おわりとはじまり
川色歩夢が意識を取り戻す。
病院の天井が目に入った。
傍には、静かに座る佐賀剛がいた。
佐賀剛は、
歩夢の顔を見るなり、
淡々と事実だけを告げる。
「華川檜は、警察に自首したそうだ。」
「拘置所の留置場で首を吊った。
「一命は取り留めたが、下半身不随になっている。」
「そして、声も発せられなくなった。」
檜、その後の悲劇的な結末。
佐賀剛は、話しを続ける。
「これ以上の協力は不可能だ。」
「君はもう、私達が介入できる領域を超えた。」
「これは、頼れる警察官の名刺だ。」
そう言って名刺を歩夢の枕元に置く。
佐賀剛は踵を返す。
そして、口唇が小さく動く。
(すまない…。歩夢。)
歩夢は、背中を見送る。
(僕こそ、すまない…。)
歩夢は、すぐに檜の病室へと
向かった。
檜は、医療機器につながれ、
酸素マスクを着けていた。
そしてベッドに横たわる。
声を発することのできない
何かを伝えようと
檜の瞳の奥から、感じる。
歩夢は、檜の”声”を聞く為に
決意をする。
歩夢は頭に語りかける。
「一つ目の能力の使用。」
「嗅覚を犠牲にする。」
すると病院特有の臭いが消える。
脳内に澄んだ音が響いた。
檜の心の声が、
歩夢に、流れ込んでくる。
拘置所内で、警察官の手引きにより、死神のジャケットを
着た男が現れたこと。
その男が檜の首に何か
薬を打ち、意識はあるが
動けない状態にされた事。
そして、黒幕と思われる
”執行人”が病室に現れたこと。
“執行人”は、死神のジャケットの男を従え、
「歩夢のお気に入りは、こいつだね。」
無邪気に話す。
そして…。
檜の下着を下ろし、無理やり
に弄ぶ。
事が終わると、”執行人”は
檜の耳元で、メッセージを囁いた。
「歩夢に伝えて欲しい。」
「お前の事を想う者は、これで私の物だ。」
「次はお前の友を、奪おう。」
「歩夢、俺は裏切り者のお前を許さない。」
「もし友の場所にこれたなら、俺の血を引く、お前を生かそう。」
「待っている。」
檜は、歩夢に
「楽にして欲しい」と
心の声で訴えた。
歩夢は、瞳から何かが溢れる。
そして、檜につながれた
人工呼吸器を外した。
檜の瞳から、涙がこぼれ落ちる。
歩夢には、
「ありがとう…。」
「歩夢さん、ごめんなさい。」
と声が同時に聞こえた。
病室を出た歩夢は、執行人のメッセージから次の標的が
佐賀剛と守だと悟った。
急いで守の家に向かうが、
遅かった…。
守は、手足を切り裂かれ、
血の海の中に倒れていた。
歩夢は救急車を呼んだ。
意識はあるものの、
瀕死の状態である守の”声”を
聞くため、歩夢は能力を
使用する覚悟を決める。
頭の中で声が聴こえる。
「次は味覚と聴覚を失う。」
周りの音が何も聞こえない。
いや、無音が歩夢を、支配する。
口の中では先ほどまで感じていた血の味がしない。
すると、澄み渡った守の心の声が、歩夢に流れ込んでくる。
やはり檜の時と同じく、
死神のジャケットの男が襲撃した事。
最初は、佐賀剛が守と変わり
打ちどめすが、背後の執行人に
気づかず固い何かで強く殴られる。
執行人は、佐賀に倒された死神のジャケットを羽織る者に
「このざまとは…ね。」
「いいや、もういらない。」
そう言うと男を殺害する。
そして、守と佐賀の耳元で
執行人が囁いた言葉が聞こえた。
「……、………で待つ。」
それは場所の名称だった。
執行人は父親だった。
歩夢は、
(みんな…ごめん。)
(必ず…。)
覚悟した歩夢は、アパートに
戻り、最後の行動に出た。
歩夢は、小説投稿サイトに
アクセスする。
そして。
自らの生きてきた人生。
能力、そして執行人との
因縁の全てを、物語として書き綴った。
投稿を終え、遺書を残した。
歩夢はスマホを海に投げ込む。
歩夢の五感は視覚、触覚
この二つを掛け
呪いとも呼べる悪に立ち向かう為にその場所へ向かうのだった。
父親のもとへ…。




