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不思議な少女

 眠りから覚め、教会内の人たちに礼を言い、教会を出た。

 だが転生してからバタバタしていたせいか無一文でのただの浮浪者な現状は変わっていない。

 さてこれからどうしようか。

 さすがにマリアナさんに頼ることもできないし、さらにあの人は貴族なので関わっているとそこらの住民に何を言われるか分からない。


「あ!いた!そこの兄ちゃん!」


 声の先には黒のローブを着た青い髪で長髪の小さな女の子が立っていた。その女の子は昨日魔物の襲撃から助けた女の子だった。


「昨日は魔物から助けてくれてありがとう!」

「ああ!昨日の!」

「いや~昨日は助かったよぉ~。魔法が使えないから私あのままだと殺されていたよ~。怪我は教会で治してもらった感じ?大丈夫?」

「魔法が使えないのか?」

「そう!すこし事情があってね、魔法が使えないんだ」


 それはそうと、こいつはいったい何者なんだ?喋り方といい、立ち振る舞いが子供じゃないぞ?


「あんた今失礼なこと考えてるでしょ」

「いや考えていないぞ?ただ幼女と会話しているとなんとなく捕まる予感がしてだな...」

「幼女…だと…?」


 ん?なんだ?流れが変わったぞ?

 女の子は急に表情が固まりその直後に直幸にキレ始めた。


「キサマァ!私のこと幼女って呼んだなぁ?!」


 女の子は直幸をポカポカと叩き始めた。

 そんな光景を見ていた周りの通行人は俺の方を見るなり見てはいけないものを見つけてしまったような顔を視線をそらして俺たちの方を避けていた。


「やめろ!悪かったすまない!だから騒ぎを起こすんじゃァない!」

「分かればいいのさ!」


 どうやら落ち着いてくれたようだ。


「私は魔法使いのナタシア。魔法使いと名乗っているが、訳あって今は魔法が使えないけれども魔法使いよ」

「ほう?つまり魔法が使えなく、杖を鈍器と勘違いしてビシバシ殴っていく脳筋系魔法使いかなるほどなるほど」

「んなわけあるかい!!私はか弱い女の子の魔法使いよ!」


 関西弁のいいノリツッコミだ。


「か弱いって言ってる奴ほどパワー系なんだよ! 俺は斎藤直幸。で、俺に何か用かよ」

「ああ、そうそう昨日助けてもらっておいてなんだけども少し手伝ってくれない?少し男手が必要なの」

「ああ、まぁいいが何をするんだ?」

「私の護衛」

「ああゴエイ」

「そう護衛」


-は?


 何やら事情があるのか小声で直幸に言った。


「さっき言った通り事情があって魔法が使えないの。つまり私の唯一の仕事道具がとられて食っていけない状態なわけで、原因は魔力を奪われていてね。  

で、その奪われた魔力はこの国のとある貴族が保管しているそうだ。それを取り返したいんだ。報酬は弾むから手伝ってくれないかな?」

「手伝っていいが何故俺なんだ?俺は見ての通り丸腰だぜ?他にももっと頼れそうなやつらはいくらでもいるだろ?」


 直幸はやることもないしこれからもずっと浮浪者でいるわけにもいかないので無意識に護衛の任務を了承してしまった。


「なに、あんたほど馬鹿正直な人間はこの街ではあんただけだからね。

 なんせ貴族と関わることさえ禁止されてる街で礼がしたいからと言って貴族様と会話ができるのはあんたぐらいなもんさ」


 見られていたのか?それとも情報漏洩か?

 まぁそういわれると何も言えない。


「それにこの姿だと何かと不便であんたみたいな男手が欲しいの。

 助けてもらっておいてなんだけど手伝ってくれないかい?」


 直幸は軽く頷く。

 魔力は奪えるものなのか?聞いている限り少し怪しい少女だが、見た感じ悪そうなやつでもないし、困っているなら手伝ってやりたい。

 かといって俺自身も丸腰だ。

 これはどうしたものか…。

 ナタシアは直幸に指を差して言った。


「あんた丸腰でしょう?」

「はい、察しの通りで…」

「じゃぁ武器屋に寄りましょう?そこで装備を整えて近くの宿屋で作戦を立てるわよ。もちろん武器代は私が出すから安心しなさい?」


 直幸たちは武器屋に向かった。

 ナタシアの言っていた武器屋に着き建物の中に入るとそこには様々な武器が飾ってあった。剣や弓、杖、戦斧などたくさんの種類の武器があった。

 直幸はもちろん本物の武器を見るのは初めてだった。武器もまともに扱ったこともないのにこんな場所に居ていいのか?と多少の場違い感を覚えながらどの武器を使おうか考えていた。

 するとここの店主であろうガタイのいいマッチョな男が話しかけてきた。                  

                                                           

「なんだあんた!ここは餓鬼の連れてくるような場所じゃねぇぞ」

「餓鬼って誰の事よ!」


 ナタシアは相変わらず子供扱いされたことに怒っている。

 店主はナタシアに構わず俺に話しかけてきた。


「どうあれ、お前まともに武器を持ったこともねぇだろ?そんなのにうちの品はうれねぇな。」 


 店主は俺が武器を持ったことがないことに一目で気づいた。これは職人の目利きというか経験からくるものなのか、どちらにせよ当たっている。まるで料理人が魚の鮮度を判別するかのような目利きだった。

 ナタシアは店主の言葉を聞き、俺に疑問投げかけた。


「なに?直幸武器もまともに持ったことなかったの?」

「ああ、俺はここにきて日も浅いし、前居た場所は武器の必要が無いくらい平和な場所だったんだよ」

「私の目利き違いかしら、それにしては私を助けてくれた時、木材を魔物に向かって殴って倒してたところを見た感じ剣を扱った事があるような振り方だったわよ?まぁ素人目線だから何とも言えないんだけど。」


 まぁ確かに剣を全く扱った事がないと言えば嘘になる。日本に住んでいた時に義理の祖父に武道を一通り習わされていたからである。

 だがその時は竹刀や木刀しか扱った事がない。なので本物の剣を扱った事がないことは嘘ではないのであった。

 店主はナタシアの言葉に反応し、


「なんだったらうちの店の裏に小さい稽古場があるから行って一回練習してみるかい?」


 と言ってくれた。

 その言葉に、俺は喜んで頼む。

 店主に案内され、店の裏にあった稽古場に入った。

 稽古場はいたって普通かそれより少しぼろい感じの稽古場だった。

 ここで何人かの強者が稽古をしていたんじゃないかと思えるくらいのぼろぼろの木人形に少し汗臭い稽古場だった。

 店主は人一人分の大きさの木人形を俺の目の前に設置し片手剣の木刀を二つ手に取り、一つを俺に渡してくれた。そして俺から少し距離をとって言った。


「お前さんの実力が見たいからこの人形をその木刀で斬るか破壊してみてくれ。

嬢ちゃんの言う通りならこれくらいはできるんじゃないか?」


 正気か?木刀でこんなもの斬れるわけがないだろう?どこの超人なんだよ。本物の剣ですらこの木人形を破壊することすら難しいんじゃないか?


「木刀じゃ斬れも壊れもしないんじゃないか?いきなりそんなことを言われてもなぁ…」

「なに、魔力を剣に込めて斬るだけじゃないか。簡単だろ?ほらやってみな!」


 店主は当たり前の様に直幸に魔力を使って木刀で木人形を破壊しろと言ってくる。だが直幸は魔力の使い方が分からない。そもそも魔力が存在していることですら分からなかった。   

 まぁ少しのストレス発散だと思えばいいかと直幸はとりあえず人形から一歩下がり、助走をつけて右に回転し遠心力を木刀の先へ集中させ木人形の腹を斬り裂くようなイメージで殴った。


「せぇぇぇぇいやァ!!!!」


 案の定、木人形は斬り裂くことも破壊することもできなかったが殴った木人形は右方向へ吹っ飛び、壁に掛けていた木刀をバラバラに散らかしてしまった。

 店主はその光景を見て


「どうやら剣の扱いはなっているな。俺の目利き違いだったようだ。だが、今のは本気ではなかったのだろう?」


 と言われたが、察しの通り直幸の今の攻撃は全力であり本気であった。少し会心的な一撃ではあったが今のが本気だ。


「すみません、今のが本気です…」

「見た感じ魔力を使っていなかったじゃないか。魔力使ってもいいんだぜ?通常攻撃ではなく、魔力攻撃をやってみな?魔力攻撃込みの本気だ。」

「すみません、俺、魔力を使うどころか俺に魔力が存在していることさえも分からないのです」        


 この話を聞きナタシアが反応し、


「なに?あんた魔力を使いかた分からないの?簡単よ?何だったら教えてあげるわ」


 と言われ直幸は喜んでお願いした。

 ナタシアは店主に木人形を一つ借りれるか聞き、店主は了承してくれた。

 そしてナタシアは体が小さいく木人形を運ぶことができないので直幸が木人形を持ちナタシアの指示通りの場所に人形を設置した。

 それから人形から少し距離を取りナタシアは直幸の手を掴み、直幸の手の平を人形に向けた。


「いまから教えるのは魔力弾よ。とっても簡単だからよく聞いてね?

 魔力を扱う基礎はまずはイメージをすること。魔力は魔法と同じ分野で魔法入門ではイメージがとっても重要なの。

まずは何か強いイメージを考えてみて。あの人形を潰すようなイメージをまっすぐに放ってみて?」


 直幸はナタシアの言われたことを実行してみたが、


「はぁぁぁぁぁぁ!」


 反応は無い。そもそもこんなざっくりした感じでこの世界の住人は魔力弾を撃っているのか。

 反応が無かったことに対しナタシアは悲しい表情をしながら直幸の肩に手をポンと置き、


「あんたに魔力を操る才能は無いみたいよ。」


 その言葉を聞いて直幸は多少のショックを受けた。


「私が見てきた中では今の教えた通りでやるとできなかった人はいなかったのに…

 ま、まぁ魔力を使えなくてもできることはあるから元気を出して!」


 ナタシアは慰めてくれているがその慰めがさらに悲しみが込み上げてくる。

 今の感じを聞いている限りこの世界で魔力が使えることは常識的であるということが考えられる。

 となると直幸は小学生の算数で足し算もろくにできない大人というわけある。とても屈辱的だ。


 それから2人は黙って稽古場を出て、武器屋に戻り直幸用の剣を一つとナタシア用にナイフを一つ購入しようとした。 

 すると店主は、


「特別に今回は安くしておいてやるよ」


 といってお代を半額にしてくれた。


「ありがとうございます…」

「まぁ、最初のうちはそんなもんだ。気に病むなよ」

「すみません、ありがとうございます」


 ああ、この店主見た目に似合わずお優しい…なんだか天使に見えてきた…

 いやこのムキムキボディに天使の羽を想像したら吐き気が…

 まぁだがとてもいい人だ。


 武器の購入は終わった。

 そして近くの安い宿を一部屋借りた。

 宿で部屋を借りる際に受付の女の人は直幸の方を見て不審そうな目でこちらを眺めていたことに気づきナタシアは受付に直幸は下僕だと言ってごまかした。

 ナタシアは


「不審に思われ役人どもに押し入られることが面倒くさいからね」


 と言っていたがどうも気に食わない。


 借りた部屋は2人用の1部屋。

 チェックインを済ませた二人は必需品を買うために少し街を歩いた。


「え~ん!」


 泣いている男の子がいた。

 俺はその男の子に話しかけた。


「どうしたんだ?迷子か?」

「ママとはぐれちゃって、どこにいるのか分からないの」


 ナタシアは小声で「放っておきなさい」と言うが、俺は困っている人いると見捨てられない性分だ。どうにかしてやりたい。


 その光景を見ていた、近くの狼男の獣人の大人が話しかけてきた。


「なんだ?迷子か?手伝おうか?」


 と声をかけてきた。

 俺は「是非と」お願いした。

 その獣人は男の子に言った。


「ほらほら、泣くのはやめろ。男ならビシッと胸張って。よし!いい子だ!頑張ったな!ほら飴でも舐めてな、俺たちがおめぇのママ探してやっからよ!」


 そういって男は少年の頭を撫でた。


 少年は嬉しそうに「うん」と答えて泣き止んだ。

 どうやらこの男、面倒見は良さそうだ。

 ナタシアもなんだかんだ言って、一緒に探すのを手伝ってくれていた。

 しばらく3人で少年の親を探していると、無事見つけることができた。でもいいかも・・・?

 少年の母は「ありがとうございます!」と3人に礼を言って、去っていった。

 男も、「問題は解決したな、それじゃあな!」と言って去っていった。


 そして俺たち2人は商業エリアを歩いた。この世界の文化を少し知るには丁度良い場所だ。

 商業エリアには道具屋、薬屋、武器屋、占いの部屋と様々な経済活動が行われていた。

 そしてその中を歩いてみると分かることは獣人やエルフ、人間だが人間っぽくない人まで様々な人が活動し、皆それぞれ、先ほどのようにお互い支えあって生きているといるといった感じだった。

 この街の人間はどこか暖かく、生きていくのに必死だが、生きているのは自分だけではないという雰囲気が漂っていた。


 買い物が終わり、宿の部屋に戻った。

 ナタシアがこの国の地図を広げ、作戦会議が始まった。

 だが俺は作戦会議を本格的に始める前に聞いておかないといけないことがあった。


「なぁ、なんでお前は魔力を奪われたんだ?」


 一番最初に問いておくべき事だ。

 事情は詳しく聞いておいた方が後々役に立つ情報があるかもしれないからだ。 

 それを聞いたナタシアは真剣な面持ちで答えた。


「聞きたいの?」

「ああ、訳があったんだろうと思っていたんだが、なぜここまでするのか不思議で仕方ないのさ。まぁ話したくなかったらでいいさ。」


 するとナタシアは話したくなさそうだが、俺が無害な人間だと判断したのか少し話してくれた。


「…戦いに負けたのよ。  私は故郷の村で薬師をやっていたの。ある日突然、村の人間がとある貴族の男を手に掛けたと言い、この国の一つの王宮騎士の団体が私の村へ来たの。私の村の人が貴族の人を手に掛けた事は嘘か真実か分からなかった。言いがかりかもしれないし本当のことかもしれない。

 だから騎士団の人が事情調査をしに来たと思えば ”責任はこの村の全員の命を持って償わせる” などと言って次々に村人を殺しまわったの。逃げ回っている者から子供まで無差別にね」


「その騎士はこの国の人間なのか?」


「ええ。そして私はその村の一員である以上、関係の無い人を殺されてる光景を見ていられなくなり助けようとしたの。私は抵抗したが、騎士団の中にいた一人の騎士が思ったより強くて村から近くの森まで追い詰められたの。             

 そこで、騎士は私の首を掴み、見たこともない奇妙なナイフを使って私を刺したの。刺された後の傷は一つも残っていなかったのだけど私の胸から出てきたこの玉つまり、魔力の塊を持って行き、私は魔力を失った。

 魔力はイメージで言うと魔力用の器があり、その器を奪われると永遠に魔力が回復することが無いの。そして魔力を奪われた影響か分からないけど幼体化してしまったわけ。その騎士は私の命は奪わずに束縛の魔法だけかけて村の方へ戻ったの」  


 直幸はその話を聞く限りは己の倫理観からすればとても許されるべき行為ではないと考えた。だが実際の光景は見ていないから一概に信じるわけにはいかないが、ナタシアの静かに激怒している話し方といい表情を見ればその時の様子が伝わってくるものはある。

 それにその騎士はなぜナタシアの魔力だけを奪ったのか、なぜ命は奪わなかったのか疑問点はいくつか湧いてくる。

 だがそれを被害者の本人になぜかと問いても被害者であるから分からないであろう。


「その後はどうやって束縛を開放できたんだ?」

「その魔法は一定時間が過ぎると自動で解除される仕組みになっていたのよ」


 あくまで推測だが魔力を奪ったナタシアには抵抗のできる力が無いと判断し、野放しにしておいても無害だと考えたのか。

 魔力は何に使おうとしているのか分からないが、嫌な予感がするのであった。


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