だいしょうとかくご
歩夢と檜は、佐賀剛に
託された地図を頼りに、
静岡の青木湖へとたどり着いた。
二人は岸辺を捜索する。
檜は、息子が湖底に眠っているという事に
今にも泣き出しそうに
なりながらも、地図に示された場所を注視した。
ちゃぽん…。
何か音がする。
すると、彼女の目が何かを捉えた。
次の瞬間、檜は悲鳴も上げずに、湖へと飛び込んだ。
「華川さん!」
歩夢は、冬の湖に飛び込む檜が危険だと思い、反射的に檜を追って水中に飛び込んだ。
冷たい水が全身を貫く。
檜は、水中でカバンにくくり付けられた小さな子供の遺体を見つけ、必死に陸へと上げようとしていた。
その時、歩夢の頭の中に、
再び、強く声が響いた。
「やめろ。」
「警察を呼べ。」
「証拠を失うぞ。」
「それより周りをもっと見ろ。何かいる。」
「執行人に関わる者だ。」
「檜を止めて早く追いかけろ。」
歩夢は、我にかえると、
歩夢は声に従い、檜を抱え上げる。
そして、無理やり陸へと引き上げた。
「待ってください、警察を呼ばないと!」
歩夢は事情を伝え、
檜は涙を流しながらも、
寒さ故かそれとも、
失った事を認識する事への
恐怖なのか…。
震える手で警察へ連絡した。
歩夢は、再びうっすらと
(ちっ…み…か。)と聴こえる。
その声を頼りに、
湖畔の森へと駆け出した。
声は、林道を走るバイクへと
歩夢を導いた。
声の主がバイクに乗って
走り出す瞬間、
歩夢はその姿を視界に捉えた。
背中に死神と鎌が描かれた、
目立つジャケットを着ていた。
執行人か、あるいはその協力者。
歩夢は最後の力を振り絞って
声を追おうとした瞬間、
キーキキーン、ギギ、バリビキ
と頭の中で鳴り
脳内がぼこぼこ、ぐちゃぐにゃ
と動き痛みが走る。
突然、両眼と鼻から
ボタボタと鮮血が流れ出す。
「あ…かぁ…はぁ。」
能力を無理に再起動させた
代償なのか…。
歩夢は、そのまま意識を失い、
がにゃ、がささか…。バサッ。
地面に倒れ込んだ。
真っ白な空間が目の前にひろがる。
今まで彼を支えていた声の主
内なる者達がそこに存在する。
顔がない者、
耳がない者、
胸に穴が開いている者、
瞳を綴じている者、
そして幼い自分がうずくまっている。
彼らの声が、一斉に歩夢を
止めようとする。
「このまま我らと話し続けると、お前の脳は死ぬ。」
「おそらく、今の歩夢の脳には、能力の再起動の負担が大きすぎるのだろう。」
「そして、我らからも言おう。執行人を探すな!」
「お前は死ぬことになる。」
「我らも、それは望んでいない。」
幼い頃の自分を含む人格達。
歩夢の死を予言し、
捜索の中止を求めた。
歩夢は、首を横に降る。
すると声の主達が道を開ける。
今度は手足が無く泣いている者が現れた。
「もし、それでも探すのなら、私が協力しよう」
その者は、条件を提示した。
「脳の負担を減らせば、能力は使える。」
「五感を無くすということだ。」
「それならば、この能力は使える。」
「それでもあと五回が限度だろう。」
「要は、五感と引き換えに能力を使える。」
「五回使うと、お前の全ては無となる。」
歩夢は、復讐の為に
全てをかける覚悟を試されていた。
この声の主は果たして味方なのだろうか…。




