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天罰は真っ黄色


クルトーが一通りの作業を覚えて、またカツミは噴水広場のカレー屋を始めた。

クルトーは接客は初めてだが、一生懸命ついてくる。

「カツミちゃん、店員雇うたん?」

「可愛い兄ちゃんおるやん、紹介して」

そのたびにドギマギして、何やら皿をひっくり返したりしてドジを踏む。

で、みんなで笑う。



朝の仕込み。

カツミは、鍋の中をゆっくりとかき混ぜた。

ぐつぐつと煮える音と、スパイスの香り。

「なぁ、クルトー」

「はい」

「レシピ通り作るだけやったらな、誰でもできるねんで」

クルトーが少しだけ顔を上げる。

「これは私のカレーや、クルトーが作っても」

木べらで具をすくい上げる。

一口味見して、少しだけ塩を足す。

クルトーは黙って鍋を見つめていた。

カツミはニヤッと笑った。


それからクルトーは、休みの日には小屋の台所に籠もることが増えた。


家の畑のハーブたちが元気すぎる。クルトーが来てから畑仕事がはかどったからだ。

青々とした茂みを見ながら、カツミはポン♪と手を打った。

そうやー。

と、鎌を持ってきてガシガシ刈り取って、納屋の天井に吊るした。

「よしよし」

と納得していると

タケシが来た。

「わっ、何してんねん」

「ん?ちょっと天井貸して」

「ええけど、こんなようけ何するねん」

「ま、ぼちぼちと」

「はぁ?」



タケシの方はと言うと、バルザを連れて、以前と同じように修理仕事をこなしていた。

バルザは城で馬車の整備をしていたので、大概のことはすぐできるが、やはりタケシの小さなこだわりに驚いていた。

なぜここに金具を入れるのか、なぜこの形なのか。

細かいことを、仕事が済んで帰ってきてから教えて、翌日は納屋で次の仕事の段取りをする。

「時間かかるわー」とタケシはぼやく。

「でもあいつ、この頃休みはいつもドワーフ工房に行ってるねん」

「そうなん」

「ああ。そのうち自分で部品作れるようになるやろ」

「師匠を超える!」

「アホか、そう簡単やないわ。

理論がな、この時代じゃついてこれん。俺はそっちが先やから楽やったけど、ないとこからやからな。俺の真似だけでは意味ないやん」

「あー。それな。クルトーも一緒や」

「考えさすのが難しいんやなー」

「時間かけよ。な」

「そやな」



そうこうしているうちに、2カ月が経った。

いつものように、みんなで噴水広場まで出て、タケシとバルザは修理仕事に向かった。


昼過ぎ、カレーが半分くらいになり、ちょっと手が空いた時、噴水広場に1人の男が現れた。

やなかんじ。

ぐるっと見回して、こっちに向かって歩いてきた。

うわっ。人相わるっ。来るなー。

なんて思うやつほどちゃんと来る。

ドン!とキッチンカーに手をついた。

「姉ちゃん、ワシ、こないだここのカレー食うて、腹壊してなぁ、えらいこっちゃってん。

どないしてくれる。仕事も休んだしのー」

またドン!

あー。この手合かー。

わらわらと遠巻きに人が集まりだした。

金握らすのが手っ取り早いが、絶対にしたくない。

だって、嘘やし。

カツミには自信があった。

クルトーが来てから、カツミはできる限り衛生管理に気を配った。

衛生なんて概念のない世界、露店の串焼きで命を落とす人だっているのだ。

クルトーに教えて、城に持ち込むのが一番いいと考えたのだ。

調理用の道具は肉用と野菜用を分け、使ったらしっかり洗って熱湯消毒し、必ず乾燥させる。

食器も全部熱湯消毒している。

土のついた野菜は、一旦井戸で洗って台所に持ち込む。

カレーはよく混ぜながら煮込む。残っても持ち越さないし、店で売るのも当日に作ったものだけだ。

作業ごとに片付け、清掃、手をよく洗い、次の作業。

仕事終わりの調理台は強い蒸留酒で拭き上げる。

この世界で、できうること。

それをクルトーと一つ一つ進めたのだ。

だから、こんな奴には負けたくない。

ドン!今度は蹴られた。

「なぁ姉ちゃん、どないすんの」

ぐっと男を睨んだが、ニヤニヤと不敵な笑みを返してくる。

ヒソヒソと群衆の声。

後ろから、もう1人男が来た。

「おーい、ここのカレーで腹壊したんやてー」

グルだ。

クソっ。

「カツミちゃーん カレー大盛りでー」

あっ、この能天気な声。クニオや。

「兄ちゃん、ここのカレー食うたら腹壊すで」

「君ら、誰?僕のこと知らんの?

カツミちゃん、腹減ってん。はよして」

と言いながらクニオはお金と一緒にコロンと何かを置いた。

「おおきに」

サッと手元に起き、カレーを渡すと、クニオはウインクして去っていった。

「姉ちゃんよぉ」

カツミは男の目の前に、クニオの置いていったそれを差し出した。

「お詫びです。飴です」わざと小さな声で言ってみる。

「何やねん、こんなもんで済むわけ無いやろ」

男は飴をポイと口に放り込んだ。

よし!かかった!

「こんな姉ちゃんチョロいもんや」

あれ?と首を傾げる男。

「なんぼ巻き上げたろ、100、いや200か」

え?と口を押さえる男がキョロキョロと周りを見回す。

何やあれ?いちゃもんつけてるだけちゃうか。群衆がざわつきはじめた。

「食うてもないのに腹壊すわけないわな、おっさん」

カツミは、カレーのレードルを手に持ち、目一杯すくう。

「おい、どないするんや」

慌てる二人組めがけて、

「とっとと帰れ、ボケナス!」思いっきりカレーをぶっかけた。

逃げ出す二人組。

周りから拍手が巻き起こる。

「よっ!カレーぶっかけ姉ちゃん!」

やめてくれー。

またやってしもた。

カツミの後ろで、クルトーがパチパチ拍手をしていた。

「師匠、すごいです。僕一生ついていきます」


クニオが戻ってきた。

「ごちそうさん」と皿を置く。

「さっきはありがとう、助かったわ、本音飴」

「あいつらすぐ捕まるわ。カレー臭プンプンやし。

まぁ良かったやん、カレーぶっかけ姉ちゃん」

クソっあんたもかけたろか。


後で聞いた話では、奴らはアルナから来たらしい。向こうの組織が解体して、あちこちで悪さをしながらミナセに来た。余罪が多すぎるので、アルナに護送したという。

ミナセは神の住む町。

ほどほどにしないと天罰が下るのだ。












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