ー【第2節】角を持つ美少女アピスとの出会い。伝説の古龍を海藻餅と勘違いする暴挙
第2節 角を持つ美少女アピスとの出会い。伝説の古龍を海藻餅と勘違いする暴挙
現れた少女は、息を呑むほどに美しかった。
透き通るような水色の髪は腰まで届き、瞳は深い海のような瑠璃色。肌は真珠のように白く、着ているのはパレオのような布を巻いただけの涼し気な衣装だ。
だが、最も目を引くのは、彼女の頭部から生えている二本の小さな「角」だった。
珊瑚のようにも見える、淡いピンク色の角。
「人間……? いや、竜人族か?」
俺が小声で呟くと、少女は満面の笑みでカウンターに身を乗り出した。
「わあ! お客さんだ! 久しぶりの人間さんですね! ようこそ『潮騒の神殿』へ! あたしはこのお宿の看板娘、アピスです!」
彼女――アピスは、警戒心ゼロで俺の手を握り、ブンブンと振り回した。
その手はひんやりとしていて心地よい。
「あ、ああ、どうも。俺はアルス。こっちは連れのマリモだ」
俺は肩に乗っている緑色の毛玉を親指で示した。
アピスの視線が、俺の肩へと移動する。
彼女の瑠璃色の瞳が、キラリと輝いた。
「……あっ!」
アピスは声を上げ、俺の肩からマリモをひょいと掴み上げた。
「おい、何をす……」
マリモが抗議しようとした、その時だ。
アピスはマリモを両手で包み込み、うっとりとした表情で見つめ、そしてあろうことか口を大きく開けた。
「わぁ~、お土産ですか? 美味しそうな海藻餅! いっただきまーす!」
「ぬわあああああっ!? やめろ貴様ァァッ!!」
マリモが絶叫し、全身から翠色の放電を行った。
バヂヂヂッ!
「きゃっ!?」
アピスは驚いて手を離す。マリモは空中で一回転し、俺の頭の上に着地した。毛が逆立ち、完全に激怒モードだ。
「き、貴様ぁ……! 伝説の翠玉の古龍であるこの我を、あろうことか『餅』だと!? しかも海藻!? 食おうとしたな!?」
「ええっ? 喋った!?」
アピスは目を丸くして、しげしげとマリモを観察した。
「お餅じゃないんですか? この緑色のふわふわ感といい、美味しそうな色艶といい、てっきり最高級のあおさ海苔を使ったお餅かと……」
「失敬な! これは高貴なる龍の体毛だ!」
「ご、ごめんなさい! あまりに美味しそうだったので、つい……テヘッ☆」
アピスは頭をコツンと叩いて舌を出した。
その仕草があまりに自然で、かつ可愛らしかったため、俺は怒るタイミングを完全に見失ってしまった。
「ぐぬぬ……主よ、こやつを焼いてもよいか? 軽くウェルダンくらいに」
「やめとけマリモ。悪気はなさそうだ。……たぶん」
天然なのか、それとも大物なのか。
アピスという名の少女は、伝説の古龍の怒りを「テヘッ」一つで受け流し、再びニコニコと俺たちを見つめた。




