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国境を消した最強術師ですが、学園で普通の青春ごっこ始めます! 〜神に愛されし兵器の少女、なぜか幼馴染の王子様に執着されてます〜  作者: 美絢


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第1話 卒業式に行きたいだけなのに

本日2回目の更新です!

今日はもう1回更新があります!

 三年二ヶ月ぶりに、制服を着た。

 昨日、国境を直したばかりなのに。


 正直、帰りたい。

 卒業式だけ出ろって、何?


 ただ卒業したいだけなのに、この世界はすぐに“戦争”を仕掛けてくる。


(……結局、アルと通えたのは三日間だけ)


 それ以外、思い入れはない。


 もらうものもらったら、帰って寝よ。




 ――その時だった。




「うわああああああ!?」


 空から、人が降ってきた。


(……めんど)


 一歩、横にズレる。


 ――どさっ。


 すぐ隣に、人間が叩きつけられた。


 枝が折れ、土が跳ねる。

 足が、不自然な方向へ曲がっている。


 ……折れてるな。


「おーい、生きてる?」


 しゃがみ込む。


 真新しい杖。

 ぶかぶかの制服。

 割れたメガネ。


(死なれても面倒だな)


 右手の人差し指を上げる。


 ――空気が、引っかかる。


 ぐったりとした体が、わずかに浮く。


 骨の位置が戻る。

 潰れた呼吸が、巻き戻る。


 触れてもいないのに、形だけが整う。


(……ほんと、(もろ)い)


 何もなかったみたいに、人の姿を取り戻す。


「ん」


 しゃがんで、彼のメガネを拾う。


 かけようとした、その瞬間――


「うわああああああ!?」


「……うるさい」


 思わず、耳を塞ぐ。


「あれ、生きてる? なんで……」


 どうやら、状況が飲み込めていないらしい。

 体を起こしながら、足の具合を確認している。


「あ、杖……!」


 手元を確認して、ほっと息を吐く。


(……元気にしすぎたか)


 そのまま通り過ぎようとした。


 ――ガシッ。


「もしかして、お姉さんが!?」


 腕を掴まれる。


(……ダルいな、この感じ)


「うん、助けたの私。それじゃ」


 振りほどこうとした、その時。


「お願いします!」


 食い気味だった。


「僕のバディになってください!」


 ……は?


「このままだと――」


 一瞬、言葉を詰まらせる。


「明日、僕……潰されます」


 少年の顔が曇る。


「そうなんだ。大変だね」


「え、つっこまないんですか?」


「うん。面倒なこと、嫌いだから」


 土まみれの手が目に入り、内心ため息をついた。


(……邪魔だな)


 ――来た方へ飛ばそう。

 手を(かざ)そうとした、瞬間。


 空間が歪む気配がした。


(……転移か)


「見つけました」


(……もう来た)


 振り向くと、おかっぱの女子生徒が立っていた。


(……早いな)


「明日の決闘は、生徒会として許可できません」


 はっきりと言い切る。


「聞いてください! バディ見つけました!」


 ぐい、と腕を引かれる。


 少女の視線が、まっすぐこちらに向く。


「……この方が?」


 値踏みするような目。


 一瞬だけ、空気が止まった。


(……今)


 ぞわり、と空気が軋む。


 ――嫌な感じ。

 無意識に指を擦り合わせた。


「――それなら、話は別です」


 赤い唇が、弧を描く。


(……あーあ)


 私は小さく、ため息をついた。


「盛り上がってるとこ悪いけど、明日学校来ないよ」


 髪を耳にかける。


「これから卒業式だから」


 そう。

 今日来たのは、それを終わらせるため。


「……もしかして、あなたが?」


 ごくり、と喉が鳴る音。


「三年二ヶ月留年してるっていう——」


 視線が、わずかに細くなる。


「例の、生徒」


 沈黙。



「――たぶん、私だね」


 最年少入学、最多留年生。


『ノクスは、伝説ばかり作るね』

 ――心なしか、幻聴が聞こえる。



「そんなにザコなんですか?」


 初めて言われた。

 ちょっと新鮮。


「強いよ。でも、留年してたのは本当」


「……そんなヤツが、強いわけ、ないだろ……」


 言いたいことは、分からなくもない。


 少年はみるみる内に、顔色をなくす。

 よくみると、指先が小刻みに震えている。


「どうして俺の周りは、ザコばっかなんだ……!」


 悔しがるとこ、そこなんだ?


「――全部、"アンダー・リム"のせいだ」


 ボソッと、呟く。

 けれど、しっかりと聞こえた。


「それって、アンノウンの?」


「さすがのお姉さんでも、それは知ってるんすね」


 だって、自分がそうだし。


 なんで君は、そんなドヤ顔なの?

 口調変わってるし。


「……ウーヌス共和国のこと知ってますよね?

 あれ、たぶん魔術師の仕業です」


 青年の目つきが変わる。


「あそこは、大きな山脈もプレートもない。

 なにより、近隣住民からの救助要請もなかったそうです」


 メガネのブリッジを上げる。


「地殻変動にしては、器用すぎる」


 一拍置いて、断言する。


「――僕は、《アンダー・リム》の仕業だと思ってます」


 さっきまでの(やかま)しさが、嘘みたいだ。


(……馬鹿そうなのに、勘はいいんだ)


「それで?」


「え、引かないんですか?」


 え、ここ引くとこなの?


「ごめん、引いたわ」


 真顔で返す。


 神様と、アルシオスと、その他。

 ――それ以外、どうでもいい。


 だからこういう時、どう反応するのが正解か、分からない。


 次の瞬間、空気がピリッとする。

 ――少女が殺気を放っていた。


「――それ以上は許しません」


 あ、怒ってる。


「校則その一、世界秩序維持に関する組織の名を口にしてはならない」


 世界秩序維持に関する組織?

 その胡散臭いの、もしかして……


「アンノウンって言ったら、ダメってこと?」


「ダメです。この瞬間、卒業要項が増えました」


 は?


「卒業は、明日に延期して頂きます」


「は?」


 あ、声出ちゃった。



「手続きはこちらで済ませます。明日、スタジアムに朝の五時集合です」


 早すぎない?

 普通に寝坊する。


「それ出たら、卒業できるの?」


 頷くのを見て、内心ため息をこぼす。


 どんな形でも、卒業してほしい。

 ――アルシオスとの約束だ。


「ちなみに対戦相手って――」


 言いかけて、やめる。


 聞いてもすぐ忘れるし。


「要は、ころ……倒せばいいのよね?」


 まだ私は、この一言の重さを知らない。

お読みいただきありがとうございました!

本日ラストとなる第2話は、この後【20時10分】に更新予定です。


もしよろしければ、画面下の【ブックマーク】などをポチッと押して、次の更新をお待ちいただけると嬉しいです!

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