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赤ずきんちゃんと狼さん  作者: 星狼


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5/6

死ぬのは当然である

部屋の空気が、まるで重い布のように垂れ込めていた。

少女たちの視線が、ゆっくりと、しかし確実に、左のベッドへと集まる。

右のベッドのおばあちゃんが、突然、タガの外れたように口火を切った。

声は、皺だらけの顔から溢れ出すように、抑えきれずに響く。


「本当にあの爺さんはさぁ!? 酒ばっかり飲んで、仕事もしないし、博打でアタシが稼いだ金を勝手に使うし、あんなロクデナシはいなかったよ! アタシは死んでせいせいしたね!」


言葉が、矢のように部屋を貫く。

狼は、毛布の下で息を殺す。

もういい。

もういいよ。

右のおばあちゃん、もういい。

緑ずきんちゃんたちのリアクションを見ようよ。

空気を読もうよ。

村の雰囲気を、こんなに悪くするの、やめようよ……?


だが、彼女は止まらない。

まるで長年溜め込んだ毒を、一気に吐き出すように。


「それに、アタシが一番、腹立ってるのは、アタシがお母さんを産んだ時の話! アタシ、初めての出産だったんだよ!? でも、あの爺さん、酒飲んで、寝てて、アタシの出産に立ち会わなかったんだよ!? アタシがどんだけ、不安な思いで、お母さん産んだかわかる!? アタシはアレ、一生許さないよ!?」


狼の胸の奥で、何かが静かに、諦めのように崩れ落ちる。

わかりました。

出産に立ち会わないと、こういう風に一生恨まれるんだね……。

僕も、もし結婚したら、気をつけます……。

でも、孫たちの前で、そんな話を。

村の雰囲気を、こんなに壊すのは、ダメだって。


少女たちの視線が、右のおばあちゃんから、ゆっくりと離れる。

そして、再び、こちらへ。

赤ずきんの声が、柔らかく、しかし決定的に響く。


「あはは、右のベッドのおばあちゃん、わかったよ。それじゃあ、そろそろ決めようか?」


ずきんちゃんたちが、顔を見合わせる。

三人の瞳が、静かに、しかし確実に、合意する。

そして、声を揃えて。


「せぇ〜の! 偽物のおばあちゃんは、左のベッドのおばあちゃんだと思います!」


はい……そうです……。

うん……そうです……。

僕が偽物のおばあちゃんです。

僕が、人狼です。


こんな、おばあちゃんになりきって騙す事なんて、僕、出来ない。

僕は牙を隠し、耳を伏せ、毛布の下で震えるだけの、惨めな獣でしかない。

少女たちの声が、部屋に優しく、残酷に満ちていく。

狼の心臓は、ただの人間のそれのように、静かに、弱々しく、鳴り続けていた。

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