白い手掛かり
部屋の空気が、微かに震え始めた。
少女たちの声が、重なり合い、絡みつくように部屋を満たす。
「じゃあ、次は緑ずきんが質問するね!」
声を出したのは緑ずきん。
彼女が声をあげた瞬間、狼の胸に一筋の希望が、儚く灯った。
今はピンチだ。
だが、これはチャンスでもある。
この少女の質問に、しっかり答えさえすれば、再び偽装を固められるはずだ。
狼は、毛布の下で思考を高速に回転させる。
学習した。
右のベッドのおばあちゃんの言葉を、記憶に刻んだ。
戦いの中で、学ぶのが本当の狩人だ。
緑ずきんが、明るく声を上げる。
「昨日、吊られたおじいちゃんの霊結果は白でした! 霊結果白を見て、おばあちゃん達はどう思いましたか!?」
よし、この質問だ。
これなら、答えられる。
狼は、喉の奥から、感情を偽装した声を絞り出す。
声のトーンを、哀しげに、悔しげに。
「あぁ……爺さんはやっぱり白だったんだね……アタシは残念だよ……信じてた爺さんが犠牲になって、アタシは心苦しいよ……」
完璧だ。
感情の偽装は、完璧。
呼び方も『爺さん』で揃えた。
右のベッドのおばあちゃんの言葉を、そっくり真似た。
これで、疑いは逸れるはずだ。
緑ずきんが、右のベッドに視線を移す。
「じゃあ、右のベッドのおばあちゃんは?」
狼は、息を殺す。
さぁ、どう答える?
俺の答えに、勝てるか?
右のおばあちゃんよ……!
右のベッドのおばあちゃんが、勢いよく、声を張り上げる。
「あんなヤツ、死んで当然だよ!」
その言葉が、部屋に落ちる。
重く、鋭く、容赦なく。
狼の胸の奥で、希望の灯が、ぱちんと音を立てて消えた。




