誓い
私の名はナタシア・リーナ。しがない魔法使いである。
私は幼い頃、物心がつく前に両親を殺されていて居ない。
誰に殺されたのかは分からなかった。だが殺されたことだけは感覚で分かった。
幼い私は、物心が付くときには魔女の村、リアルタ村のただの孤児だった。
リアルタ村は魔女族と呼ばれるただ魔力の高い女性が多いだけのただの村だった。
私は食べ物は無く、ゴミを漁って食べるか、木の実や森の幸を食べるか店の食べ物を盗んだりして辛うじて生きていた。冬は寒く、ゴミの中に埋もれていた布を搔き集め、毛布の代わりとして包まっていた。
もちろん村の人間はこんな汚い小娘が居座られ、万引きを繰り返すと嫌われるだろう。
私は毛布で包まっていると、たった一人の女性に声をかけられた。
「おうちが無いのかい?私についておいで」
私は言葉もあまり分からなかったが、直感でその女性についていった。だがたった一つ分かることはその人の話し方、と表情がなんだか暖かかったという事。
その女性は暖かいスープを作って私にふるまってくれた。
そのスープは私が今まで食べてきたものの中で一番おいしく、一番暖かかった。
私は「おいしい…」そう言って泣き崩れていた。
そのあとは、何かに安心したのか眠りについてしまっていた。
目が覚めると、そこはふかふかのベッドの上だった。
そう、彼女が私をこのベッドまで運んでくれたそうだ。
私はいきなりの幸せで気持ちがいっぱいになった。
「あんたは見た感じ5歳くらいか…。今日からあんたは私の家に住んでいいわよ。私が引き取ってあげる」
そういって彼女は私を引き取ってくれた。
「ここに?」
「そうここに!今日からあんたは私の娘として生きなさい!
私の名前はナタシア・クリスよろしくね!あなたの名前は?」
「私の名前…? 私の名前無い…」
そう私には名前が無かった。生まれて物心がつくとすでに親の顔も知らず、人権すらない孤児だったのだから。
「そう、じゃあ貴方は…そうね~…あんたは私の義理の娘とは言え娘だから、ナタシア・リーナ!
これからあんたはナタシア・リーナという名前で生きなさい!」
「ナタシア・リーナ!私の名前!」
「そして私の事は、お母さんって呼んでね!」
「分かった!お母さん!」
「そうそう!いい子ね!」
彼女の言う通り、私はこの人の娘として生きた。
お母さんは勉学と魔法がとてもできた。
だから私はお母さんのもとで勉学を学び言葉を理解していった。更に魔法も教えてもらい、魔法の練習も毎日のように付き合ってくれた。失敗した時も、成功した時もお母さんは一緒に笑ってくれる。私にとって本当の家族で本物のお母さんだった。
ある日私は気になったことをお母さんに尋ねた。
「お母さん、私の本当の両親はなぜいないんだろう?」
するとお母さんは少し間をあけて言った。
「わからない…でもあんたの本当の両親はきっととてもいい人だよ!だってこんなに良くかわいい娘なんだもの!絶対にいい人よ。もう少しあんたが成長したら一緒に探しに行くかい?」
私はその返答に少し悩んだ。旅に出たい気持ちはあったが、私は今の現状がとても幸せだったからである。
「会いたいけど別にいいや!私はここでお母さんと一緒に暮らしていくだけでも幸せだもん!」
「もう!恥ずかしいこと言ってくれるじゃないか!」
そういってお母さんは私の事をぎゅっと抱きしめてくれた。
だがその私を抱いた腕は少し震えていた。私には基本見せないがお母さんはたまに悲しそうで寂しそうな表情をする。それは今もそうだった。それはなぜなのか分からなった。
私は外心では本当の両親に会いたいと思っていても内心では本当にどうでも良かった。私を孤児にして放っていた両親には興味が無かった。それに見たことも無い人に今更あっても気まずいであろうからである。
そして私も成長し、14歳の時にはお母さんが経営している薬師の仕事も学び、手伝うようになっていた。
2年後私はいつの間にか、そのお店を私が引き継いでいた。
お母さんは腰を痛めて薬師の仕事を続けられなくなったからである。だが、お母さんの知識はいつも豊富で実質引退といって過言ではない状態でも現役のように手伝ってくれた。
1年後のある日私は普通に店の仕事をしていた。そんなある日だった。その日に悲劇は始まった。
「この村の連中がグラデリア王国の貴族、クシャル・ルーズベルト様を殺害した容疑が掛けられた!」
そんな大声で村の入り口兵士の集団が集まって話していた。
その様子を見た村人の一人がその集団に話しかけた。
「そんな…ご冥福をお祈りします。ではこの村には調査か何かで尋ねられたのですか?」
すると兵士はも剣をその村人に突き刺して言った
「勿論、この村の関係者が起こした問題だ。その者もろとも責任はこの村の全員の命を持って償わせる!」
そういって兵士たちは次々に、村の連中を襲い、殺害していった。
私は恐怖した。とても怖くて飛び出す気も出なかった。
私は逃げ出して、家に帰ってお母さんと逃げようとした。
…だが家にはお母さんの姿は無かった。
「ぐわああああああ!!」
私は外に居た兵士たちの声が聞こえ、外の様子を伺った。
するとそこには村の武器を持った大人の男性を前衛に後方で魔法を使って戦っている村人たちが見えた。そこにはお母さんの姿も見えた。
「この村の関係者が問題を起こしたと言っても私たちには関係ないでしょう!」
お母さんはそう言って村の女性陣と息を合わせて魔法を兵士の方へ放った。
するとその兵士の中にいた一人の騎士がその魔法に向かって剣で斬りつけた。
斬りつけた魔法は無効化され、前衛の村人たちは殺され、後衛の女性陣は絶望して逃げ出そうとしたときには国の暗殺部隊が取り囲んでおり、次々にナイフで刺していった。そこには目の前で腹部にナイフを刺されるお母さんの姿があった。
「お母さん!」
そういって私は飛び出してしまった。
「リーナ…逃げなさい…あんただけでもッ…!」
お母さんはそう言うが、私には耐えられなかった。
暗殺部隊の人間は瀕死に生き残っていたお母さんの状態を見て、トドメを刺そうとした瞬間、私は怒りに身を任せて魔法をその暗殺部隊に放った。
「ウィンドデストラクションッ!!!!!」
お母さんと一緒に初めて学んだ風の魔法だ。怒りによって暴走した魔力による魔法だったので、辺りにいる、兵士たちと暗殺部隊を巻き込んですごく遠くまで風で吹っ飛ばした。
そして、私はお母さんのもとに駆け寄った。
「お母さん待ってね!今、止血してあげる!そして一緒に逃げよう!!!!」
「リーナ…私はもうだめよ…あなただけでも逃げなさい…!」
「嫌だよ!何言ってるの!お母さん!」
「私は…あなたに謝らないといけないことがあるの…」
「ダメだよお母さん!そんな無理しちゃ!」
「伝えないといけないことがあるの…」
そういって母は土の壁を魔法でふたりの周りを囲んだ。
「私はね…あんたの両親を殺したの…。」
その言葉を聞いても、私は違和感は無かった。薄々感じていたのだった。お母さんの表情といい態度といい、私は気づいていた。だからこそんな真実を聞かされてもなんとも思わなかった。
「私は元々ただの冒険者だったの。そこで私には好きな人ができたの。
その人と結婚して夫婦になっても一緒に旅を続けていたわ。そんな中、私たちはあんたの両親に出会ったの…。あんたの両親は旅先で知り合い、母はとても穏やかで、父は天然で面白い方々だったわ…。私たちはそんな夫婦と仲良くなり、お互いの夫婦同士でよく出かけたものだった…。
だがある日、私たちはグラデリア王国、王都で買い物を楽しんでいた。しかし、一人の傷だらけの少女が裏道に入っていくのが見えた。その少女を追いかけてあんたの両親は裏道に入った。しかしその少女はにっこり笑い、あんたの両親を見たことのない奇妙なナイフで刺した。その瞬間、人が変わったように、私たち夫婦を殺しにかかった。そう、それはまるで魔物のアンデットだったわ…。そしてあんたの両親を元に戻そうとして戦って、私の夫は戦いに負けて死んだ。
そして生き残った私は、出来ることが分からずパニックになり、あんたの両親に氷の魔法を使って、行動不能にした。私は何度も謝りながら、私の持っていたナイフであんたの両親に刺した…。最後にあんたの母は意識を少しだけ取り戻して私に言ったわ。『私の…を…私の娘をお願い!』そう言い残して死んでいったの。そこで私はこの両親には娘がいることが分かり、その両親の家に言ったがあんたは居なかった。だがあんたの似顔絵が飾ってあったのを見て、私はあんたを探し回った…」
「すると私がこの村に居た…」
「そう…この村にはあんたがいた。そして私は元々子供が欲しかった。だから私はあんたに、お母さんと呼ばせてしまっていた…ほんとあんたの両親には顔向けできないわ…」
ナタシアは泣き崩れながお母さんに言った。
「ナタシア・クリスとは…私にとってッ!家族であり、本当の母には間違いは無かったッ!」
「そう…ありがとう…その言葉を…聞いて少し報われたわ…本当にありがとう…………」
そういって最後の涙を流し、ナタシア・クリス…もとい私の本当の母は息を引き取った。
母が掛けた土の壁の魔法は解け、ボロボロと崩れる。
私の周りには兵士たちが取り囲んでいた。
私はもう一度風の魔法を使って周りの兵士たちを一斉に吹っ飛ばして、私はすぐに逃げた。
だが追ってきたのはたった一人の騎士だった。
そう…その騎士が私の魔力を奪ったマリアナという騎士だ。
私から魔力を奪い、すぐにあの村から去っていったのだ。
私は拘束が解ける頃には私は幼体化し終え、冷静に物事を捉えてこれからの方針を考え、家にあったお金と最低限の荷物を持ち旅に出た。
もちろん幼体化しているので魔物にも襲われやすく隠れながら過ごしいろんな村に行った。
移動が大変なので依頼を冒険者ギルドに提出して、そして魔力を取り戻して復讐をする為に王都に向かうことにした。
いろんな人に出会い、私は村からほとんど出たことが無く、話しか聞いたことが無い世間知らずの人間だった。だから簡単に騙され、物品は盗まれたり、襲われそうになったこともあった。私はそんな中で逃がれて、身を隠しながら野宿などをしてやっと王都についた。
初めての都会に最初は少し、期待を膨らませていた。だが理想と現実は違った。
獣人やエルフ、人の形をした者たちを亜人と差別し、兵士がストレス発散だと言い、無慈悲に殺して、殺した死体を運んでいたこともあった。
彼らも同じ人類だというのに…
そしてその街の裏の住民から盗み聞きした噂では『この国の王や人間は基本的には無慈悲で残酷で人間至上主義を騎士の間で掲げている』と聞いた。
私は騙されやすかったのでその話を聞いて最初は疑ったが、この国の騎士がやっていることを見れば嘘ではないのだろうという確信はあった。
私は魔力もないし、戦えないし、この姿だと舐められて襲われそうになるしでこれからどうやって戦おうと悩んだ結果、騙しやすそうなやつに護衛を頼んで目的が完了すれば逃げてやろうと考えていた。
そう考えながら街の中を歩いているといきなり街の中で魔物が現れ、私は逃げようとした。
だが、足をつまずかせ「もうだめだ!」と思い絶望した時、”直幸”という存在が私の事を助けてくれた。
その直幸はあの凶暴な魔物を相手に恐怖に負けずに戦っていた姿を見て、冒険者か何かの職の人かなと感じた。盾くらいには役立ちそうだと考えた私は直幸を利用しようとした。
怪我をして、教会に運ばれたという噂を信じて、教会の近くで直幸が出てくるのを待っていた。
そしてなんとか直幸には依頼を了承してもらい、魔力を取り戻す算段を考え、奴の屋敷にまで乗り込んだ。
会ったばかりの直幸は私の話を本気で信じて、私を本気で守り、助けようとした。
その時私はなんて愚かな人間なのだろうと、差別されて当たり前だと考えた。
私はその時に天に誓った。この魔力は復讐の為ではなく、守りたいものを守るために使うと…
私は直幸に守られるべき存在じゃない。
私は直幸を守る存在になろうと誓ったのだった…。




