第5話 あとがき
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005 首の青い玉 ― あとがき
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『青い』の一語は、どちらの板にもございません。
『』に入れてお見せした板の行は、わたくしが今の言葉に直したものでございます。板の字をそのまま読めば、はじめの板は『小さな瑠璃を首に掛けた』。十一枚目は『わたしの首の瑠璃』。瑠璃と聞いて色の浮かばない方のために、わたくしが二枚とも『青い』を添えました。『玉』も添えた語です。
同じ手が添えたのですから、そこが似て見えるのは当たり前でございました。板のうえで同じなのは首と瑠璃。その二語だけです。
「添えた字のことは、あなたが覚えていてください。わたしが覚えているのは、そのあとです。『この日々を思い出すために。とこしえに忘れぬために』。忘れないために首に置く。あれはそういう石でした」
石には道がございました。山から高原を越えてメソポタミアへ、そこからナイルへ。
まぶたのほうは道が見つかっておりません。
「眠らないことと、死なないこと。あれは、板から歌へ伝わったのでしょうか。それとも、歌から板へでしょうか」
分かりません。十一枚目の板とインドの歌とをつなぐ書きものを、わたくしは一つも知りません。歌のほうは、千年を越えるあいだ字になりませんでした。そのあいだに誰がどこで何を語ったのか、字の側には何も残っていないのです。
それでもわたくしは、道が無かったとは言い切れないと考えております。瑠璃の山は二つの土地のあいだにあります。石の通った道を、言葉だけが通らなかったとは思えません。書きとめる者がいなかった。それだけのことかもしれないのです。
「石の通った道なら、言葉も通ったでしょう。それはわたしもそう思います。話は、聞いた人が黙っていられませんもの。でも、これは話ではなくて、まぶたのことです。寝ずの番をしていて、座ったとたんに眠ってしまった人なら、どの土地にもいました。眠らずにいられる者がいるなら、それは人ではない。そう思うのに、よその国の歌は要りません」
運んだ人がいたはずだと言うのは、いつもなら妻でございます。きょうは、わたくしが道を探し、妻が道は要らないと申しております。
十一枚目で、イシュタルは神殿の名にしか出てまいりません。同じ歌のもっと前の板では、この女神がみずから王ギルガメシュの前に立ち、口をききます。
そのお話は、いずれまた。




