2人の家
家の前にいたのは、2人の神。
「やっと帰ってきよった、もう帰ろかとおもたぞ」と言ったのはヒサシ。
「お前せっかちやのぉ。
ウカミーから聞いたんじゃ。タケシとカツミやな」とタオキ。
「明日からかかるからな。今日はもう帰る」とヒサシ。
「またお前、ウカミーと一杯やるつもりやろ。
悪いな、明日の朝来るな」とタオキ。
2人はサッサと帰っていった。
「なんやったん?」
「たぶんウカミーの呼んだ神様やな」
「明日来るって」
「家やな。まずそこからみたいやな」
「家どんなんにするか考えな」
「あぁ、せわし」
夕飯をみんなで食べて、バルザとクルトーはウカミーの離れに帰っていった。
翌朝。
バルザとクルトーの馬車の荷台に乗って、2人の神様はやって来た。
「で、図面はあるんか」とヒサシ。
いやいや昨日の今日やんか。
あ、酒臭い。
「無理言うたるな。どんな感じがエエか、まず聞こか」とタオキ。
タケシが2人に、昨日の夜考えた家のイメージを伝えた。
「わかった。ほなワシからやな。ヒサシは段取り組んどいて」と、タオキは周囲を見回した。
「そやなぁ。ここでええか」
雑草の繁った一角を指し、タケシを見る。
「はい」
「んで、こっち向きでな......」
聞きながらタケシは頷いている。
「お願いします」と礼をした。
「あの、カツミさん」
遠巻きに、カツミと並んで見ていたバルザが小さな声で言った。
「あの方たちは?」
「神様」
「神様ですか」
「うん。昨日もいっぱい会って来たやろ」
「はい。でも普通のおじいさんですよね」
「まあ見とき」
タオキは両手を広げると、何やら天を仰ぎながらつぶやきーー
「パーン」
手を打つと、眩しい光が広がった。
その後には綺麗に四角く整地された土地。
「よっしゃ。男手が3人もおるからな、早いぞ。おい、こっちに来い」
とカツミの方に手招きするので、カツミは、バルザとクルトーの尻をポンと叩いた。
「行っといで」
気がつくと、ヒサシの横には大量の材木が。
2人の神と3人の男は一斉に動き出した。
しばらく様子を見ていたカツミは、台所に戻った。
「こりゃめっちゃお腹減るやつや」
ミント水を準備し、昼ご飯の段取りを始めた。
「お水、置いとくから飲んでねー」
声をかけると、ヒサシがやってきてグビグビ飲んだ。
「あーええなぁ。さっぱりするなぁー」と、そのまま座り込む。
いや、酒の飲みすぎちゃうん?
タオキも来た。
「ワシにもちょうだい」
2人は座って作業を見ている。
「あの、大丈夫なんですか?」
「あぁ、ちゃんと指示しとるし、出来るようにもしてあるから」
「自分でやりたいってタケシが言い出したからな」
「ええこっちゃ。まあこっちは見といたるから、飯作ったれ」
材木はタオキが加工済みらしい。
「ログハウスみたいなもんや、組んでいけば大概できる」
大きな木は持てる重さにしてあるらしい。
たまに誰かが聞きに来るが、神様たちは手を出さない。
昼に大量のおにぎりを食べて、また作業。
夕方には骨格が仕上がっていた。
「ほなまた明日な」
帰っていく神様たちに、カツミは出来立てのロックバードの唐揚げを渡した。
「おー。今夜も宴会じゃー」
「寝かせてくれー」
3日程で外回りは完成し、それからは中の作業。
カツミは時々クルトーを連れて買い出しに行き、食事作りに明け暮れた。
そして7日目ーー
タケシが玄関脇の柱に、コンコンと板を打ち付けた。
「近藤 武史 香津美」
表札だ。
この世界に表札の文化はない。でもタケシが出したいと言ったのだ。
2人の家が出来た。
その後みんなでウカミーのところに行くと、
「おぉ、よかったのー。
まぁ、はよ建ててくれんと、ワシもあいつらの相手がな」
毎晩タオキと呑んでいたらしく、少々呑み疲れたと笑った。
お礼を言って、離れを引き払う。
家に戻って、小屋から家へ引っ越しして、小屋にはバルザとクルトーが入った。
家の台所は広くとった。カツミのカレー屋のベースだ。かまども増やし、保管庫も作り、広い調理台と水道。
水道は、オモジイにちょっと手伝ってもらって、元々の井戸から引き込めるようにした。
魔道士のいないこの町では、オモジイが頼りなのだ。
お礼に、カレー回数券10枚綴りを渡すと、「やっす」と言うので大盛りにすることで納得させた。
噴水広場の区画は確保してあったが、慣れないクルトーを連れての営業はまだ早い。
クルトーは料理の基礎知識はあるし、実際腕も悪くない。
カレーはレシピを教えて、火加減やポイントを教えればすぐに作れるようになった。
でもーーカツミは思う。
それだけなら意味は無いと。




