分からなくしてあるが、立派に軍仕様に強化してある。
家に入ると5人の若者が車座に座っていた。商人風、行商風、農民っぽいのも。
いかつい連中をイメージしていたタケシがあっけにとられていると、
「帰ったか。打ち合わせするぞ」とリゥトス。
慌てて車座の中に入る。
「タケシ。明日仕掛ける。今日は今から、町の中を確認させて、ルートを決める」
「はい。テラに繋ぎました」
「うん。これで動きやすくなる。よし、行け」
ぱっと5人の若者は出ていった。
リゥトスが計画をざっとタケシに説明する。
「お前はどうする?タケシ」
「行きます」
「そうだな。ただし絶対に手を出すな。かえって邪魔になる。離れたところで様子を見るだけにしろ」
「わかりました」
リゥトスが大きなおにぎりを手に取った。
「タケシ旨いな、これ。力が湧くみたいだよ。何だいこのつぶつぶしたやつ、見たことない」
ガブリとかぶりつく。
「あーそれはウカミーの」
「あ。やっぱり。だよなー
いいなー。うらやましいよ」
ーーあぁ。これも親の...愛かもしれん。
と、タケシは思った。
その夜、入念に打ち合わせをすると、特殊部隊のメンバーは町へ散って行った。
「カツミさん、疲れてるだろ、早く寝なさい」
カツミはエレナを連れて寝室に行った。
タケシは座敷でオットー、リゥトスと川の字だ。
「オットー、早く寝ろ、その顔じゃ、明日動けん」
「はい。頑張ります」
「タケシもな。持たんぞ」
「リゥトスは、元気だな」
「私か?まぁ昼寝したからな」
「いつの間に......」
「こういうのも能力のうちさ」
Zzzzzz…
朝。
タケシはいつもより早く目が覚めた。
そっと起き出し水を飲む。
気が張って熟睡はしていないが、横になっていた分楽になった。
しばらくするとカツミ達が起きて朝食の準備を始めた。
座敷に戻るともう2人も起きていた。
食事が済むと、リゥトスはオットーと最後の打ち合わせだ。
オットーは買い出しのフリをして町に出る。通る道も決まっている。比較的人の少ない道を選んだ。
「とにかく君はこれを付けて、いつものように買い物をしていればいい」
と黄色い魔石をオットーに渡す。オットーはそれを胸ポケットに入れた。
「けしてキョロキョロするなよ。店の奥にははいらないこと。いいな」
「わかりました」
リゥトスはオットーの耳元で囁いた。
「嫁さんに、何か買ってやれ。最後になる」
「......はい。そうします」
パサッ。ホーホーがリゥトスの肩に止まった。
「よし、向こうも配置についたようだ。行くぞ」
エレナが走ってきてオットーに抱きつく。
「あなた、頑張って」
「あぁ」オットーがエレナを抱きしめた。
荷馬車にオットー。タケシとリゥトスは馬だ。
カツミは、また泣き崩れたエレナを抱えて見送った。
町の手前で別れる。オットーは、町中に入ると荷馬車を置いて歩き始めた。
タケシ達は、それぞれ離れた場所から付いていく。
決められている道を、ゆっくり歩いている。途中でアクセサリーを買ったようだ。
しばらく歩くと、オットーが立ち止まった。
すぐ後ろに立つ男。
オットーがゆっくり振り向いて、髪を触った。
ーー
一瞬だった。
2人の隊員が、捕らえられた男を縛って猿ぐつわをかけていると、離れたところに走る影。すぐに近くの隊員が追いかけるが......あ。男が転んだ。
捕まえた。
タケシはその時、通りの向こうに、見慣れたパーカーが行くのが見えた気がした。
捕らえた男達は、そのまま隊員達によって護送されたそうだ。
タケシたちは一旦戻る。
「よくやった、オットー」
リゥトスはオットーの頭をガシガシ揺する。
「あの、これをエレナに」
小さな包みを差し出すオットー。
「自分で渡せ。それよりあの魔石だ」
「これは私が預かる。大した石じゃなかったみたいだ。うちの魔道士に言わせるとクズ石だってさ」
帰りながらタケシは考えた。
もう町は普段通りだ。
さっき捕物があったというのに。
あれは.......クニオやった。
あのタイミング......転ばせた?
だけど、それにしても.......
だれも大して騒ぎもしないで.......
他人事だから?
いや、違う。
そうか.......
守られているのが、普通になってるんや。
ーーつまり平和ボケだ。
良くない。
このままではあかん。
家に戻ってオットーをエレナに会わせると、リゥトスはすぐにオットーを連れてアルネシアヘ発った。
最後にタケシに言った。
「タケシ。これで終わりじゃない。気を付けろ。
何かあったらすぐに知らせろ」
「あぁ分かった、そっちの状況も知らせてくれると......」
「言えんこともあるがな。また手紙を書くさ」
「そうしてくれ」




