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新商品と神の誕生


シュートが帰った後の近藤家。

テーブルを囲む4人。

「何がええかな、スープの名前」

「んー」

「ボン?ククレ?」

「何ですか?それ」

「タケシ、うちらにしかそのボケ通用せん」

「すぐできるスープ」「却下」

「とりあえずスープ」「雑」

「水で炊いたらすぐ食えるスープ」「長すぎ」

「スープの素」「短すぎ」

「あんたら真面目に考えて」とタケシとクルトーを指さすカツミ。

「ちょっと。バルザも考えて」

「んー。旅人用ですよね」

「旅の友」「なんか惜しい」

「旅ガラス」「カースケかい」

「んー。たーびー」「あかん」

「もー。センス無さすぎや。バルザはないの?」

「そうですねー。ノマドなんてどうですか」

「なんて?」

「ノマド。旅人みたいな意味だったと」

「あーバルザちゃーん。よくやった」

カツミは思わずバルザ抱きついた。

赤くなるバルザ。

「旅スープ 〈ノマド〉これ、良くない?」

カツミは紙に大きく書いた。

「あぁええなぁ、世界が広がる感じ」

「そうですね、ノマド、いいです」

「じゃあ決定。バルザ、ご褒美にもういっちょ」

「は?」

「店の名前も欲しい。なんか地に足ついた感じの」

「そうですねー」

みんなでバルザをガン見。

「あ、クレスなんてどうですか?根を張るみたいな」

「クレス」

「クレス」

「クレスの旅スープ〈ノマド〉」

この日珍しく祝杯を上げた4人だった。



翌朝から忙しくなった。

シュートに渡すスープを計量し直して作っていく。

カップはタケシがオモジイの店へ走った。

商品名のカードを作って、カップとスープをセットして紐で結わえた。

店の看板も作り替えた。

目処が立ったのでタケシとバルザは馬車仕事へ。

カツミはクルトーと、干し野菜やハーブ作り。

結局夕飯は、残ったノマドで済ますことになった。


翌日。

新しい看板を立て、店にノマドとハーブティーを並べた。

ハーブティーは、女神連からリラックス効果が高いと言われたものを選んだ。少しづつ増やしていくつもりだ。

効能も書き、リボンで結わえて可愛らしく仕立てた。2個で1エニだ。

ノマドも、今ある分だけだから5個だけだが、説明文を添えて置いた。ノマドは1個3エニ。少し高め設定。まとめ買いで安くする。とりあえず今日はまず見せる。そこからだ。

シュートが出発前に、取りに来た。値段を見て、10個でいくら?と聞くので、25かなと答えると、指でOKサインをくれた。

店に来るお客さんは、興味は示すがまだ手に取らない。

でも。

いける。勝負はここからや。

そんな予感がする。



カツミが頑張っている裏で、実はタケシの方も進んでいた。

毎週ドワーフ工房に通っていたバルザは、暇を見つけては、自分達が乗ってきた荷馬車を改造していたのだが、ついに板バネのサスを作ることになり、工房で試作してはタケシのチェックを受けながら荷馬車で試すようになっていた。

「いや、まだまだやけどな」

と、タケシは笑う。

折れた金属片を、指で撫でながら言った。

「考える力がな、ついてきたみたいやな」



それから1か月。

店に、2種類のノマドと、3種類のハーブティーが並ぶようになり、買う人が増えてきた。ハーブティーは、ティーバッグ方式が良かった。クルトーが付けた小さなクッキーも評判がいい。

ノマドもまだ開発中。クルトーもこっそり自分の味を試作しているので、カツミは黙って様子を見ている。

カツミは冒険者ギルドにもサンプルを持ち込んでいた。案の定冒険者達は食いついた。

行商らしき人が買っていくこともある。まとめ買いするからすぐ分かる。シュートだな。


みんなが忙しく働いていた時、ひょっこりと、思わぬ人が店に現れた。

アルネア王国国王。

カイル=アウレリウス=アルネア=セレスティア5世だ。

国王とは思えないラフな格好で、クレスカレー店の前に立って言った。

「辛口をダブルで」

あれ?どっかで聞いた声やけど。

「はい。辛口ダブルー」

と言いながらお客の顔を見たクルトーは、持っていた皿をガチャンと落とした。

「どうもすみません」

と駆け寄ったカツミも固まる。

目の前のカイルは口に指を一本立てて笑っている。

さらに後ろから

「私も辛口ダブルで」

と言ったのはカイエンタイのリゥトスだ。

「なんなのよ」と言いながらカレーを出すと、嬉しそうに2人でベンチに座って食べだした。

「王様ですよね」小声で聞くクルトー。

「だよね」とカツミ。

食べ終わると2人は「またあとで来るねー」と手を振ってどこかへ消えた。


店を片付け、タケシ達と合流して、さて帰ろうかと言う時に、また2人が、今後は馬に乗って現れた。

「帰るんでしょ、ついて行くよ」

タケシとカツミは顔を見合わせたが、諦めた。

「はい。どうぞ」



家に帰ると、カイルとリゥトスは、早速黒馬車を見ながらタケシと話し出した。

カツミは、キッチンカーの後片付けをクルトーに任せて家に入り、ざっと片付けてお茶の支度をする。

しばらくするとみんな家に入ってきたので、ハーブティーを入れてカイルとリゥトスの前に置いた。

「で、今日はどうされたんですか、突然」カツミはカイルをキッと見る。

「いやー。カツミさんのカレーが食べたくてさー。来ちゃった」

「来ちゃったって......」

「一応視察の名目で。貴族をまくのが大変だった。

でも来てよかった。ホント美味しかった。まだ残ってる?」

「はい、少し」

「良かったー」

横でニヤニヤしているリゥトスの肩に、ふわりとフクロウが止まった。

「あれ?その子は」

「あぁ、これはホーホーです。父の鳥でした」

「え、じゃぁリョーマさんは」

「先日亡くなりました。テラ様にご報告に伺ったのですが、やはりご存じでした」

「そう......なんだ」

「リョーマは本当は国葬レベルの人なんだけど......本人のたっての希望でね、静かな密葬になったんだ」

「父は最後までテラ様......あなたがたの神の、子だった。

なので私も、教会を離れる事を決めてテラ様に入信をお願いに行ったのですが......

断られました」

「......」

「テラ様は、力は貸せるが入信などという類いの神ではないと仰られて、それで私、決めました。父を神にしようと」

「は?」

「今後、カイエンタイは、神リョーマの元に結束し、アルネア王国の発展に尽くします。な、カイル。いいよな」

「お前、本当にリョーマさんに似て来たな。

ああ、頑張ってくれ」

うわー。ついに坂本龍馬神になったー。

「で、ここからが本題だ」

真面目な顔をして言ったカイルが、チラッとバルザとクルトーを見た。

カツミが振り向いて頷くと、2人は深く礼をして、すっと下がっていった。



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