第三話 委員会決めと約束
始業式が終わり帰宅した。まだ午後になったばかりだが、驚いたことがたくさんある。一つ目は、隣の席に転校してきた女の子は、春休みの四国旅行で出会った女の子ということ。二つ目は、その時に出会った女の子とインスタを交換したこと。そして三つ目は、その子と趣味が共通していることだ。
まず、俺は女子とインスタを交換することがほぼない。いるとしても、さくらや小さい頃から仲良くしてる一つ下の幼馴染くらいだ。だから、転校してきた隣の席の女の子に急に「交換しよ」と言われた時はビックリした。そして趣味が共通していることも驚きだ。お互い旅行好きで、さらに知らない場所を巡りまわるのが大好きだということ。こんなにも趣味がピッタリ当てはまっているのは彼女が初めてだった。
「こんな偶然あるんだな」
ボソッとつぶやいた俺は、ベッドに飛び込み横になった。その時、スマホからピロリンという通知が鳴った。智光とかだろうなと思ってスマホを開くと、予想外の人からメッセージが届いていた。そう、笹野さんだ。
「急にごめんね。ちょっとさっきの話の続きがしたいなと思って」
このようなメッセージが来ていた。俺は彼女としばらく、メッセージでやり取りを続けていた。都会がどんな場所なのかが気になる、景色が綺麗なところが好き、最近は寺社仏閣巡りをしてみたいと思っているなどなど、旅行の中でも何が好きなのかを知ることが出来た。
「ありがとう色々と!旅行のことでこんなに盛り上がること今まで無かったから」
「こっちこそありがとう。俺もこんなに語り合える人ほぼいなかったから」
「そういや酉島くんって今まで何度も旅行してるらしいけど、お金ってどうしてるの?」
「自分はアルバイトだな」
「あ〜アルバイトかぁ」
俺は駅の目の前にあるコンビニでアルバイトをしている。週に四回ほど入っていて、大体月に七万から八万ほど稼いでいる。この前行った春休みの四国旅行も、今度行く名古屋旅も全部ここから出ている。
「笹野さんは旅行の時どうしてるの?」
「私はそもそも一人でどっか行くことが無いんだよね。ほとんどお母さんか、いとこと一緒に行くんだ」
「なるほどね」
まあアルバイトとかをしてないとバンバン色んなところへ行くのは難しい。そもそも旅行自体、お金がかなりかかる趣味だから仕方ないものでもある。
時間は気付けば十四時、今日は十五時から十九時までの夕方の時間帯でバイトが入っている。
「ごめんだけど、この後バイトだから落ちるね」
「あ、そっか。じゃあまた明日学校でね。今日は色々ありがとう!」
「うん、ありがとう!また明日」
そう言って俺はスマホを閉じた。俺は軽めにパンを食べてバイト先である駅前のコンビニに向かった。
そして次の日、新学年二回目の登校日となった。この日やることは学校検診、クラス写真撮影、委員会決めの三つである。まず学校検診とクラス写真はサクッと終わった。肝心なのが委員会決めである。この学校では必ず委員会、もしくは係に入らないといけない。俺は、前の席にいる智光と話をした。
「なあ。お前どこ入るんだ?今年も俺と体育委員会やるか?」
「あれだけはお断りだ。そもそも去年はじゃんけんに負けたから、渋々余り物の体育委員会に入ったんだろうが」
「なんだ。今年もやってくれるのかと期待したんだけどな」
「体育委員ではないけど迷っているものならあるけどな」
体育委員会は、体育での集合や体育祭の運営など、とにかく仕事が多い。そのため全ての委員会で一番人が集まりにくいのである。智光はサッカー部に所属しており、運動が大好きなため今年も体育委員会をやるらしい。
「よーし、じゃあ決めていくけど、学校行事系のは先に決めときたいからそっちから聞くぞ。まず体育委員会やりたい人」
手をあげたのは智光だけ。体育担当でもある担任の大元先生は苦笑いをしていた。その次に決めるのは文化祭委員会、毎年秋頃に開催される文化祭の運営を行う。去年文化祭委員会を務めたさくらも手をあげた。こちらはあっさりと決まった。そういえば笹野さんはどれにするのかなと思ってふと左側を見る。少々悩んでいる様子だった。とはいえ俺も少し悩んでいる。仕事量が多いのはめんどくさいが、少ないは少ないでなんだかおもしろくない。
文化祭委員会の後は、前後期で交代となる他の委員会から決めていく。まず最初に決めるのは学級委員会だ。学級委員は授業前後の号令や、集会などの点呼を行う。クラスをまとめる係なのでかなり重要な委員である。
そして、俺はこの学級委員に手をあげた。少々迷ったが、俺は前からこういう人をまとめるような委員会に就いてみたかったのと、このような係は将来役立てるかもしれない。そう思い俺は学級委員になることを決めた。
「お前学級委員ってマジかよ。こりゃクラス崩壊だな」
「うるさい、お前がなるよりはマシだろ」
智光がなんか言ってるが無視しておく。ちなみに学級委員は前後期制で各二人、計四人必要なのだが現時点で手をあげたのは俺含めて三人だけだった。
「学級委員あと一人やりたいやついるか?いなかったら次いくぞ」
先生が他の人に聞くが誰もいない。そう思った時、隣の方から手があがった。そう笹野さんである。これには俺もそうだが先生も驚いていた。
「お〜笹野さんありがとう。転校してから積極的に行動してくれて嬉しいよ」
そして委員会決めは順調に進んでいった。その後は各委員会で集まって役割分担を決める時間となった。メンバーと話し合った結果、俺と笹野さんはペアとなり、前期の学級委員を務めることとなった。
終礼が終わり笹野さんに話しかける。
「じゃあ笹野さん、前期の間よろしく。ていうかなんで学級委員になろうと思ったの?」
「前からこういうのやってみたかったんだ。四国の学校は人が少なすぎてこういうのが無かったからさ。それとクラスをまとめるって凄そうだから」
なるほど。どうやら彼女も俺と同じで好奇心で溢れていたようだ。その後、彼女と一緒に家に帰っていった。そのとき笹野さんが。
「そうだ酉島くん、土日って暇かな」
「土日?土曜はバイトだけど、日曜なら」
「じゃあさ、私とお出かけしない?まだ都会で知らない事たくさんあるから教えてほしいなと思って⋯⋯」
「え、なんで俺?いとこがいるとか言ってなかったっけ」
「いとこは友達と遊ぶらしくてね。流石に混ぜてもらうのは気まずいし。それに酉島くんなら話とか合いそうだし色々知ってそうだから。もちろん無理はしなくていいよ」
「まあ俺でよければ全然いいよ?」
「ほんと!ありがとう!楽しみだなあ」
笹野さんは目をキラキラさせながらそういった。なんだか無邪気な子どものようにも見えてくる。そしてお互いの最寄り駅に着いた。
「じゃあ酉島くん。また明後日!」
「うん、また明後日」
そして俺は家に帰ってきた⋯⋯あれ?よくよく考えれば女の子と二人きりでお出かけって⋯⋯これってデートになるのでは?




