↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/24

ー【第2節】「もし私が世界を滅ぼす怪物だったら?」アピスの問いかけと、張り詰める空気

第2節 「もし私が世界を滅ぼす怪物だったら?」アピスの問いかけと、張り詰める空気


 沈黙が流れた。

 焚き火の音だけが、やけに大きく響く。

 マリモも食べる手を止め、真剣な眼差しでアピスを見つめている。

 アピスは涙を拭い、意を決したように俺の目を見て言った。

「……アルス様。もし……もしもですよ?」

 彼女の声が震えている。

「もしあたしが、ただの看板娘じゃなくて……世界を滅ぼすような、恐ろしい怪物だったとしても……」

 ごくり、と喉が鳴る音が聞こえた気がした。

「それでもアルス様は、あたしと仲良くしてくれますか? それとも……怖がって、逃げちゃいますか?」

 それは、彼女がずっと抱えてきたであろう、根源的な恐怖からの問いかけだった。

 自分の正体を知られたら、拒絶されるのではないか。

 化け物だと恐れられ、討伐されるのではないか。

 そんな不安が、彼女の小さな胸を締め付けていたのだ。

 アピスの瞳が揺れている。答えを待つ数秒が、永遠のように感じられた。


 俺は、手元にあった串を焚き火にかざした。

 先端に刺さっているのは、アピスがデザートにと用意してくれた、白くてフワフワしたお菓子――マシュマロだ。

 ジュワッ、と甘い香りが広がり、表面がきつね色に焦げていく。

 俺はそれを口に運び、熱々の甘さを噛み締めながら、ゆっくりと口を開いた。


「……美味いな、これ」

 拍子抜けするような俺の言葉に、アピスがキョトンとした。

「え……?」

「このマシュマロ、最高だよ。焼き加減も完璧だ」

 俺はニッと笑って、もう一本のマシュマロをアピスに差し出した。

「アピス。俺は錬金術師だ。物の本質を見抜くのが仕事だ」

 俺は真直ぐに彼女の瞳を見つめ返した。

「お前が何者だろうと、世界を滅ぼす力を持っていようと、関係ない」

 俺は言い切った。

「お前は俺たちに、美味い飯を食わせてくれた。ふかふかのベッドを用意してくれた。一緒に海で遊んで、笑い合った」

 マシュマロを受け取ろうとしない彼女の手に、俺は無理やりそれを握らせた。

「飯を食わせてくれた奴は、友達だ。それが俺のルールだ」

 シンプルすぎる理屈。

 だが、それが俺の偽らざる本心だった。

 王都での宮廷魔術師時代、俺は「役に立つかどうか」だけで評価され、利用されてきた。

 だからこそ分かる。

 目の前にいる相手が、どれだけ純粋で、温かい心を持っているかを。

「世界を滅ぼす? 上等じゃないか。もしそうなったら、俺が止めてやるよ。友達としてな」

 俺は悪戯っぽくウインクしてみせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。