ー【第3節】遊び疲れた後の心地よい疲労感。夕暮れの浜辺で始まる、極上の食材を使ったアピス特製ディナー
第3節 遊び疲れた後の心地よい疲労感。夕暮れの浜辺で始まる、極上の食材を使ったアピス特製ディナー
太陽が水平線に傾き、海が茜色に染まる頃。
俺たちは遊び疲れて『潮騒の神殿』へと戻った。
全身に心地よい疲労感が残っている。魔力の海で一日中動き回ったおかげで、身体中の魔力回路が洗浄され、生まれ変わったような気分だ。
マリモはサメから逃げ回った疲れか、俺の肩でぐったりと伸びている。
「……死ぬかと思った。あの娘、サメを手懐けるどころか、サメより速く泳ぐぞ……」
「お疲れ、マリモ。でも良い運動になったろ?」
「ふん、まあな。腹が減ったことだけは確かだ」
宿のテラス席には、すでに香ばしい匂いが漂っていた。
アピスが腕によりをかけた夕食の準備が整っていたのだ。
「お待たせしましたー! 今夜は『アピス流・限界海鮮フルコース』です!」
テーブルに並べられた料理の数々に、俺たちは息を呑んだ。
前菜は、透明な甲羅を持つ『クリスタルクラブ』のカルパッチョ。身が宝石のように輝いている。
スープは、黄金色の『太陽貝』と希少海藻のポタージュ。濃厚な磯の香りが食欲を刺激する。
そしてメインディッシュは――。
「これは……すごいな」
大皿に乗っていたのは、俺たちが昼間に見かけた巨大魚の香草焼きだった。
パリッと焼かれた皮目、ふっくらとした白身。そこに、アピス特製の青いソース(見た目は怪しいが、香りは柑橘系で最高だ)がかかっている。
「いただきまーす!」
俺たちは貪るように料理に食らいついた。
「美味いッ!」
口に入れた瞬間、素材の持つ強烈な旨味と魔力が爆発する。
王都の宮廷料理も洗練されていたが、ここの料理には「生命力」そのものを頂くような野性味と力強さがある。
「うむ、うむ! このカニ、殻までバリバリいけるぞ! サメに追われた恐怖も吹き飛ぶ美味さだ!」
マリモも機嫌を直し、凄まじい勢いで皿を空にしていく。
アピスはそんな俺たちを、嬉しそうに頬杖をついて眺めていた。
「いっぱい食べてくださいね! 食材なら、海にいくらでも泳いでますから!」
その笑顔は、昼間のサメ使いの少女と同一人物とは思えないほど、可憐で平和そのものだった。




