↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/22

第2話 あとがき

━━━━━━━━━━━━━━━━

002 難破した水夫 ― あとがき

━━━━━━━━━━━━━━━━


 香を運ばせます、と誓った男を、蛇は笑いました。


 どの神も喜ぶはずの香でございます。蛇は、没薬はわたしのものだと言い、おまえの言うヘケヌはこの島にこそ多い、と言い返しました。


 別れのときに蛇が、自分の受け取る分として挙げたのは一つだけ。『わたしの名を良いものにせよ』


「この話で、わたしの耳がいつも待っているのは『抱く』です。島に上がった人は三日のあいだ、影を抱いて眠りました。その人に蛇は、子らを腕いっぱいに抱く、と言います。別れぎわにも、もう一度。自分の子らは星の火に焼かれたあとですのに」


 影を抱く、の『抱く』。子らを抱く、の『抱く』。巻物では同じ一語でございます。


 同じ一語で書かれた所はほかにもありました。はじめの行で従者に付く『利口』。終わりに長官が投げ返す『利口ぶるな』。それを写し終えた書記は、二行あとに、自分の指を『利口』と書いております。


 長官のたとえは、どう読むのか今も定まりません。『朝には屠られるがちょうに、夜明けに水をやる者がどこにいる』


 わたくしは退けたのだと読みます。従者の長い話は、朝には屠られる鳥にやる水。巻物は従者の返事を一行も書かず、すぐ書記の名へ移るのです。


「退けた、ではなくて、受け取れなかった、でしょう。『友よ』と呼んでいますもの。水をもらったことは、長官にも分かっていたのだと思います」


『利口ぶるな』と、『友よ』。二つの語は巻物では隣り合っております。前の語で目が止まるのがわたくしで、後ろの語を聞いているのが妻。どちらも、まだそこから動いておりません。


 蛇はプントを治める者だとも名のっております。没薬の国です。そのプントへ、この巻物から何百年も後に、ある女王が本物の船団を送ります。


 そのお話は、いずれまた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。