第2話 それ、私のことだけど?
本日ラスト、3回目の更新です!
明日以降の更新スケジュールはあとがきにて!
結局、学校に泊まった。
初めて入った寮の自室。
最初で最後のベッドにサヨナラを告げ、スタジアムに向かおうとした。
――ジリリリリリ!!!
緊急事態を知らせる、警報が鳴り響く。
(……あ、これ)
……ぜっったい、めんどいやつ。
『――学生諸君に告ぐ。この学園は我々、反アンノウン組織が支配した』
つい、あくびが出る。
『政府と交渉中につき、その間人質として身柄を拘束する』
一昨日はほぼ徹夜、今日は五時起き。
眠いんだけど?
『要求は一つ。一昨夜、国境を書き換えた怪物を引き渡しである』
ん?
『これより、スタジアムへ誘導を開始する。逆らえば命の保証はない』
――ブチっ!
放送が切れる。
遠くの方で、拡声器の声がする。
……なんだかなぁ。
校内放送使ってる時点でもう、たかが知れてるって感じ。
(……寮に戻ろう。遅延みたいな扱いにしてくれるでしょ)
テロリストに遭遇して遅れました。
れっきとした理由だろう。
(……予定、全部ズレたな)
ただ卒業したいだけなのに、この世界はいつも“別件”を入れてくる。
そのまま、引き返そうとした。
「あ、お姉さん!」
……うわ、最悪。
「ちゃんと来てくださったんですね! よかった〜!」
朝からテンション、高すぎ。
ため息混じりに振り返ると、昨日の少年が立っていた。
(……あれ)
微かに、知らない魔力の匂いがする。
「卒業したいからね」
人差し指で、空気をなぞる。
――指先に、外の結界の残滓が吸い付いた。
「でも、中止みたいだよ。他の人が使うみたい」
少し遠くに見える影。
覆面の男に杖を突きつけられている――生徒たち。
「違いますよ!
スタッフの人が、みんなを集めてくれてるんです!」
は?
「だって、昨日説明されましたよ?」
何を?
「……さっきの放送、聞いてた?」
「スタジアムへの誘導ですよね?
少し過激な方法で人集めするとは聞いてましたけど、本格的ですね!」
魔力に、乱れはない。
生体反応も脈も、ふつう。
洗脳されている様子も、嘘をついてる反応もない。
(……これ、面倒ってレベルじゃない)
あくびを噛み殺す。
こんなことになるなら、あの時――
「今更だけどさ、対戦相手って誰?」
視界の端で、草陰が揺れる。
(……また邪魔が増えた)
ただ卒業したいだけなのに、この世界はすぐに“余興”を増やす。
息を吸うように人差し指の爪を弾く。
草陰へ向けて放たれた魔力の針が、
“何か”を捉えた。
「え、いま、詠唱……」
糸を引くイメージで、指をたぐる。
引き摺り出されたのは、針の筵にされた――血だらけの男。
その胸元には――かの国の国旗。
その銃口は、確かに――
目の前の少年に向けられていた。
「……気が変わった。さっさと寝たい」
少年の腕を掴み、
目の前の空間ごと切り取る。
「て、転移魔法!? 待って、お姉さんいったい――」
瞬きひとつ、それだけで十分。
気づけば、望んだ場所にいる。
それが例え、何重に張られた結界の中だとしても――。
◇
(……澱んでる)
スタジアム内の端から、ざっと全体を見回す。
席に縛り付けられてる生徒は、観客というより生贄。
嗚咽を漏らし、体が強張っている。
顔色は白っぽくて、震えが止まらない様子も見える。
“死を前にした”人間が、よくする反応だ。
『我々の要求は、ただひとつ!』
首謀者らしき男が叫ぶ。
大きなモニターには、ウーヌス共和国の国旗が映っている。
この国でこの光景は、許されない。
悲鳴がうるさい。
(……これは、直さないと)
胸に刻まれた、印が疼く。
――とりあえず、あれ、邪魔。
指先を、モニターに向けようとした。
――その時だった。
「……え、あれ?!」
すぐ隣で聞こえた声に、ハッとする。
「これ、どういう状況ですか? 人を集めれば、あの人に会わせてくれるって――」
(……そういうことか)
「あの人って、だれ」
遮るように、男の太い声が通る。
スタジアム全体が、一瞬で静まり返った。
『――“アンダー・リム”の身柄引き渡しである』
(……それって)
――たぶん、私だね。
本日のスタートダッシュ、お付き合いいただきありがとうございました!
本作はまずスタートダッシュ企画として、
【今日から一週間、毎日18時10分】に1話ずつ更新していく予定です!
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